「高座で死ぬのが本懐」歌丸師匠が生前に見せていた落語への執念 | FRIDAYデジタル

「高座で死ぬのが本懐」歌丸師匠が生前に見せていた落語への執念

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高座までは車いすに乗り、スタッフの先導でエレベーターで移動。「お父さんは寄席が生きがい」(妻・冨士子さん)
 落語家の桂歌丸師匠(81)が2018年7月2日、慢性閉塞性肺疾患のため亡くなった。
 7月8日に開催される三越納涼寄席の出演者に名を連ねるなど、最後まで噺家としての執念をみせていた。
 フライデーでは2017年、『車いすで復帰!桂歌丸80歳「噺家は高座で死ぬのが本懐」』と題し、落語に命をささげる覚悟をみせていた歌丸師匠の姿を報じた。
 今回は特別に、当時の記事を再録し、師匠が高座にかけていた思いを伝えたい。
 ※歌丸師匠の年齢を含め、当時のまま掲載します。
――高座への復帰おめでとうございます!
「ありがとうございます。でも息が切れてね。声が出ないんだよ……。ごめんなさいね。肺炎は治ったけど、(他の)呼吸器系がね……。今年の目標? 病気を治すことだね、まず。他のことはどうでもいい」
 落語家の桂歌丸(80)が、退院してわずか3日後、早速高座に上がった。
 歌丸は1月2日にかかりつけの医師に肺炎と診断され、横浜市内の病院に入院。1月18日に退院、21日に神奈川県平塚市で行われた「新春落語会」に出演した。
「ご経験者もいらっしゃると思いますが、病院ってのは退屈なところですね。パチンコもなければ映画館もない。それで『笑点』に出ていた時のことを思い出していたんです。50年もやっていて解答者全員が頭を悩ませたのが、『純日本式の言葉を英語にしろ』というお題。なんとかひねり出したのが、こんなヤツです。焼きのりを『ブラック ペーパー オードブル』、越中ふんどしを『ジャパニーズ ゴールデン ボール サポーター』。わたくし桂歌丸は『アート ネイチャー ミュージック ボール』ってな具合でね。ハワイで使っても通じませんでしたけど」
 そう語ると、約25分にわたり古典落語「つる」をハリのある声で披露。だが話し終えると表情は歪み、息苦しいのか何度も大きく口を開ける仕草を見せた。
「師匠は満身創痍です。出演前には30分ほど酸素吸入をして呼吸を整え、高座では正座がツラいので補助いすを使っています。食欲もなく体重は36㎏まで落ちているため、医師は『できるだけ出演を控えてほしい。遠出は厳禁』と諌(いさ)めています。それでも師匠は『噺家は高座で死ぬのが本懐』と、病を押して舞台に出ているんです」(落語芸術協会関係者)
 この日も師匠は、こう言って頭を下げた。
「本来、噺家は舞台の袖から座布団まで歩いて来なくちゃいけないんです。でも去年とその前と2年連続、腸閉塞で入院させられましてベッドで寝たきりだったもので、脚の筋肉がまるでなくなっちゃった」
 写真の通り移動は車いす。それでも高座に上がりつづける歌丸師匠に、落語歴66年の執念を見た。
撮影:等々力純生

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