「脚本家で見る秋ドラマ」注目株は『相棒』出身の神森氏の作品!

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岡田惠和、遊川和彦、中園ミホ……、大御所からネクストブレイクまで。新ドラマは、気になる脚本家の作品が勢揃い

『半沢直樹』『私の家政夫ナギサさん』『MIU404』と、TBSドラマがいずれも好調だった夏。しかし、「脚本」という点で見ると、野木亜紀子脚本の『MIU404』が一人勝ち状態だった印象もある。 

その点、9月・10月スタートの秋ドラマには、旬の人から大御所に至るまで、様々な脚本家が揃った。そこで、放送開始前に「脚本家」という観点から期待値を考えてみたい。

ファンタジーとリアルが絶妙な岡田惠和、安定感抜群の中園ミホ、構成力の黒岩勉

安心して観られそうなのは、2019年に紫綬褒章を受章した岡田惠和が手掛ける、有村架純主演の『姉ちゃんの恋人』(カンテレ)だ。NHK連続テレビ小説『ひよっこ』をはじめ、有村架純とは6作目のタッグとなる。

加えて、有村演じる桃子が思いを寄せる青年・吉岡には、岡田が本人のイメージから「あて書きした」という林遣都がキャスティングされている。派手な展開でグイグイ引き付けるのではなく、普通の人々の「日常」を見せる岡田脚本の場合、演じ手の力量が問われる部分も大きいだけに、有村架純×林遣都は大きな安心感だ。

また、『わたナギ』の魅力の一つには「悪い人が一人もいないこと」が多く指摘されていたが、こうした近年の流れよりだいぶ前から、悪人が登場しないファンタジー的世界観を描いてきたのが、岡田惠和である。加えて、今回の舞台は「ホームセンター」で、「工場」「スーパー」など、人の仕事が肉体の温もりを伴って描かれることの多い岡田作品ならではの魅力がありそう。

全体に流れる優しく穏やかな世界観の一方で、戦争や何らかの喪失感、壮絶な過去やトラウマを背負った人物が描かれる残酷さも岡田作品の特徴の一つだが、そこを引き受けるのが今作では林遣都となる。

とはいえ、有村が「疲れた気持ちが少しでも和らぐような、見てくださる人達が安心できる作品にしたいと思います。笑っているところが切なかったり、少し泣けるという場面はありますが、苦しさとか悲しさはないドラマです」と明言しているように、しんどく重たい展開になることはなさそう。コロナ禍で疲れた人の心を温かくしてくれる期待大だ。

また、「安定感」という点では、まず間違いないのが、中園ミホが脚本を手掛ける『七人の秘書』(テレビ朝日系)。中園ミホ脚本×テレ朝は、『ドクターX~外科医・大門未知子~』シリーズで実証されているように、まず「失敗しない」。そもそも『やまとなでしこ』から続編の『ハケンの品格』に至るまで、常に「自分」を持った強い女性を描いてきた中園ミホ。今作では、日本社会の裏で暗躍する「影の軍団」として、強い女性がズラリと並ぶ。さらなるパワーアップが見られるのではないだろうか。

一方、スリリングな展開が期待できるのは、『グランメゾン東京』などの黒岩勉脚本、妻夫木聡主演の『危険なビーナス』

妻夫木聡の16年ぶり「日曜劇場」主演ということもあり、吉高由里子、ディーン・フジオカ、染谷将太、小日向文世、斉藤由貴、麻生祐未など、目いっぱい豪華な脇役陣を揃え、絶対失敗できない態勢を整えている。

こうなってくると、成否を分けるのは脚本次第だが、黒岩勉×ディーン・フジオカといえば、思い出されるのが、『モンテクリスト伯~華麗なる復讐』のタッグ。古典の名作をアレンジし、時代も国境も超える摩訶不思議なエンタメに昇華させた手腕は実に見事だった。

とはいえ、気になるのは、原作が東野圭吾作品の中ではあまり人気のない類ということ。特に惚れっぽい主人公・伯朗は東野圭吾ファンの間では「エロ朗」とも言われ、あまり愛されていないうえ、展開も「安易」「2時間ドラマみたい」など、酷評が多い。

その不安要素はあるものの、黒岩勉は『ようこそ、わが家へ』『ストロベリーナイト』など、ミステリー原作を得意とする人物。例えば、市川森一脚本賞などを受賞した『僕のヤバい妻』では、あらすじを見る限り少々薄そうな内容にもかかわらず、二転三転する展開を盛り込み、どんどん引き込まれていく「連続ドラマ」としての構成力を見せつけてくれた。そうした実績から考えると、今作もおそらく「最も続きが気になるドラマ」の一つになるのではないだろうか。

作家性がとにかく強い遊川和彦、「特撮ファン」垂涎の長坂秀佳

良くも悪くも、役者や演出よりも毎回「脚本」が最も注目されるのが、遊川和彦。今回手掛ける柴咲コウ主演の『35歳の少女』は、不慮の事故で10歳の時に眠りについて、25年ぶりに目覚めた主人公の物語となる。

設定は、韓国ドラマ『30だけど17です』に似ているという指摘もあるが、何より心がざわざわするのは、5年前に放送された『〇〇妻』の柴咲コウ×遊川和彦のタッグに加え、プロデューサー、監督を含めた同じ座組だということ。あの衝撃的な結末がトラウマになっている人もいるのではないだろうか。

伝説的にもなっている朝ドラ『純と愛』(2012年)からこの『〇〇妻』あたりまでの時代、遊川作品は誰かを殺したり不幸にしたりしないと居られないのではないかと思うほどの暗黒時代に入っているように見えた。

それが時代の不安定さや、自身が父になった影響もあってか、『過保護のカホコ』(2017年)あたりから優しく温かい物語を描くように変わってきている。終始不穏さをたたえていた『同期のサクラ』(2019年)も、主人公が意識を失い、眠りにつく時期はあったものの、「仲間」を軸とした優しい物語となっていた。

近年の傾向を考えると、同じ座組とはいえ、コロナ禍のしんどい時代に『〇〇妻』が繰り返されることはおそらくないはずだ。

一方、コロナ禍のどさくさに紛れて、とんでもないことをやってしまおうと企んでいそうなのが、秋元康原作で、自らが脚本・監督を手掛ける大根仁『共演NG』(テレビ東京)。「忖度」など何でもアリの業界の裏側という、非常にデリケートな話題を取り上げてしまう不敵さは、さすがテレビ東京。2010年以降のテレ東深夜ドラマの注目度や地位を大きく高めるきっかけとなった『モテキ』(2010年)などの功績を考えても、大根仁脚本×テレ東は見逃せない。

それから、有名どころの脚本家が揃う秋ドラマでも、最も大御所といえば、『24 JAPAN』長坂秀佳。40~50代の世代にとっては、特撮ドラマの『怪傑ズバット』(1977年)や『特捜最前線』(1977年~87年)の人であり、若い世代にとってはゲームの『弟切草』『街』などでおなじみの人。『弟切草』などは、洋館で起こる同じ要素を盛り込みつつ、20話近いボリュームを書き上げてしまう脳みその体力で圧倒してくれたが、1941年生まれの79歳! 時代ごとにテイストや媒体を変えつつ、どこでもヒットを出してくる、脚本家界の高橋留美子のようなトンでもない化け物先生である。

娯楽性の高い復讐劇も、人情ドラマも長坂御大の得意分野。また、『24』の主演・唐沢寿明は、東映アクションクラブのスーツアクター出身者。また、仲間由紀恵も『ごくせん』でブレイクする前には『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』など(1999年)に出ていた特撮出身者。つまり、特撮ファン必見のドラマなのだ。

また、芸風の幅広さと多作の体力、取材力で圧倒的なのは、続編が放送される『監察医 朝顔』を手掛ける根本ノンジ

『相棒』シリーズで知られる脚本家だが、まったり感がクセになるサウナ好きたちの『サ道』(テレビ東京)や、デリヘルの世界を描いた『フルーツ宅配便』(テレビ東京)など、全く異なる味わいの作品を同時期に手掛ける仕事の速さ・確かさが見える「これぞプロ」の脚本家だ。

深夜ドラマではいつでもどこかで書いている印象がある多作な彼が、単に器用というワケではないことを証明したのが、フジテレビ「月9」の救世主ともいえる『監察医 朝顔』である。

原作つきながら、もはやオリジナルと言って良いほどの作品の厚みを持ち、法医学×刑事という異色タッグを題材にしつつも、全体に流れる空気はあくまでホームドラマとしての「日常」だった。震災を扱いつつ、ウェットになりすぎない視点や、バランス感覚も絶妙。秋冬の2クール連続となる続編も、大いに期待できる。

その他に、気になるのは、『夏子の酒』『ホタルノヒカリ』から、近年はNHKでの『みかづき』や朝ドラ『スカーレット』に至るまで、女性の心情をリアルに描いてきた水橋文美江が描く『♯リモラブ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)。

ネクストブレイク枠として注目したいのが、民放ドラマの最注目枠ともいえる「TBS火曜ドラマ」の『この恋あたためますか』を手掛ける神森万里江。まだまだ知名度は高くないが、中井貴一主演の傑作ドラマ『記憶』や、『相棒18』で「神回」と呼ばれる第三話「少女」を手掛けた人物で、1982年生まれという若手でもある。

大御所から若手まで、非常に充実した秋ドラマの脚本家たち。その作風の違いや力量、自分の好みとフィットするかどうかなどを中心に見比べてみてはいかがだろうか。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

  • イラストまつもとりえこ

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