新型コロナウイルスパニック「濃厚接触」ホットスポットと防護法

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17日夜に撮影されたダイヤモンド・プリンセス号。19日には、検査で陰性反応だった約500人の乗客が下船した

「船内に乗客を閉じ込めるという日本の対応は、医学史に残る大失敗でしょう。そもそも、1月中旬の段階で既に国内感染者が出ており、日本で感染が拡大するのは時間の問題でした。それならば水際作戦など意味がなく、すぐに全員下船させて検査をすればよかった。にもかかわらず、乗客を軟禁して感染を拡大させたのは、人権侵害と言えます」(医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師)

世界中で2700人以上の死者を出し、猛威を振るう新型コロナウイルス。2月19日、感染の中心地となったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」からは、陰性とわかった約500人が下船した。乗船していた60代男性は語る。

「船内では、どんどん患者が増えており、いつどこから感染するか全くわからない状況でした。ウイルスが混入しているかもしれないと思い始めると、食事を口にする気にもならず、調理されていない納豆やフルーツばかり食べていましたね。僕は心臓が弱く、薬をこまめに飲まないといけないのですが、薬を頼んでから届くのに4〜5日かかっていた。手持ちが切れたらと不安で仕方なかったです」

乗客乗員約3700人中、2月26日現在で600人以上の感染者を出している同船では、依然として残りの乗客を船内に軟禁する「封鎖作戦」がとられており、さらなる感染拡大が予想される。

日本国内でも続々と感染者が現れている。和歌山県の有田病院では、医師や患者など8人が陽性反応を示す院内感染が発生しており、予断を許さない状況だ。感染者との「濃厚接触」が疑われる人間は罹患(りかん)リスクが高い――。しかし、日常生活を送っている以上、不特定多数の他人との接触は避けられない。そこで本誌は、いかにして濃厚接触から身を守ればよいか、識者に話を聞いた。

「濃厚接触」とはどういった状態を指すのですか?

ウイルスに感染しなかった400人近くのアメリカ人は、17日に下船して自国のチャーター機に乗り、帰路についた

実は、「濃厚接触」は医学用語ではなく、明確な定義は存在しない。山野美容芸術短期大学客員教授・医学博士で、感染症学が専門の中原英臣氏が解説する。

「ウイルスの感染経路には2種類ある。咳やくしゃみに含まれるウイルスを取り込む飛沫感染と、ウイルスが付着した物を触ってうつる接触感染です。これらが起きうる状況は『濃厚接触』と言えるほどリスクが高いでしょう」

やはり交通機関でウイルスに感染する危険性が高いのでしょうか?

NPO法人医療ガバナンス研究所研究員の内科医・山本佳奈氏は話す。

「過去の新型インフルエンザの場合、首都圏の鉄道に一人の感染者が乗車したら5日目には700人、10日目には12万人に拡大すると予測されました。しかし、社会生活を送るうえで、特に交通機関からのリスク回避はもはや不可能です。新幹線やタクシーは、空気の循環が起きずウイルスが漂いやすくなるため、感染の可能性が高まります。タクシーに乗った際は、必ず窓を開けてください。換気によって感染リスクを下げることができます」

東北大学病院感染管理室の德田浩一室長が補足する。

「密閉空間でもエレベーターは人の出入りやドアの開閉が頻繁なので感染リスクは低い。カラオケボックスや映画館でも近くの席に、咳が酷い人がいなければリスクは高くない。飛沫は1〜2m飛ぶとされていますので、唾を飛ばさないよう咳エチケットにお互いが心がけること、こまめに手洗いをすることが大切です」

ホテルのバイキングレストランは利用しても平気なのでしょうか? 飲み会は行かないほうがいいのでしょうか?

船内のウイルス感染者は、防護服を着た医療スタッフによって近隣の横浜市立市民病院などへと搬送されている

「バイキングや鍋料理、中華料理などみんなで料理を共有する場合は接触感染の危険性があります。最低限、自分の箸と菜箸をわけて使うことを心がけてください。また、飲み会などは他人との距離が近くなり、飛沫感染する場合があります。会場の換気を心がけること。宴会を控えるというのも選択肢です」(山本医師)

現に個人タクシー組合の新年会が開催された屋形船で集団感染が発生している。

電車の吊り革や手すりを介して感染することもあるのでしょうか?

前出の山本医師はこう説明する。

「コロナウイルスは、プラスチックや金属などの表面がツルツルしている素材の上では、最長9日間生存することが報告されています。新型コロナウイルスは潜伏期間が最長24日に及んだケースも。よって、電車内の吊り革や、オフィスのドアノブに活動中のウイルスが付着している可能性は十分考えられる。それだけではなく、ボールペンなど他人と共用する文房具も接触感染の要因になります。

また、公衆トイレもリスクが高い場所です。他人の排泄物に生息しているウイルスが巡り巡って口に付着して感染する『糞口感染』の危険があります。便座を閉めて流すのも対策のひとつです」

日常生活の中ではどうしても様々な「ホットスポット」に行かねばならない。せめて、立ち入った後には何をすればいいのか。池袋大谷クリニック院長の大谷義夫医師が語る。

「少しでもウイルスの付着が疑われるものに触れたら、しっかりと手洗いをすることが必要です。アルコールを噴射して15秒ほど手をもめば、ウイルスはあらかた死滅します。石鹸を使う場合は、しっかり30秒間、手を洗ってください」

ホテルで前日に泊まった人からうつることはあるのでしょうか?

予防医学が専門の新潟大学名誉教授・岡田正彦氏は話す。

「シーツなどの寝具が替えてあれば、感染することはありません。しかし、一部のラブホテルではシーツが取り替えられていないこともあるようで、そこから感染することは十分考えられますね」

発熱した場合、すぐに病院に行ったほうがいいのでしょうか?

中国・武漢市から帰国した約180人の日本人が一時滞在した勝浦ホテル三日月では、15日から館内の消毒が始まった

感染が疑われる症状が出た場合、早く検査を受けなくてはならないと思ってしまう。しかし前出の岡田氏は注意を促す。

「発熱しても、すぐに病院に行ってはいけません。武漢では、発熱した人みんなが病院に行ったため、そこがウイルスのホットスポットになりました。患者から医師に感染し、そこから病院を訪れた人に次々と感染するといった悪循環です。日本も同じ轍を踏まないよう、4日間は自宅待機して様子を見てください」

前出の中原氏はこう指摘する。

「危ないのは調剤薬局です。病院に行った患者が狭い空間に長く滞在する。私は散歩しながら外で待つようにしています」

マスクを正しく使うにはどうしたらいいでしょうか?

コンビニやドラッグストアで品切れ状態となり、ネットでは一枚700円などの高値で転売されるマスク。実際、マスクはどれほど予防に役立つのか。前出の大谷医師は話す。

「感染者が飛沫を飛ばすことを防ぐ以外にも、正しく使えば感染リスクを減らすことができます。サイズの合ったマスクで隙間ができないように鼻と口を覆うのはもちろんですが、肝心なのは、一度つけたマスクは決してズラさないこと。よくマスクをあごにズラしただけで食事したりする人を見ますが、それを元に戻すと顔に付着したウイルスがマスクを介して口まで運ばれるため、逆に危険です。またマスクを外したら、そのマスクは必ず捨ててください。外すときも紐の部分を持つようにして、決してマスクの表面を触らない。表面に一番ウイルスが付着しているからです。以上を守れば、マスクがウイルス感染を防いでくれます」

マスク以外の予防グッズもあるという。前出の中原氏は提言する。

「手袋をつけることも予防に効果的だと思っています。布製の手袋をつけて外出し、帰宅したら外す。そうするだけで、ウイルスを自宅内に持ち込むリスクを軽減させることができます」

防護方法を学べば、ネットで流布しているデマに惑わされることもなくなる。正しい情報で脅威に備えるべきだろう。

各タクシー会社は、予防対策として車内をこまめに消毒するよう運転手に周知徹底している
ウイルスの感染拡大を受け、熊本城マラソンではマスクをつけて走るランナーの姿も見られた
中国人観光客が行き交うのが日常だった関西国際空港の到着ロビーは2月に入ってからずっと閑散としている
岡山市内の岡山プラザホテルには、感染防止のためランチバイキングの一時中止を伝える看板が掲示されている

『FRIDAY』2020年3月6日号より

【全国問い合わせ先】新型コロナウイルスにかかったと思ったら連絡 を読む

  • 撮影蓮尾真司写真朝日新聞社 時事通信社 アフロ

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