岸井ゆきの、古川琴音…「童顔女優」が重用される背景 | FRIDAYデジタル

岸井ゆきの、古川琴音…「童顔女優」が重用される背景

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名役者揃い“ユマニテ”の最終兵器!? 古川琴音が気になる

10月20日、SNSの急上昇ワードにランクインした「古川琴音」という名前。いったい誰かご存知だろうか。

窪田正孝主演のNHK連続テレビ小説『エール』で、主人公・裕一(窪田)とヒロイン・音(二階堂ふみ)の娘・華(根本真陽)の成長後として登場している。

この日、華が制服姿で学校に出かけた後、ドラマ内の時間は1年半が経ち、数秒後に帰ってきたのが、制服姿の古川琴音だった。

この急スピードの成長ぶりには度肝を抜かれたものの、なぜか登場した瞬間から、妙な安心感がある。

と思ったら、興奮冷めやらぬ同日夜、森七菜主演のTBS火曜ドラマ『この恋あたためますか』第一回に、主人公・樹木(森)が働くコンビニのアルバイト仲間で、親友の中国人・スーとして登場。

朝ドラと、民放最注目枠のひとつ・火曜ドラマに同日に初登場したことも驚きだったし、『エール』ではヒロインの妹を演じる森七菜の姪にあたる華の役者が、『この恋あたためますか』では親友を演じているという偶然のつながりにもビックリ。

しかし、一見「もってる」ように見えるこの状況は、単なるラッキーではない。何故なら、多くの人がこれまでも古川琴音を数々の作品で観てきたためだ。

© Ittetsu Matsuoka
© Ittetsu Matsuoka

たとえば、『恋あた』でドS社長を演じている中村倫也とは、『凪のお暇』(TBS系)で共演済み。しかも、中村倫也演じる「メンヘラ製造機」こと、ゴンのもとに押しかけ、刺そうとしていたくせにキスして、なあなあになるメンヘラ美大生を演じていた子といえば覚えている人も多いことだろう。

映画『十二人の死にたい子どもたち』(2019年)で、バンドマンを崇拝するゴスロリ少女・ミツエを演じていたのも、彼女である。

『部活、好きじゃなきゃダメですか?』(2018年)で演じたのは、野球部マネージャーで、突然スイッチが入ると持論をぶちかます役。また、『いとしのニーナ』ではバッサバッサと正論でぶった切るクラスメートの女子・山田を演じていた。

また、強い印象として残っているのが、木村文乃主演の『サギデカ』(2019年)。深い闇を抱えるキャッシュカード詐欺師の亜佐美を演じている。キャスティングのきっかけは、彼女がオーディションで勝ち抜いた初舞台を、たまたま『サギデカ』の演劇好き女性スタッフが観に行ったことであったと、NHKスタッフブログ(2019年9月14日)で明かされている。

ちなみに、「ドラマも映画も演劇もあまり観ないなあ」と言う人も、確実に目にしているであろうものがある。「お姉ちゃん、待ってぇや」のセリフで始まるJTのCM「想うた」だ。

真面目そうな姉・石井杏奈と対照的で奔放な印象を与える美容師姉妹の妹を演じているのも古川琴音である。

恥ずかしながら、過去に何度も「古川琴音」を検索したことがある。どの作品でも彼女が登場するたび、妙に気になり、心にひっかかり、その都度検索しては「あ! あのときの!」を繰り返す健忘ぶりは我ながら情けない。

しかし、そうした視聴者たちの「気になる」エネルギーが、じりじりと溜まりに溜まって一気に溢れ出したのが、『エール』『恋あた』同日デビューだったのだろう。

(イラスト/まつもとりえこ)
(イラスト/まつもとりえこ)

ちなみに、「古川琴音」とともに多数つぶやかれていたのは、「岸井ゆきのに似ている」という指摘だ。

NHK連続テレビ小説『まんぷく』(2018年)で、主人公の萬平(長谷川博己)と福子(安藤サクラ)夫妻の姪っ子「タカちゃん」として人気が急上昇した岸井ゆきの。

どちらも、両目の間隔がやや広めで、白くツルツル肌の典型的「童顔」女子だ。幼い少女のように見えるときもあれば、妖しい雰囲気も出せる。無邪気な笑顔を見せたかと思うと、ゾッとするような冷たい顔も現れる。

様々な表情や性質・幅広い年齢などの要素を自由にのせられる真っ白なキャンバスのような汎用性の高さを持つのも、二人に共通している。

『まんぷく』では中学生役も自然だった岸井は現在、28歳。古川琴音も、幼い初々しさがあるものの、現在、23歳。いずれもユマニテの所属である。

ユマニテといえば、安藤サクラを筆頭に、岡山天音、井之脇海、山田真歩など、表現の幅が広い演技巧者が集う事務所。これまで散々、様々な作品・役柄で観ていたにもかかわらず、途中までは演じていた役者が一致せず、ある瞬間にそれらが一気に結びついて、突然お茶の間的ブレイクを果たすというのが、ユマニテの役者の一つのパターンになっている。

そして、視聴者にとっては気になっていた「点」と「点」が線になり、そこから一気に立体化する快感を得られる瞬間でもある。

ところで、古川琴音の場合、実は中高時代は演劇部で、大学では英語劇サークルに入っていたという「根っからの演劇っ子」だ。

ユマニテにオーディションで合格した後、すぐに2018年に沖縄市の観光PR動画「チムドンドンコザ」の主役に選ばれてデビュー。同年、短編映画『春』に認知症の祖父と暮らす美大生役で主演し、「TAMA NEW WAVEコンペティション」ベスト女優賞などを受賞している。

土台に確かな演技力を蓄え、様々な作品で強い印象を残してきたジャブの数々が、じわじわと効き、ついに強烈なストレートとなったのが10月20日だったのだろう。

「ネクストブレイク」と何年にもわたって言われ続けていた岸井ゆきのが、『まんぷく』でついに世間に「見つかった」ように、古川琴音もいま、同じ道を歩んでいる気がする。ユマニテの最終兵器として、楽しみに見守りたい。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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