阪神・藤浪は他人事ではない…ラグビー神戸製鋼は解散後も検温提出

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社業の合間に取材に応じた福本正幸チームディレクター(左)とFL橋本大輝

社会人ラグビーのトップリーグとその後に続く日本選手権は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から中止が決定された。

ラグビー界にとどまらず、国内外を含めた危機的状況の中で、神戸製鋼の現場トップである福本正幸チームディレクター(TD)、そして橋本大輝前主将が今の思いを語った。神戸製鋼は2大会連続3回目のリーグ優勝を目指していた。公式戦が打ち切られた第6節(2月22日、23日)まで6戦全勝。勝ち点28の2位で、首位を走るパナソニックを勝ち点2差で追いかけていた。

日本選手権は、当初、リーグ戦終了後の5月23日、30日に予定されており、神戸製鋼はこちらも連覇がかかっていた。チームは56回の大会史上、最多となる10回の優勝を誇っている。

――3月23日、トップリーグが、4月2日には日本選手権(※1)の中止が決定しました

福本 どちらも2大会連続の優勝を目指していただけに、残念です。しかしながら、コロナは日本だけではなく、世界的な問題です。感染したらダメ。させてもダメ。すでにたくさんの方々が亡くなっておられる。その中においてはある意味、当然のことだと思います。日本選手権は開催の方向で動いていたようですが、コロナの勢いが現状では強すぎます。

橋本 私も福本TDと同じで残念です。前回のリーグ戦を優勝で終え、そこから新しいメンバーが加わりました。最初はちぐはぐだったチームが練習と試合を重ねるごとによくなってきていました。特に東芝戦(※2)の前半は、ほぼ完ぺきなラグビーができていたと思います。ただ、リーグ戦が中止になった状態で、日本選手権を後ろにずらして開催したとしても、選手たちがモチベーションを保つのは難しい。何より人の命には代えられません。

※1)NHK杯を母体に1963年度(昭和38)にできた大会。今回行われれば、57回目だった。トップリーグと並び、社会人ラグビーの2大大会。元々は社会人と大学の1位チームがラグビー日本一をかけて争っていたが、力の差などを理由に54回大会(2016年度)を最後に学生の出場はなくなった。神戸製鋼は7連覇(26~32回、1988~1994年度)を含む、史上最多の10回の優勝を記録している。

※2)リーグ戦中止直前の第6節(2月23日)の試合。5節は2位の神戸製鋼と5位の東芝の激突は接戦が予想されたが、神戸製鋼が前大会から取り組むパスラグビーがさく裂。57-0(前半40-0)と圧勝した。

――今は練習をしていますか

福本 新年度に変わる4月1日から個人的なものを含むすべての練習を停止させています。それまでは日本選手権の開催を前提にしていましたが、その中止に関わらず、コロナの影響が相当強いとの判断です。地元を同じくするほかのスポーツ(※3)でも患者が出始めています。ラグビーは競技特性上、スクラムやモールなどの濃厚接触が多いですから、この判断は当然のことではあります。

橋本 日本選手権がある、ということ想定してやってきていたので、練習や試合で積み上げてきたものをさらに積み増せず、停滞してしまうのは残念です。ただ、新型肺炎に同じスポーツ選手たちがかかり出したということは、僕たちも他人ごとではありません。

※3)プロ野球・阪神タイガースは藤浪晋太郎投手ら3選手、サッカーJリーグのヴィッセル神戸は酒井高徳選手の陽性を発表した。

――個人練習を自粛するほかに、感染防止に関する取り組みを教えて下さい。

福本 感染リスクになるような外出や会食は控えるように言っています。日々の手洗い、うがいはもちろんのことです。今は毎日、検温をして、問診票をチームのトレーナーに送るよう指導をしています。

球界初の感染者として公表された藤浪晋太郎。知人宅で藤浪を含めて10人以上集まった会食が行われていたという

――ダン・カーター(スタンドオフ)やブロディー・レタリック選手(ロック)らオールブラックス選手も母国のニュージーランドに戻ったのですか

福本 そうですね。外国人選手たちは早かったですね。3月10日くらいまでには帰りました。当初はバイウィーク(=Bye WeeK、試合のない週)の先取り、ということでリフレッシュ休暇の形でしたが、リーグ戦もなくなったので、現地にいます。主にメールなどでやり取りはしています。ラファエレ ティモシー(センター)ら帰化した選手らは日本に残っています。

――4月入社の新人4選手(※4)はいかがですか

福本 大卒の3人は社員選手です。4月1日から会社の新人研修を受けています。研修は2週間ほど続く予定です。高卒の濱野はプロ契約です。4人がいつからチームに合流するかなどは今のところ未定です。

(※4)松岡賢太(明大、フッカー)、粥塚諒(流経大、フランカー)、中孝祐(関西学大、ウイング)、濱野隼太(ロトルア・ボーイズ高=ニュージーランド、センター、ウイング)

――トップリーグの人気の巻き返し策などがあれば教えて下さい。チーム広報からはSNSなどでの情報発信を選手にも協力してもらって、できるだけ増やすという案などが出ているようですが

福本 できることをやっていくしかありません。本来なら大会が中止になったので、スケジュールが空いたこういう時にこそ、子供たちのラグビー教室など普及・発展にひと役買いたいところですが、現状ではそれもままなりません。

――これからのチームの予定は

福本 まったくの白紙です。これから考えることになるでしょう。社員選手はラグビーがなくなった分、当然、社業に励みます。チームとして先が見えないのは大変なことですが、ここは辛抱するしかありません。

 

◆福本正幸(ふくもと・まさゆき) 1967年(昭和42)10月16日生まれ。52歳。大阪府出身。現役時代のポジションはプロップ。天王寺高から慶大に進学。23歳以下日本代表。1990年に神戸製鋼入社。1988年度から始まった全国社会人大会(トップリーグの前身)と日本選手権の7連覇に貢献する。逝去した平尾誠二ゼネラルマネージャーの後を継ぎ、2017年から現場トップのチームディレクターに就任。2018年度のトップリーグでは15季ぶりの優勝を果たす。ラグビー支援室室長。家族は夫人と3子。

◆橋本大輝(はしもと・だいき) 1987年2月7日生まれ。33歳。福岡県出身。ポジションはフランカー。前主将。九国大付高から京産大に進む。2009年、神戸製鋼入社。2012年度に主将に就任。同年5月5日のアジア5か国対抗のUAE(アラブ首長国連邦)戦(106-3)に日本代表として出場。キャップ(所属協会が認めた国際試合出場数)1を持つ。当時の代表監督はエディー・ジョーンズ。神戸製鋼の主将は5季つとめる。営業企画部に所属。家族は夫人と2子

神戸製鋼は2月23日、昨年のワールドカップ主将を含むリーチマイケルがいる東芝に57-0と圧勝した
  • 取材・文鎮勝也

    (しずめかつや)1966年(昭和41)年生まれ。大阪府吹田市出身。スポーツライター。大阪府立摂津高校、立命館大学産業社会学部を卒業。デイリースポーツ、スポーツニッポン新聞社で整理、取材記者を経験する。スポーツ紙記者時代は主にアマ、プロ野球とラグビーを担当

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