<figure id="attachment_371616" aria-describedby="caption-attachment-371616" style="width: 4614px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4beb4676"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/05/52fa57d73da81b0f80f8b1bed8a20b29.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-371616" class="wp-caption-text">予選グループ２位で通過し、準決勝までに１敗でもすれば五輪の連続出場が断たれるピンチに立たされていたが、見事に優勝。五輪出場を決めた準決勝で全２得点をアシストした藤田（中央）は喜びを爆発させた</figcaption></figure>
<p>サッカーU-23代表が３日（日本時間４日）、アジア杯でウズベキスタン代表を１−０で下し、優勝した。８大会連続の五輪出場を決めた準決勝・４月29日のイラク戦で、全２得点をアシストしたのが主将の藤田譲瑠（ジョエル）チマ。藤田はナイジェリア人の父と日本人の母の間に生まれ、東京ヴェルディの下部組織を経て’19年に同クラブでプロになり、’23年からはベルギー１部シントトロイデンでプレーする。ポジションは守備的ミッドフィルダーで、ピッチの中央で攻守に関わり戦術の軸となる。</p>
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<p>イラク戦では前半29分の細谷真大の先制点を、藤田は後方からのロングフィードで演出。その13分後には大畑歩夢が左サイドで粘り中央に横パスを送ると、藤田がペナルティエリア手前からワンタッチでつなぎ、これに荒木遼太郎が反応、GKとの１対１を制しゴール右隅に流し込み２−０とした。</p>
<p>藤田は１点目に関しては「真大があの動き出しをすることはわかっていた」、２点目に関しても「荒木がいい動き出しを見せてくれた」と得点者のプレーをたたえ「二人に感謝したい」と喜びつつも謙虚に話した。</p>
<p>その藤田が密かに我々報道陣の注目を集めるのが試合前の記者会見だ。決勝トーナメントに入ってからは、毎試合、前日に監督と選手１名の記者会見が行われており、日本からは大岩剛監督と主将である藤田が出席している。とはいえ、日本語を理解するのは日本人報道陣くらいなもので、今大会では英語−アラビア語間の同時通訳と、日本語−英語間の通訳が用意されている。つまり、アラビア語の質問や回答は、一旦ひとりの通訳が英語にしたものを、もう一人の通訳が英語から日本語にする。そのため質問から回答にたどり着くまでに時間がかかるのだが、国際大会では致し方のないことでもある。</p>
<p>当然ながら大岩剛監督は日本語で受け答えを行うが、藤田は果敢に英語で記者会見にチャレンジしている。この、決して流暢とは言えない彼の英語は我々日本人からすると親近感を感じさせるというか安堵させてくれると言おうか。一生懸命に考えながら一言一言繰り出す様子は、藤田の明るい人柄と相まって微笑ましくもあるのだ。</p>
<p>実は24日に行われた準々決勝・カタール戦の前日記者会見では、藤田が言葉に詰まり数秒間沈黙するシーンがあった。「うーん」と唸り首を傾げる。我々は固唾を飲んで壇上の彼を見守ることしかできなかったが、ここで藤田は通訳に「お願いしてもいいですか？」とはにかみながら頼み、日本語での発言に切り替えたのだ。さらにこれ以降の質問にもこの日は全て日本語で対応した。</p>
<p>素晴らしいのは準決勝・イラク戦前日会見では再び英語で話し、今度は英語で会見をやりきったことだ。カタール戦前日に途中で断念したことなんてまるでなかったかのように、はにかみながらではあるが、堂々とこのチャレンジをやりきった。メンタルの強さをうかがわせる記者会見だった。</p>
<p>藤田は英語で会見に臨む理由についてこう説明する。</p>
<p><span class="strongInContent">「練習っすね。ベルギーで勉強してますけどたりない自分もいますし、ベルギーでも英語で取材受けたりしてますけど、それの延長で練習中というかそういう感じです」</span></p>
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<div data-friday-nextpage-lead="正確に伝えるには、得意な言語で臨むのが適切だが…"></div>
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<figure id="attachment_371617" aria-describedby="caption-attachment-371617" style="width: 4589px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c6497363"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/05/566e1cd8be4f41ad279b685f0f44bf80.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-371617" class="wp-caption-text">藤田は自身の英語力については「まだ勉強中」。それでも大会中の前日会見に登壇すると、同時通訳があるにもかかわらず英語での受け答えに挑み続けた</figcaption></figure>
<p>ただ、自身もまだ手放しで満足とはいかないようで<span class="strongInContent">「言いたいことの50パーセントくらいしか言えてない。今日の決勝前会見も英語でキャプテンについてとか聞かれましたけど、もっと詳しくわかりやすく説明できたらよかったんですけど。まだ難しいなと思ったのともっと勉強が必要かなと」</span>と英語力向上を誓った。</p>
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<p>もちろん海外での記者会見だからといって、英語で登壇すればいいかと言えば必ずしもそうではなく、監督のような立場であれば正確に質問を理解し主義主張を伝えるためにも母語もしくはそれに準ずる得意な言語で臨むのが適切だろう。</p>
<p>ワールドカップに出場した日本代表主将を見てきても、３大会連続W杯の主将をつとめ、長くドイツで活躍した長谷部誠（40）もクラブでは質問するメディアが日本人でもドイツ人でもドイツ語で返したが、日本代表では日本語で通した。英語の質問に英語で滑らかに返したのは’12年、’21年のオリンピック、’22年W杯でキャプテンを任された吉田麻也（35）ぐらい。報道陣には当然、日本人以外の海外プレスもいるため、よほどの度胸の良さがないと英語で話すことはできない。</p>
<p>だが、英語で話をしている藤田の場合、試合前日の選手の受け答えがセンシティブなものを含む可能性は低いということを差し引いても、ナイスチャレンジとたたえたい。所属するシントトロイデンの公式YouTube を見ると、昨年10月の段階では<span class="strongInContent">「英語は難しい」「早口で話されるとわからない」</span>などと打ち明けており、その時点からだいぶ成長し自信をつけたことは容易にうかがえる。</p>
<p>大岩剛監督は準決勝のイラク戦後、藤田のプレーに関してこんな風に話した。</p>
<p><span class="strongInContent">「（好プレー連発で）ちょっと調子乗ってる感はありますけど、ぐっと（気を）締めてもらって（笑）。あれだけできるということは世界に見つかっていくでしょうし、それがチームにとっての良い状況になれば。ということでもっとケツを蹴って（現状に満足せずに奮起を促して）いきたい」</span></p>
<p>手応えに浮かれないように釘を刺しつつパフォーマンスをたたえた。すでにベルギーリーグでプレーするものの、今後はさらなる飛躍も予感させる藤田のプレーと同時に、英語での発信にも注目していきたい。</p>
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1975年、埼玉県生まれ。日本女子大学文学部史学科卒。01年よりサッカーの取材を開始し、03年ワールドユース（現・U-20W杯）UAE大会取材をきっかけにライターに転身。サッカーW杯４大会、夏季オリンピック３大会を現地取材。’11年3月11日からドイツ・デュッセルドルフ在住

了戒美子

アフロ

一時は敗退危機も囁かれたサッカーU-23代表が同年代のアジア杯で優勝。8大会連続五輪切符を手にした。五輪出場を決めた準決勝で全２得点をアシストした主将の藤田はピッチ外の挑戦にも注目が集まっている

８大会連続の五輪出場に導いたサッカー代表主将・藤田譲瑠チマの「度胸の良さ」を示すピッチ外の挑戦

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