強豪高校ダンス部が自粛中に仕掛けた「在宅ダンス動画」の舞台裏

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新型コロナウイルスの影響で、全国高校総合体育大会(インターハイ)をはじめ、高校生のスポーツの大会も中止が相次いでいる。

三重高校ダンス部:世界挑戦への夢は「中止」ではなく「延期中」!(神田橋顧問提供写真)

そんな中、三重高校ダンス部がYouTube公式チャンネルにて「【在宅ダンス】三重中高ダンス部SERIOUS FLAVOR #うちで踊ろう」と題するリモートダンス動画を公開した。

動画では、中高一貫となる三重中学校の生徒たちを含めて、自宅で踊るダンス部の部員たちの様子が描かれている。再生回数は8万8000回を超え(5月12日現在)、「感動しました」、「しっかり実家感あってほっこりする笑」、「なぜか泣ける」など絶賛のコメントが相次いでいる。

「SERIOUS FLAVOR(シリアス フレーバー)」のチーム名を持つ三重高校ダンス部は、2017年に同好会から部活動に昇格した。高校ダンス部の全国大会「DCC DANCE CLUB CHAMPIONSHIP 2017(第5回全国高等学校ダンス部選手権)」決勝(2017年8月)では、“バブリーダンス”を披露した大阪府立登美丘高校(作品名は「扇舞(ジュリアナ)」)に次ぐ準優勝となり、注目を浴びた。

この3月には、米ニューヨークの「アポロシアター」で開催のアマチュアパフォーマーのコンテストイベント「アマチュアナイト」への出場を含む4日間のニューヨーク遠征を計画していた。が、コロナで断念。

三重高校ダンス部顧問で同校OBでもある神田橋純氏(31歳)にリモートでインタビューを行い、「在宅ダンス」動画に込められた思いや、コロナで学校に行くことができない高校生たちの様子を聞いた。(インタビューは大型連休中に行った)

部員のほとんどはダンス未経験者だが「アイデア」と「チームワーク」で全国大会で結果を残す(神田橋顧問提供写真)

大会休止 大学進学・推薦入学に不安感 

--三重高校の様子から教えてください。

5月いっぱいまで臨時休校になっています。緊急事態宣言が発令されてから5月6日までは、教職員も出勤禁止となっており、5月7日からは必要がある教職員のみ学校に行くことができるようになります。野球部など外のグラウンドを使う部活を含め、部活動は基本的にやっていません。

--インターハイをはじめスポーツの大会が中止になったことについて、高校生の反応はどうでしょう。

「ついてないなあ」とこぼしています。三重高校は野球部が2014年に夏の甲子園で準優勝したのですが、野球部をはじめ、ソフトテニスやバレーボール、剣道、サッカーなどのクラブでたくさんの生徒が全国の舞台での活躍を目指しています。スポーツに打ち込んでいる生徒たちにとっては、インターハイや夏の大会の成績で進学先が大きく変わることがあります。

そういう生徒たちは、「大学進学、どうなるのだろう」と不安になることもあると思います。ただ、現在の状況をなげいても仕方がないので、生徒たちには、「臨時休校の期間中に、たくさん勉強しなさい」と伝えています。大学入試の面接では「自粛期間中、あなたは何をしましたか?」と絶対に聞かれると思うので、臨時休校中にやっていることを整理しておくようにアドバイスもしています。

Zoomでインタビューに応じてくれた神田橋顧問

ダンス部「NY遠征」延期でも「生徒たちはオトナでした」

--ダンス部も、3月のNY遠征を延期しました。まず予定していたNY遠征はどのようなものだったのでしょう。

NYには3月13日に出発し、4日間、滞在する予定でした。「アマチュアナイト」への挑戦をはじめ、NYの小学校や高校を訪問してパフォーマンスを披露したり、タイムズスクエア、ブルックリンブリッジ、セントラルパークなどを背景に、クラウドファンディングで協賛してくださった企業様へのリターンとなるCM動画を撮影したりするスケジュールを組んでいました。

「アマチュアナイト」は、僕が大学生のころにダンスで目指した経験があり、その話をどこかで生徒たちにしていたのだと思います。三重県が主催する「第2回みえの子ども『夢 実 現』応援プロジェクト」にダンス部で応募することになった際、「憧れのアポロシアターで踊りたい!!」との企画が持ち上がりました。

--延期は、いつごろ決めたのですか。

渡米を中止する場合、飛行機やホテルなどのキャンセル料のこともあり、2月中に決断する必要がありました。2月の段階ではまだ「行ってもよいのでは」という意見もありました。渡米予定の30人の生徒の中には、NY遠征でダンス部を引退し、併せて高校を卒業する3年生も3人いました。

ただ、保護者の方と生徒を集めて話し合った結果、「帰国できないリスクがあるのでは」、「延期するべきだと思う」という結論に達し、やむなく、延期することになりました。

実は、延期については、卒業を目の前にした3年生3人に、まず最初に相談をしました。3年生たちは「延期も仕方ないと思います。私たちのことは気にしないでください」と言ってくれました。

3年生たちは、ダンス部が部活動に昇格した2017年に新1年生として入学した生徒たちです。夏の全国大会でいきなり準優勝し、その翌年は同じ大会で3位入賞。「読売中高生新聞賞」も受賞したので、東京ドームでの巨人阪神戦の際にグラウンドでパフォーマンスをすることもできました。その年のインターハイは三重県で開催され、開会式でも三重高校ダンス部がパフォーマンスを披露しています。

彼らは「私たちは同好会のときの苦労を知らず、入部してからは楽しい経験ばかりをたくさんさせてもらいました。なので、何の未練もありません」と言ってくれました。ただ、部内での厳しいオーディションを勝ち抜いて参加する権利を獲得したNY遠征だったので、行きたかったはずなのですが、……生徒たちはオトナでした。

※気さくにインタビューに応えてくれた神田橋先生だが、NY遠征を断念する相談を3年生にもちかけた際の様子を振り返ったときは、ビデオ通話の画面越しでも、両目いっぱいに涙をためていることが伝わってきた。

部員のほとんどはダンス未経験者だが「アイデア」と「チームワーク」で全国大会で結果を残す(神田橋顧問提供写真)
ドリカムのライブに出演する三重高校ダンス部の様子(2018年11月、名古屋日本ガイシホール、神田橋顧問提供写真)

休校中に何をするのかが大事 「在宅ダンス」が誕生

--4月3日には「在宅ダンス」動画を公開されました。

臨時休校が始まってから部員たちと会えなくなったので、ビデオ通話を利用して、2日に1回、ミーティングを開くことにしました。休校期間は長引くかもしれないし、そこで何をするのかが大事になると思ったのでアイデアを出し合い、「僕たちにしかできない何かをしたいよね」と相談し、「ダンス部なのでダンス作品を作りたい」ということで「在宅ダンス」動画を作りました。

動画を公開してからは、反響がものすごくあります。今までYouTubeで公開した動画にこれだけ多くのコメントが付いたことはありませんし、再生回数がこれだけ伸びたこともありませんでした。生徒たちもみんな、反響の大きさにビックリしています。

早くも「在宅ダンス」の次の企画が!

--現在、「在宅ダンス」動画の次の企画となる「GWはシリフレと踊ろう! オンラインダンスセッション」が進行中ですね。全国からダンス動画を募集して「在宅ダンス」動画を作ろうというものですが、どういった経緯で企画が持ち上がったのでしょう。

NY遠征の企画を通して地元の方々と繋がりができました。その方々とビデオ通話で話をする中で「地域の人たちと一緒に踊る動画を作りたいね」と生まれた企画です。当初は、GW中に公開する予定でしたが、ダンス部の生徒たちから「もっと企画を広げたい」との声が出て、動画の募集を5月17日まで伸ばしました。

現在、北海道から九州まで全国各地から動画が集まっています。他校のダンス部の生徒さん、大学のよさこいサークルの方々、地元の小・中学生の方や、大人たちからも動画が送られてきています。

「在宅ダンス」第2弾企画では全国からダンス動画を募集

僕は知りませんでしたが、ダンス部の生徒たちが、全国のダンス部やダンススクールなどを調べて、案内のメールを送っていました。ダンス関係の友達から「連絡、来たよ」とメッセージがあったり、大阪にある高校のダンス部の顧問の先生と話をしているときに「こんな企画をやるんですよ」と口にしたら、「連絡が来たやつですね」と言われました。

NY遠征や自主公演(ダンス部の単独公演。保護者や地元住民などが招待される。3月8日に予定されていたが延期になっている)を計画する中で、生徒たちの発想力や行動力が成長したのだと思います。

--完成した動画の公開が楽しみです。最後に、この自粛期間を高校生たちにどう過ごして欲しいかを教えてください。

冒頭でも言ったのですが、「ダンスをしたい」「部活をしたい」という気持ちもあると思いますが、まず何よりも勉強をしてほしいです。三重高校なら、1日に50分の授業が6回、合計300分の勉強の機会がありました。その時間が、家でただゴロゴロしているだけの時間になってしまったら、あとで大変な目に遭うと思います。

生徒たちには、「今この時期にしっかりと勉強している子たちが、この世代を引っ張る存在になると思うよ」と伝えています。

***

「在宅ダンス」動画に登場する中高生の方々は陽気に踊っているが、現在の状況の中では、辛く、苦しい時間を過ごすこともあるのかもしれない。しかし、それでも、日本を元気にしたいとの思いから笑顔を見せてくれる姿には頭が下がるばかりだ。新作動画の公開とともに、三重中学・高校ダンス部の方々のいっそうの活躍に期待したい。

 

【三重中学・高校ダンス部 SERIOUS FLAVOR(シリアス フレーバー)】

神田橋純先生が三重高校の生徒だったときに友人たちとダンスチーム「SERIOUS FLAVOR(シリアス フレーバー)」を結成。当初は校舎から遠く離れた駐車場で練習していたが、その後、同好会になり、2017年に部活動に昇格。

初代SERIOUS FLAVOR(シリアス フレーバー)(一番左が高校生のころの神田橋氏)(神田橋顧問提供写真)

部活動になってからの主な成績:「DCC DANCE CLUB CHAMPIONSHIP 2017(第5回全国高等学校ダンス部選手権)」準優勝、「DCC DANCE CLUB CHAMPIONSHIP 2018(第6回全国高等学校ダンス部選手権)」3位&「読売中高生新聞賞」ら特別賞、「第1回日本高校ダンス部選手権公式選抜大会 グランプリ決定戦」(2019年11月)特別賞、「全国高等学校Re-Style DANCE CUP2019決勝大会」優勝&準優勝(複数チームが出場)、ほか、GENERATIONS from EXILE TRIBEのドームツアー公演(名古屋ドーム)、DREAMS COME TRUEのLIVE(名古屋ガイシホール)などに出演。

年間で80回はイベントに出演「おそらく、全国で一番、イベントに出演しているダンス部だと思います」(神田橋顧問提供写真)
「在宅ダンス」動画を公開した三重高校ダンス部(神田橋顧問提供写真)
  • 取材・構成竹内みちまろ

    1973年、神奈川県横須賀市生まれ。法政大学文学部史学科卒業。印刷会社勤務後、エンタメ・芸能分野でフリーランスのライターに。編集プロダクション「株式会社ミニシアター通信」代表取締役。第12回長塚節文学賞優秀賞受賞。

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