危ないアプリを掲載 中国・習近平の「情報戦略」本当の狙い

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中国政府は約20年もの歳月をかけ、他国のネット・通信インフラを乗っ取るための情報戦略を整えてきたという。写真:時事通信社

「中国製のアプリやスマホ、パソコンなどのネットワークにつながる機器を無防備に使うと、クレジットカード情報、口座番号などの情報が中国へ筒抜けになります。

結果、使ってもいないお金が引き落とされる危険性があります。最悪の事態になると、日本企業が中国政府に機密情報を抜き取られ、会社が倒産に追い込まれることもあり得るんです」(ITジャーナリスト・井上トシユキ氏) 

8月上旬、トランプ米大統領は中国大手IT企業との取引を禁止する大統領令に署名した。対象となったのは、動画投稿アプリ『TikTok』を運営するByteDance社と、チャットアプリ『WeChat』を運営するTencent社の2社。安全保障上の脅威になるから、というのが理由だ。

中国製アプリを締め出す動きを見せるのはアメリカだけではない。インド政府は6月下旬、59種類の中国製スマホアプリの使用禁止リストを発表。オーストラリアやイギリスも同様の検討を始めた。

日本でも、自民党の『ルール形成戦略議員連盟』が『TikTok』を含む中国系アプリの利用を制限する法整備を政府に求めている。

ここにきて一気に中国製アプリの危険性が騒がれ始めているが、具体的にはどういったリスクがあるのか。

「中国のアプリはセキュリティが甘く、例えば『TikTok』は基本的なハッキングの知識さえあればデータを管理するサーバーに簡単に侵入できると言われています。さらに、サーバーに侵入したハッカーは、ウイルス付きのメッセージを利用者に送りつけることもできます。このメッセージを開くと、スマートフォン内のクレジットカード情報などを盗まれてしまいます。そこから金銭被害が生じるのです」(前出・井上氏)

TikTokを運営するByteDance(北京)

日本クレジット協会によると、’19年に国内で発生したクレジットカード不正利用の被害総額は約274億円。このうち、スマホやパソコンなどからカード情報を抜き取る番号盗用被害は8割を占める。なかには、一回につき1000円単位の少額を何度も使用することで被害者に気付かれにくいよう工夫しているケースもあるという。

アプリ以外に、監視カメラなどの中国製ネット機器も、そのセキュリティの甘さが指摘されている。

「中国製ネットワーク機器には、〝バックドア〟と呼ばれる遠隔操作用の侵入経路が仕込まれていると見られており、これこそが、セキュリティの脆弱性を引き起こしていると考えられています。

企業の背後に国家がついている中国の体制を考えれば、中国製ネット機器には最初から〝バックドア〟が仕掛けられていると考えたほうが賢明です」(情報リスクアドバイザーの岩見守和氏)

日本の機密情報が中国で丸裸

通信機器大手メーカーのHUAWEI(深セン)

中国製のアプリやネットワーク機器を利用することで、企業や国家の重要機密が中国へ筒抜けになることも危惧される。

「中国側の手口としては、まずアプリの利用者から個人情報を盗み出す。次に、その中から大手企業や国に関係する人物のメールアドレスを探し出し、彼らへウイルス入りのメールを送る。受け取った人がメールを開くと、パソコンがウイルスに感染し、ハードディスクの中身が丸見えになる。そこから企業や役所の重要情報へアクセスする方法を取得し、情報を盗み出すのです。これを続ければ、芋づる式に大企業や国家の機密情報を盗み取れます」(前出・井上氏)

日本の複数の大手企業は、すでにハッキングの被害を受けたことがあるという。

「これまで中国によるサイバー攻撃を受けたと見られているのは、神戸製鋼所、三菱電機、NTTコミュニケーションズなどです。今年5月、サイバー攻撃に遭ったNTTからは自衛隊の通信ネットワークに関わる情報が流出。三菱電機も同時期にサイバー攻撃を受け、『高速滑空ミサイル』の性能に関する情報が漏洩(ろうえい)したと報道されています。どちらも中国による攻撃だと考えていいでしょう」(全国紙社会部記者)

ハッキングを受けて倒産した企業もある。カナダの大手通信機器メーカー『ノーテル・ネットワークス』は、ネット機器の設計図などの重要情報を盗まれたことで競争力を失い’09年に倒産。サイバー攻撃を繰り返していたのは中国の人民解放軍と見られ、一部メンバーはFBIから指名手配を受けた。盗んだ情報は中国通信機器大手の『HUAWEI』に提供され、同社を急成長させたと言われる。

世界に向けたサイバー攻撃を盛んに仕掛ける中国。その本当の狙いは何か。

「中国は、他国のネット・通信インフラを乗っ取ろうとしているのです。中国は約20年も前から、今後はITを使った攻撃が有力であると考え、情報戦に注力してきました。元米国家安全保障局職員のエドワード・スノーデン氏はアメリカが国ぐるみでハッキングをしていることを暴露しましたが、現在は中国も同じことをしています。値段が安いからといって中国製ネット機器に安易に飛びつくと、個人や企業の情報のみならず、国家の機密情報まで筒抜けになる危険性があるのです」(前出・岩見氏)

中国製のアプリやネット機器を使用することは、軍事、経済、IT技術などの重要機密を流出させることにつながりかねないのだ。

WeChatを運営するTencent(深セン)。中国企業に情報が漏洩した場合、その情報は中国政府にも伝わっていると考えられる

『FRIDAY』2020年9月4日号より

  • 取材・文桐島 瞬

    ジャーナリスト。’65年、栃木県生まれ。原発問題からプロ野球まで幅広く取材。『FRIDAY』や『週刊プレイボーイ』、『週刊朝日』など雑誌を中心に活躍している。

  • 写真時事通信社

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