池田エライザ 文科系男子も肉食系男子も制覇する全方位的無敵感 | FRIDAYデジタル

池田エライザ 文科系男子も肉食系男子も制覇する全方位的無敵感

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池田エライザがTBS系音楽番組『CDTVライブ!ライブ! 秋のラブソング4時間スペシャル』に出演。森田童子の「ぼくたちの失敗」をカバーし、その歌唱力が絶賛された。 

優しく伸びやかな歌声は、確かに魅力的だ。しかし、彼女の最も優れているのは、24歳とは思えない、そうした曲を選ぶセンス、さらに曲にかける思いとして「今のご時世、心が弱っている人が多いと思うんですよね。私もそういう時期がありました。でも、それを否定するわけではなく、そのときのニオイや光景を音楽として落とし込んでいるのが、この曲の素敵なところ。ネガティブなようでポジティブな前向きな気持ちにしてくれる歌詞」と語ってみせる「発信力」にあると思う。 

どう見ても華やかで、クラスの中では間違いなく「一軍」で、交友関係もウェイ系が多そうな肉食系に見えるのに、発言や思考の方向は限りなく文科系・サブカル系の池田エライザ。 

こうした彼女のスタンスや発信力は、そのまま女優業での需要にもつながっていると思う。

(イラスト:まつもとりえこ)
(イラスト:まつもとりえこ)

サレンダー橋本による同名漫画を原作とした、濱田岳主演の深夜ドラマ『働かざる者たち』(テレビ東京系)が、毎度身につまされる内容になっている。

舞台として描かれるのは新聞社だが、“働かない人々”の生態や、そうなっていった経緯は、どんな会社のどんな部署にも見られるリアルさがある。

そんな中、池田エライザが演じるのは、主人公・橋田一(濱田岳)の勤める会社の人事部社員・川江菜々だ。

自身は高卒であることを理由に、仕事を他の人に押し付け、適当にサボりつつ、橋田が副業で漫画を描いていることを知り、秘密を共有しながら、応援したりちょっかいを出したりする。

業務はテキトーに流す一方で、一の漫画については「普通の人がわざと変人ぶって描いてる感が見え見え」「無駄な自意識を捨てて読者を楽しませること考えたら? 天才じゃないんだから」などど、編集者顔負けのもっともらしいことを上から目線で進言する。「最近だと異世界転生モノが流行ってる」などと提案したり、締め切りを勝手に設定したり、「BLを描け」と言ったり。それがまんざら的外れではないだけに、一は「なんだよアイツ、ちょっと可愛いからってエラそうにさ! まあまあ可愛かったけども! 結構可愛かったけど……」と振り回されてしまう。

高身長で濱田岳を圧倒的に見下ろす構図も良いが、何よりこの「ユルさ」と「トンガった感性」が良い塩梅で同居する感じが、池田エライザならではの魅力である。

池田エライザには、妙な説得力があったり、上からモノを言われても「ぐぬぬ……」と悶えつつ、快感を覚えたりしてしまいそうな不思議な力がある。

(撮影:川上孝夫)
(撮影:川上孝夫)

彼女の役者としての魅力をはっきりと感じたのは、押見修造の漫画を原作とするドラマ『ぼくは麻里のなか』。「コンビニの天使」と呼ばれて片想いされる一方、入れ替わりによって「陰キャ引きこもり」の吉沢亮演じる「気持ち悪い小森」が入ってしまった状態が、「ちゃんと気持ち悪かった」ことには衝撃を受けた。

さらに同作と同じ脚本家・下田悠子の文学的香り漂う、井之脇海主演のドラマ『青と僕』では、突然亡くなってしまった同級生(寛一郎)の死をめぐり、現在と過去が交錯する中、真相を探っていくミステリーの重要な一角を担っていた。お互いの記憶の中にある微妙なズレをつなぎ合わせ、重ね合わせることで見えてくる複雑な構成を成立させていたのは、緻密な脚本に加え、井之脇海、寛一郎、池田エライザというメインキャスト3人の力によるものだろう。

また、現在、田口トモロヲと出演している真夜中ドラマ『名建築で昼食を』(BSテレ東)では、SNSを通じて出会った「乙女建築」巡りを趣味とする建築模型士・植草(田口)を指南役とし、様々な名建築を訪れ、ランチを共にするOL・春野藤を演じている。

これはアドリブを交えながら名建築を巡るという、ドキュメンタリー+ドラマのハイブリッド作品だが、おじさんと建築鑑賞ランチをする2人きりでするという奇妙な設定に、違和感が何もない。

お相手が、昔はロックバンド「ばちかぶり」で過激なパフォーマンスをしていたり、数々のどエライ変態役をこなしたりしていたものの、近年は可愛いイメージに変わっている田口トモロヲだということもある。

しかし、何よりも、おじさんとのランチで、お世辞も言わなければ、大げさなリアクションもしない、淡々と素朴かつマイペースに楽しみ、そこそこの理解を示す関係性のフラットさが、他の若い女優では成立しない気がするのだ。

かつてインタビューで、同世代との交流よりも40~50代の「大きなお友達」と過ごす時間が多く、年上とも対等で話すために、おごらせないと語っていたように(「GOETHE」情熱パーソン/2018年7月8日)、実際、おじさん友達が多いこともあるだろう。

文科系・サブカル系に重宝される女優というと、麻生久美子や蒼井優、二階堂ふみ、成海璃子など、中性的で凛々しい美しさがあるか、「こじらせ感」のあるタイプが多い印象がある。

しかし、池田エライザは、彼女らよりも、なんだかユルい。

出世作となった映画『みんな!エスパーだよ!』では、茶髪ヤンキー女子高生として存分にパンチラ演技を見せ、園子温監督に「池田エライザはとってもエラい存在感と、とってもエロい存在感! 池田エロイザでもある!」と絶賛されていたように、ギリギリ下品の一歩手前になりかねないエロスがある。

また、先日、Instagramで自身の最近の体重をあかし、ダイエットしようかとも思ったが「個性だと諦めました」と告白しているが、そうした言動を含めて、文科系男子の「ナチュラル信仰」をますますくすぐってしまう。

読書や絵を描くことが好きで、家で引きこもることも好きで、歌も歌うし、監督もする。

肉食系でエロく見えるのに、サブカル系・文科系男子にとっての「共感者」「理解者」にも見える池田エライザ。

文科系+肉食系を全方向に制覇してしまう、無敵の女優なのではないだろうか。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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