新型コロナで倒産危機…!お笑いライブ主催者の苦悩と希望

年間1000本ものお笑いライブを主催する会社が、ライブの中止で大ピンチに。しかし、そこに立ち上がった芸人がいた!

  • Facebook シェアボタン
  • Twitter シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
K-PROの児島代表に話を聞いたのは、この日行われるはずだったライブ『バティオスネタ祭り』の会場である新宿劇場バティオス

新型コロナウイルスの影響で、あらゆるイベントが中止になっている。Perfumeが東京ドームで、EXILEが京セラドームでライブの中止を開催当日に決めた。また、3月20日からツアーを控えているRADWIMPSの野田洋次郎も不安な心情をTwitterに吐露していた。

「ドーム4ヵ所を含む今回のツアー、全部中止にした場合ウチのような個人事務所が生き残る可能性はどのくらいあるんだろうかと考える」

これほどの大物アーティストですら、新型コロナウイルスによるイベント中止よって、事務所の存続に危機感を覚えるのだ。これが新興の小さなイベント会社であったらいかばかりか。

東京にK-PROというお笑いライブを制作する会社がある。社員4人の小さな会社だ。旗揚げから16年、年に1000本ほどのお笑いライブを主催し、数多くの東京芸人がK-PRO主催のお笑いライブで腕を磨いた。そんな若手芸人にとっての修行の場が、新型コロナウイルス騒動で存亡の危機に直面している。

2月27日から3月10日まで、25本のお笑いライブの開催を中止にしたのだ。

そして、この25本のお笑いライブの中には、「スピードワゴン」に「さらば青春の光」といった各世代を代表する芸人や、今をときめくお笑い第7世代の「宮下草薙」らが共演する、K-PRO最大の看板ライブ『行列の先頭』も予定されていた。舞台はセシオン杉並、600人規模の会場で、社運を賭けたイベントともいえる。

苦渋の決断であったろう。この新型コロナウイルス騒動に巻き込まれ、25本のお笑いライブ中止を決めた心境を、K-PRO代表の児島気奈(38)さんに話を聞いた。

「もし強引に開催したとしても、お客さんも不安であれば笑えません。そして、万が一にもお客様に、そして芸人さんに感染させてしまったら、私たちにはどうにも責任が取れない。安全第一という判断です」

『行列の先頭』が行われるはずだったセシオン杉並。無人の座席に無造作に置かれたスタッフの荷物が悲しい

お笑いライブは一発勝負だ。そのために演者もスタッフも周到な準備をしている。しかし、そのたった一発の勝負をやらせてもらえない。児島さんは冷静に答えているが、内心では新型コロナ憎しの思いで一杯だろう。ましてや劇場のキャンセル代、事前準備に費やした費用。経営面でも大打撃だ。

「『行列の先頭』ではオリジナルのクリアファイルと割引券を配布する予定でした。これらの制作費用や25本のライブ会場のキャンセル代を含めると、数百万の損害が現時点で発生しています。まずは2週間、政府の要請に応えてお笑いライブを中止にしました。ここまでなら、まだ大丈夫です。ただ、これが1ヵ月、2ヵ月と続くと、かなりマズイことになりそうです」

『行列の先頭』のために用意したアンケート用紙と割引券。このほかクリアファイルも配布する予定だったが・・・

捨てる神あれば拾う神ありというが、そんなK-PROの危機に、あるお笑い芸人が立ち上がった。ホリプロコム所属で芸歴20年のコンビ「磁石」の永沢たかしだ。彼は、noteのサポートシステムを利用して、K-PROへの支援活動を始めたのだ。そのお願いの一文にはこんな言葉が綴られている。

「経営は大丈夫?と心配して児島代表に連絡してみましたが『いつまで続くかわからないので…』とけっこう怯えておりました。国からの補助はまずないでしょうし、お世話になっている私でどうにかお力になれないかと思ってここ(支援サイト)を立ち上げてみました」

そして支援サイトには、今、多くの応援メッセージと共に、支援金が届いているという。この状況に児島さんは驚きの表情を隠せない。

「お笑いライブは安くて気軽に見られる趣味です。なければないで死にません。それが、これほど『なくなったら困る』と言ってくれる人がいたなんて……」

新型コロナウイルス騒動によって、会社の経営に不安を覚えたことも事実だが、ライブの中止によって得ることもあったと児島さんは語る。

「芸人さんと一緒で、私自身もお笑いが大好きで、お笑いを仕事にしたいと、ある意味では夢を追っかけているんです。でも、お笑いなんて趣味中の趣味だし、社会貢献でいえば、何もできていないよなって思っていました。ところが、今回の中止騒動があって、こんなにK-PROのお笑いライブを楽しみにしてくれている人が世の中にいて、なくなったら困ると言ってくれる芸人さんがいて、正直驚きました。少しは社会の役に立っていたのかなって」

そして彼女は新た気づきがあったという。お笑いライブを仕事としてやらせてもらえているのは、大勢のお笑いファンと芸人さんの応援があってこそなんだと。そして彼女は最後に新たな決意を語ってくれた。

「お笑いライブなんて、なくなったところでみんな困らないだろうと自分でも心のどこかで思っていたんです。でも、それは間違っていました。求められていたんです。なくなったら困ると言われて、嬉しかったとの同時に、これまで中途半端な気持ちでやっていてゴメンナサイ!って、反省しました」

高校時代からお笑いライブの手伝いをしていたという児島

雨降って地固まるとはまさにこのことだ。新型コロナウイルスによってライブは中止になったが、それによって制作会社のスタッフとお客さんと演者であるお笑い芸人との絆が確認された。

劇場を廃墟にしたくないと語る児島さんには、新型コロナウイルスに打ち勝って、お笑い第8世代から第100世代まで、修行の場としてお笑いライブを提供し続けて欲しい。

  • 文・撮影(児島気奈)ハギワラマサヒト

    1967年生まれの臓器移植芸人兼ライター。人生で二度の臓器移植を体験し、移植医療普及の活動をしている。2000年に日本人初の肝腎同時移植をアメリカで、2015年に国内で妻より生体腎臓移植。

Photo Gallary4

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事