自宅にいながら季節の風物詩が楽しめる! 美しすぎる和菓子の世界
新型コロナウイルス感染流行を予防するため、今までのように外出できない日々が2か月近く続いている。しかし自宅にいながらも、四季を感じるのにうってつけの方法があるのだ。
4月にコロナウイルス感染拡大防止のために緊急事態宣言が発令された。5月に解除されるまでの間は日々の活動を制限され、不自由な日々を過ごした人も多いことだろう。約1か月強にわたる期間の間に季節は移ろい、何事もなかったかのように梅雨を迎えている。気がつけば、春の訪れを感じることのないままに桜も散ってしまっていた。
隅田川の花火大会や青森のねぶた祭り、徳島県の阿波踊りなど、今後も季節のイベントは、密を避けるために中止を決定しているものが多い。6月に入って少しずつ日常に戻りつつあるが、感染の第2波が起こる可能性もあり、今までのように外出やイベントを楽しむことは難しそうだ。
そんな時に注目したいのが“和菓子”。“二十四節気”などに即して四季を表現する練り切りからは「季節感」を感じることができるというのだ。昨今では、若者や外国人にも和菓子が大人気。中でもツイッターに投稿するとたちまちバズってしまう、「美しすぎる和菓子」を手掛ける“匠”がいるという。
「和菓子は高齢者向けだと思われていたのが嫌で、若者や外国の方などの和菓子に馴染みがない方に興味を持ってほしかったのが、芸術的な和菓子を作ろうと思ったきっかけですね」
こう語るのは、和菓子職人・三納寛之氏だ。三納氏は、主にネット販売を中心に和菓子の販売を行う一方で、菓子教室の講師やイベントへの出展販売などを行っている。
実家は、愛知の老舗和菓子店屋だという。しかし、「普通の和菓子屋の枠に納まりたくなかった」ため、実家を継がずにフリーで活動することを決意した。



その選択によって、作品づくりに向き合う時間を確保できているのだと三納氏は分析する。
「日々の業務もあると精巧でクオリティーの高いものを試作する時間を確保することはもちろん、販売するためにそれを大量に生産することも難しいでしょう。そのため、時間をかけて凝った作品を制作する和菓子職人が少ないのです。店舗を持たずフレキシブルに動けることが、私の強みだと思っています」
三納氏の和菓子は、ただ定期的に販売されるわけではない。それだけ制作に時間を要するからこそ、人々の心に響くのだ。
エンタメをモチーフにした作品も
自身を「菓道家」と称する三堀純一氏もまた、うっとりとするような和菓子を作る匠である。
「食べる消耗品ではなく、見るものとして和菓子に価値を見出してもらえるように、極めて精巧なものを作るように努めています。ちなみに海外では、私の掘り方を名前とかけて“ミツボリック(mitsubolic)”と呼んでいただいています(笑)」(三堀氏)
そんな三堀氏が作る和菓子は芸術的で、ショーケースに飾っておきたくなるようなものばかりだ。


三堀氏は、横須賀に代表を務める和菓子店を構えるが、数々のショーへ参加し、“芸術作品”として和菓子を広めてきた。年間半年以上は、海外に滞在し、国内外のVIP向けに、和菓子をエンターテインメント作品として提供している。
’16年に「菓道一菓流」という流派を開き、菓子を作る所作や空間の演出をもって客人をもてなすものとして「菓道」を提唱する第一人者なのだ。
「和菓子を茶席の脇役ではなく、それ自体として価値のあるものにしようと思いました。というのも、国内外のショーに出させていただく中で、ハイクラスな方達は、高いものではなく、なかなか買えないものに価値を見出す人が多いと気づいたからです。
そのため、菓子単品ではなく、制作過程のパフォーマンスも含めて提供しています」(同・三堀氏)
甘くて美味しいだけではない。季節感をもたらし、味覚だけではなく五感で楽しませてくれるもの。今だからこそ真価を発揮できるのが、”和菓子”なのだ。


取材・文:村嶋章紀