野球ファン必読!年300試合観戦する男の「野球ロスの過ごし方」

野球ファンよ、「野球ロス」はこうやって乗り切ろう!

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ライター・西尾氏のノートに記述があるという成田高時代の唐川侑己。若い!というよりあどけない?

この原稿を書いているのは4月18日の土曜日。東京地方は朝からの雨が降り続き、神宮球場のある新宿区には洪水警報も発令されている。いつもの週末であったとしても野球場に足を運ぶのを断念して、家に籠っていただろう。

もしくは事前に天気予報をチェックして、天気の良い地方に遠征していた可能性もある。しかし今年はたとえ晴れていたとしても球場で野球を見ることは叶わない。新型コロナウイルス感染拡大の影響でプロ、アマチュアともに開幕の目途が立たないのだ。

筆者は野球、特に高校、大学、社会人のアマチュア野球をメインのフィールドに活動している。例年であれば2月下旬から大学、社会人のオープン戦に足を運び、3月上旬にはシーズン開幕を告げる社会人野球の東京スポニチ大会、下旬には選抜高校野球、4月からは大学の春季リーグ戦と高校野球の春季大会と毎週末試合のスケジュールが途切れることのない日々を送っている。

しかし今年はあらゆる試合が中止、延期となり、最初に見た公式戦は3月21日の九州六大学準硬式の春季リーグ戦だった。

このような生活をかれこれ15年以上続けているが、その年最初の公式戦が準硬式だったことはもちろん初めてである。この試合には先日FRIDAYデジタルでも紹介した最速153キロ右腕の大曲錬投手(福岡大準硬式)がいたため新鮮な喜びがあったが、その後も状況は悪化の一途をたどった。4月4日と5日には中国地区大学野球が何とか開幕したものの、その直後の7日には緊急事態宣言が発令。その週末から行われる予定だった大学野球のリーグ戦も全て延期となった。

筆者にとって書く機会が多いのが、これからプロになるいわゆるドラフト候補を紹介する原稿である。最近ではインターネットで得られる情報が増えてきているが、やはり実際にプレーを見ないことにはその選手について書くことは難しい。

ちなみに試合中はスコアブックではなく、オリジナルのノートを書きながら見ている。もちろんスコアブックを書けないわけではなく、既成のものでは自分が書きたい情報を書くスペースがないからだ。

選手の身長、体重、学年(社会人やプロの場合は年齢)を全員分書き、また打者が打ってから各塁までの到達タイム、捕手のセカンド送球、投手のクイックタイムなどをストップウォッチで計り、投手の球速もスピードガンで計測してメモをつけていく。そして目立った選手はその特徴について詳細をメモしていく。

甲子園や大学選手権のように一日で4試合あるような日はくたくたになるが、そんな中で素晴らしいプレーを見せてくれる選手に出会うと、テンションは上がり疲れも吹き飛ぶ。試合を見て記録をつけることがインプット、その選手や試合について書くことがアウトプットと言えるが、4月6日以降は現場での新たなインプットができない時期が続いているのだ。

ではこの苦しい時期をどう過ごしているのか。

一番活用しているのは先ほど紹介したノートである。一年間で使うノートの数は約15冊。過去のものを全て合わせると200冊以上になる。ここ数年間は記録をつけた選手についてデジタルデータ化もしているが、まだまだ終わっていないものも大量に残っている。そしてこれらをデータにする作業を行っているとすっかり忘れていたことを思い出したり、新たな発見があったりするのだ。

例えば今から14年前の2006年9月17日から10月7日かけてのノートでは唐川侑己(成田高)、菊池保則(常磐大高)、大隣憲司、小瀬浩之(近畿大)、金刃憲人(立命館大)、宮西尚生、清水誉、荻野貴司(関西学院大)、浅尾拓也(日本福祉大)、鈴木大地、井領雅貴(桐蔭学園高)、菅野智之、田中広輔、大田泰示(東海大相模高)という後にプロ入りする選手14人の記録が残っている。

ちなみにこの時に評価が高かったのは唐川、大隣、金刃、田中の四人で、大隣は金刃と投げ合った試合でノーヒット・ノーランも達成している。

しかし今や球界を代表するエースである菅野は桐光学園を相手に13安打を浴びて7失点で負け投手となり、荻野については2打席連続でショートゴロに倒れた後に代打を送られている。もちろんこの二人については記述も少ない。またパ・リーグを代表するリリーフ投手となった宮西についてもメモの量は多いものの、課題が多く書かれている。14年経ってまさか現在のような姿になっているとは誰も想像していなかっただろう。

少し前の例を出したが、今年ドラフトの対象となる選手についても、今まで以上に過去の記録や映像を多く見返している。特に高校時代から見ている大学生や社会人の選手などは過去の資料が多い分、改めて見えてくるものも少なくない。プロ野球選手のアマチュア時代、ドラフト候補選手の無名時代を振り返ってみることで、その選手についての知見が深まり、また野球自体の見方に奥行きが出てくることは間違いない。

過去のデータや記録を振り返る原稿を書く機会も増えているが、プロでもアマチュアでもなるべくその当時の映像も多く見るように心がけている。現在ではありがたいことに、過去の画像を探すことはひと昔前に比べて格段に容易になっている。そして80年代や90年代の映像を見て感じることは、プロもアマチュアも間違いなくレベルは上がっているということだ

平成の怪物と言われた松坂大輔は高校時代も確かに素晴らしいボールを投げていたが、佐々木朗希や奥川恭伸と比べると大きく見劣りする。そういったことに気づけるのも、振り返る材料があるからである。

プロ野球ファンもアマチュア野球ファンも、試合が見たくて辛い日々を過ごしているが、野球の良いところは過去の記録や映像を楽しめること、そしてそこから新たな発見ができるところではないだろうか。今ほど映像が簡単に見られなかった時代には、新聞や雑誌の写真を見て、その選手のプレーをよく想像したものである。その当時に比べると、今ではデータも映像も豊富に手に入ることは間違いない。

シーズン開幕の日が訪れることを信じて、あらゆる資料に触れながら野球について思いを巡らせてみるのも悪くはないはずだ。

  • 西尾典文(にしお・のりふみ)

    スポーツライター。愛知県出身。’79年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究(PABBlab)」主任研究員。

  • 写真アフロスポーツ

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