副作用リスク上昇…同じ薬を飲み続けるのはこんなに危険だった | FRIDAYデジタル

副作用リスク上昇…同じ薬を飲み続けるのはこんなに危険だった

糖尿病、高血圧、認知症…

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「薬を出しておきます」

病院で診断を受け、そう医師に言われると、誰もが何の抵抗もなく薬を飲み始めることになる――。

そんな「患者が自分で考える時間」が少なすぎる今の医療の流れに、筆者は一石を投じたい。本当にその薬が必要なのだろうか? と疑問を持ってほしい。

一度、薬を飲み始めると、「落とし穴」に嵌(は)まってしまうことがあるからだ。

服用を始めて効果が少しでも現れると、それで安心してしまい、根本的な原因と向き合う気がなくなる。そうすると、何も考えずに同じ薬をいつまでも飲み続ける日々。だが、服用期間が長くなればなるほど、副作用が発生するリスクも上がり、さらには取り返しのつかない深刻な事態を招くかもしれないのだ。

【降圧剤】

働き盛りの50代男性Aさんが明かす。

「目眩(めまい)がひどくて、何もやる気が起きず、朝起きるのも辛かったんです。そこで、耳鼻科を受診して、目眩を抑える薬を処方してもらいました。でも、その後も一向に治らなかった。それどころか、酷い動悸が起こるようになったんです」

Aさんは、近所のかかりつけの内科を受診したところ、目眩の原因は3年前から飲んでいた降圧剤によって血圧が下がりすぎていたためと判明した。Aさんは目眩と血圧は関係ないと思い込み、これまで内科医には伝えていなかったのだ。

上の血圧が100を切るような状態が長く続くと、脳への血液循環や心臓のポンプ機能が低下し、動悸や息切れが起きる。さらに認知症を招く危険さえある。

「血圧をどの程度の数値にコントロールすればベストなのかは、本来、患者さんによって異なるものですが、年々、降圧剤の利幅(薬価と購入価格の差額)が薄くなっていることもあり、どんどん血圧を下げる方向にガイドラインなどが傾いています。しかし、将来的にはこれは改善されて、今のように下げれば良いという一辺倒の考えはなくなっていくべきだと思います」(医療法人社団霞山会MYメディカルクリニック院長・笹倉渉医師)

高血圧患者の多くが服用する降圧剤が、Ca(カルシウム)拮抗薬。この薬の副作用には「歯肉肥厚」があるが、とくに「ニフェジピン」による発症率は20~44%という報告もある。

「歯が抜けてしまったため、もう私も年だし、歯肉炎かなと思って歯科を受診したところ歯肉肥厚とわかりました。ニフェジピンを1年ほど服用していたことが原因でした」(60代女性)

八重洲歯科診療所の丸山由起歯科医師はこう指摘する。

「Ca拮抗薬の副作用による歯肉肥厚は、歯がある歯茎に発現し、上下前歯部が肥厚するのが特徴的です。歯冠部まで覆われることもあり、進行すると出血や排膿が生じることもあります。徹底した口腔内環境の改善と降圧剤の服用の見直しが必須と言えます」

また「カプトリル」に代表されるACE阻害薬を5年以上にわたって服用すると肺がんリスクを上げるとの研究報告もある。服用によって肺がんの発症率を上げるブラジキニンという物質が増えることがわかっている。

【糖尿病治療薬】

糖尿病治療薬を服用する人の多くが経験する副作用が、低血糖である。70代糖尿病患者女性の家族はこう明かす。

「母はスルホニル尿素薬の『オイグルコン』を長年服用していたんです。風邪気味だったある日も、それほど普段と変わらない様子でした。ところが、午後早めに寝室で休んでいた母が、夜になって『昏睡状態』になっているのを発見しました。すぐに入院して意識は回復したものの、後日、認知症を発症したんです……」

低血糖に陥った場合、早い段階でブドウ糖の摂取などの適切な処置を取らないと「認知機能障害・痙攣(けいれん)・昏睡」が現れ、結果として認知症の発症や命の危険を招くこともあるため、注意が必要である。

また糖尿病治療薬の中でも比較的新しいSGLT2阻害薬は数多く処方されているが、実は服用後の死亡例がある。尿中に糖を排出するため、尿量が増えて脱水になり血栓ができやすく、脳梗塞などを起こすリスクが高くなるのだ。

SGLT2阻害薬をダイエットのために服用しているケースはさらに危ない。

「本来の使用方法とは違った『痩(や)せる薬』としての効果はたったの2~3%にもかかわらず、ダイエット目的に自由診療として処方している医療機関も存在します。因果関係ははっきりと解明されてはいませんが、死亡事故が起こってもおかしくはありません。長期服用によるリスクを避けるためには、専門知識を持った医師に相談すべきです」(麹町皮ふ科・形成外科クリニック院長・苅部淳医師)

また、糖尿病治療薬のチアゾリジン誘導体「アクトス」には膀胱がんのリスクがある。それは薬剤の添付文書にも「投与開始に先立ち、患者又はその家族に膀胱癌発症のリスクを十分に説明してから投与すること」とはっきり注意喚起されている。

【高脂血症治療薬】

「コレステロールの数値が高くて、医師の処方で治療薬の『クレストール』を服用し始めました。その数週間後から手足に筋肉痛を感じたのですが、趣味の水泳が原因だと思っていたんです。しかし、手足の痛みはどんどん強くなっていきました。ついにはベッドに座った状態から足を上げて横になる動作も辛くなり、これはおかしいと思い受診したところ、『横紋筋融解症』と診断されたんです」(60代女性Bさん)

高脂血症治療薬の副作用である横紋筋融解症の症状が進むと、急性腎不全や呼吸困難になり、命を脅かす場合もある。

「横紋筋融解症は後遺症を残す可能性も高いため、早めに医師に相談することが重要になります。一方で、高脂血症は心血管リスクの大きなリスクファクターであり、とくに狭心症や心筋梗塞の既往がある方は積極的にLDL-C(悪玉コレステロール)の数値を下げていく必要がある。患者自身もそうしたリスクを理解しながら、客観的な見方を持つことが大切です」(桶川みらいクリニック院長・岡本宗史医師)

【認知症治療薬】

70代男性Cさんは、軽度の認知症により、日常生活に支障が出始めたため、認知症治療薬の服用を開始した。低用量の開始期間は問題なかったが、薬を増量したところ、異変が起き始めた。

「急に怒り出したり、物を投げて壊したり。どこにそんな力があったのかと思うほど暴れることもあった」(Cさんの家族)

認知症治療薬の副作用には複数の精神症状がある。怒りっぽくなる、攻撃性が強くなる、暴言、興奮などの症状は、低用量の服用開始時に発現しなくとも、増量したときに起きることが多い。

【睡眠薬(ベンゾジアゼピン系製剤)】

厚労省は、「デパス」をはじめとして、ベンゾジアゼピン系製剤には依存性があるとの注意喚起を促している。

50代女性が自らの体験を語る。

「夫の浮気に悩み、不安やイライラ、不眠がひどくなりました。それで病院へ行くと『デパス』を処方されて、イライラしたときにバリバリとお菓子みたいに服用していました。そうしたら、ある日突然、意識が混濁してしまい、目が覚めた時は病院でした」

服用を続けた結果、薬剤性の精神疾患となる恐れがあるのだ。4週間以上の連用で依存性が生じやすくなる。

「眠気、注意力・集中力の低下、ふらつき、健忘などの副作用を起こす可能性があります。また、長期服用により認知機能への悪影響も報告されています」(ブレインケアクリニック名誉医院長・今野裕之医師)

【鎮痛薬】

「中学の頃から頭痛に悩んでいて『ロキソニン』の市販薬を服用しています。高校生になっても、『飲むと楽になる』と、自己判断で痛みを感じたら服用を続けていたんです。するとあるときから、頭痛が悪化。ふらつきや目眩を伴うこともあって受診したところ、『鎮痛剤依存』と診断されました」(10代女性)

その後、彼女は専門外来で治療を受けて、正常な生活に戻ることができた。

「非ステロイド抗炎症薬を月に10回以上服用する人は注意が必要です。薬に頼りすぎることで頭痛を慢性化させてしまう恐れもあります」(アマソラクリニック院長・細井龍医師)

【胃腸薬・逆流性食道炎治療薬】

筆者が勤務していた病院で、女性の患者同士で大喧嘩が起きたことがある。70代のDさんが他の患者を突然怒鳴りつけたのだ。

「この泥棒猫!」

次の瞬間、Dさんは相手の髪を引っ張り大騒ぎになった。夫との浮気を疑ったことが理由だが、事実無根だった。

Dさんは胃痛のためにH2ブロッカー胃腸薬「ガスター」を服用して1週間ほど経っていた。彼女の異常行動とガスターの関連性は不明だが、服用中止後から、Dさんのおかしな言動はなくなった。テレビCMでも馴染みのある「ガスター」に代表されるH2ブロッカーの副作用には精神障害の「せん妄」が挙げられる。

「認知症とせん妄の識別は難しく、両者が併存することも珍しくありません。しかし認知症と異なり、せん妄はその原因を取り除くことができれば、治せる可能性がある疾患です」(前出・今野医師)

また、逆流性食道炎治療薬のプロトンポンプ阻害薬(PPI)にはがんリスクの報告がある。それも胃がんリスクが上がるというから驚きである。香港大学とロンドン大学によって行われた調査ではPPIを3年以上服用すると、がんリスクは8倍を超えると報告されている。漫然と服用を続けることは避けるべきだ。

【神経障害性疼痛緩和薬】

「リリカ」は、強い眠気や意識消失などを引き起こす。その副作用が原因と思われる交通事故が多数発生していることは、メーカーと厚労省が筆者の取材に対して認めている。

過去に服用していた40代女性が言う。

「リリカを飲むと意識がフワッとする感じはあったけれど、痛みのため服用は続けていました。でも、ある日、自宅での車庫入れで車をぶつけてしまい、主治医の判断で服用は止めました」

彼女も薬を飲み続けていれば、いつか大事故を起こしたかもしれない。

身体を治すための薬によって、命を危険にさらしては本末転倒。副作用を少しでも感じたら、同じ薬を使い続けず、医師に相談することを肝に銘じてほしい。

ドラッグストアの薬も使い過ぎに注意を

いまの日本には街のいたるところにドラッグストアがあり、処方せん受付がある
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多くの日本人が服用する降圧剤や高脂血症治療薬、睡眠薬は、使い続けると重大な副作用の恐れがある
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日本人の「国民病」とも言える糖尿病の治療薬。認知症につながる可能性があることを忘れてはならない
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『FRIDAY』2020年3月6日号より

  • 取材・文吉澤恵理

    (薬剤師・医療ジャーナリスト)

  • 撮影蓮尾真司(2枚目写真)

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