東京マラソン上位10人が厚底 !「ナイキ一強」はどこまで続くか

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「真の勝者」は大迫ではなくナイキだった

新型コロナウイルスの影響で、一般ランナーの出場はなく、沿道の応援も自粛が呼びかけられた東京マラソン。例年のようなお祭り騒ぎはなかったが、日本人選手たちの激走が観る者を魅了した。なかでも圧倒的な輝きを放ったのが、日本記録保持者の大迫傑(ナイキ)だ。

大迫と井上大仁(MHPS)は第1集団について、国内ではかつてない高速レースに挑戦した。大迫は22km過ぎに遅れて、30km地点は13位。井上に12秒差をつけられたが、終盤に盛り返す。32.2kmで井上らの集団に追いつくと、32.7kmでスパート。最終的には4位まで浮上して、日本新記録となる2時間5分29秒でゴールに飛び込んだ。

ナイキシューズのアシストで五輪代表を大きく引き寄せた大迫傑選手/写真 アフロ

9月15日のマラソングランドチャンピオンシップ(以下MGC)は3位に終わり、東京五輪代表の内定を逃した大迫。MGCファイナルチャレンジ(福岡、東京、びわ湖)で「2時間5分49秒以内」で走る選手がいなければ、自身が五輪代表に内定するという立場だった。しかし、井上、設楽悠太(Honda)ら有力選手がそろう東京での〝勝負〟を選んだ。

そして、ライバルたちを撃破して、自身が持つ日本記録を21秒も塗り替えた。レース後のインタビューでは、「ずっと狙っていた大会だったので、日本記録というかたちでしたし、次につながるレースができたんじゃないかなと思います」と充実の表情を見せた。

しかし、レースの思いを問われると、「MGCで3番になってから、非常に苦しい戦いだったけど……」と声を詰まらせ、涙を浮かべた。そのシーンは多くのファンの胸を熱くしたことだろう。

「4位という順位でしたけど、東京五輪に一歩近づくことができたので、良かったかなと思います」。感動を呼ぶ激走が、MGCで手にすることができなかった東京五輪を大きく引き寄せたことになる。

上位10人どころか、17位までがナイキを着用

大迫の走りを支えていたのが、世界のマラソンを席巻しているナイキ厚底シューズの新モデル『エア ズーム アルファフライ ネクスト%』(以下、アルファフライ)だった。昨年10月にウィーンで行われた非公認レースでエリウド・キプチョゲ(ケニア)が人類初の2時間切りを果たした際に着用していたシューズの市販モデルになる。

ナイキの厚底シューズを履いた選手が好タイムを連発させたこともあり、1月末に世界陸連からシューズに関するルール改定が発表された。4月30日以降は、「靴底の厚さは40mmまで」「複数のプレートを靴底に内蔵してはならない」「レースの4か月前から一般購入できること」などの条件をクリアしないと使用できない。アルファフライはカーボンファイバープレートが1枚のみで、靴底の厚さは39.5mm。世界陸連の新規則に抵触せず、東京五輪でも使用可能だ。

今回の東京マラソンでもナイキの厚底シューズが〝大活躍〟した。2時間4分15秒で連覇を果たしたビルハヌ・レゲセ(エチオピア)は『ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%』のグリーン、2位のバシル・アブティ(ベルギー)も同シューズ。3位のシサイ・レマ(エチオピア)はアルファフライを着用していた。上位10人のタイムとシューズ(すべてナイキ)は以下の通りだ。

1位:レゲセ(エチオピア)2時間4分15秒 ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%
2位:アブディ(ベルギー)2時間4分49秒 ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%
3位:レマ(エチオピア) 2時間4分51秒 エア ズーム アルファフライ ネクスト%
4位:大迫傑(ナイキ) 2時間5分29秒 エア ズーム アルファフライ ネクスト%
5位:カロキ(ケニア)2時間6分15秒 エア ズーム アルファフライ ネクスト%
6位:エルアバシ(バーレーン)2時間6分22秒 ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%
7位:メングストゥ(エチオピア)2時間6分23秒 エア ズーム アルファフライ ネクスト%
8位:高久龍(ヤクルト)2時間6分45秒 ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%
9位:上門大祐(大塚製薬)2時間6分54秒 ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%
10位:定方俊樹(MHPS) 2時間7分05秒 ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%

上位10人だけでなく、1~17位までがナイキを着用。サブテン(2時間10分切り)を達成した28人中26人がナイキを履いていた(他の2人はアディダスとアシックス)。東京マラソンは、ナイキの〝圧勝〟といえる結果だった。

市民ランナーをも熱狂させている

大迫選手も着用した「ナイキ エア ズーム アルファフライ ネクスト%」/ナイキ公式サイトより

そして日本勢は史上空前の好記録ラッシュに沸いた。日本記録を樹立した大迫が実業団マラソン強化プロジェクト「Project EXCEED」で二度目の褒賞金1億円をゲットしただけでなく、今回は日本記録挑戦奨励賞A(2時間6分59秒以内/奨励金1000万円、監督およびチームにも奨励金500万円)が2人、日本記録挑戦奨励賞B(2時間7分台/奨励金500万円、監督およびチームに奨励金250万円)を6人が獲得している。

アルファフライを履いて日本記録を更新した大迫は、「レースごとに終わった後の感じがまったく違うので、どれくらいシューズの効果があったのかはまだ言いにくいところですけど、ナイキの新しい技術を使うことができるのは僕らにとって強みです」と口にしている。

日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、「シューズが進化するのは当たり前。前のシューズよりはいいですけど、選手も努力をしています。シューズで良くなったと言われると、選手たちはかわいそう。私は選手が努力した結果だと思っています」と話したが、今回の1レースで日本男子歴代20傑の中に新しく8人がランクイン。記録の面では、厚底シューズの〝アシスト〟が大きかったのは間違いない。

2月29日に行われた米国の東京五輪男子マラソントライアルでも、ナイキの厚底シューズが威力を発揮した。ゲーレン・ラップが2時間9分20秒で完勝するなど、五輪代表に選ばれた上位3人がアルファフライを着用していたのだ。

日本では東京マラソンが開催された3月1日が、『エア ズーム アルファフライ ネクスト%』の発売日(先行限定販売)。男性は2時間50分切り、女性は3時間40分切りのタイムを達成したランナーが購入権を得ることができる(先着順)。価格は前モデルより3,000円ほどUPして、33,000円(税込み)だ。

高額とはいえ、トップランナーだけでなく、市民ランナーもナイキの厚底シューズに夢中になっている。東京五輪のマラソンもナイキ一色に染まりそうで、厚底シューズの熱狂はまだまだ終わりそうにない。

  • 酒井政人

    スポーツライター。東農大1年時に箱根駅伝10区出場。現在は様々な媒体で執筆中。著書に『ナイキシューズ革命』(ポプラ社)など。

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