大物感も出てきた…川口春奈の評価が180度変わった背景 | FRIDAYデジタル

大物感も出てきた…川口春奈の評価が180度変わった背景

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小さなことに動じない“大物”感

長谷川博己主演のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』で、多くの視聴者から再登場をのぞまれていた川口春奈演じる帰蝶が、11月1日放送分「朝倉義景を討て」で、ついに戻ってきた。

そもそも、うつけ者の信長が道三の心をつかむことができたのは、実は帰蝶のプロデュースだったという新解釈が描かれて以降、その強さに惹かれる視聴者は増加する一方で、「帰蝶P」「ラスボス」と呼ばれたり、ドSぶりを時折見せることから“ブラック帰蝶”と呼ばれたりしてきた。

そんな彼女が、かつて「天から降ってきた、大事な預かりものじゃ」と涙を湛えて語った子・奇妙丸を9年間育て、“母”となったことにより、さらに強さ・凛々しさを増している。特に視聴者がしびれたのは、明智光秀に「帰蝶さまは朝倉との戦をどう思われますか」と問われ、静かに、しかし強い目で「私は申し上げました。朝倉をお討ちなされと」と語ったシーン。

多くの作品で短気で残虐なカリスマとして描かれる織田信長が、本作では非常に若々しく純粋無垢に描かれている点は実に新鮮であり、さらにそれを帰蝶が裏で操っているように見えるエグさには、ゾクゾクする面白さがある。

沢尻エリカの“代役”として抜擢され、当初は応援の一方、不安視する声も少なくなかった川口春奈だが、今となっては「沢尻エリカが演じていたら、もっと怖く見えてしまっていたのでは?」「最初から川口春奈で良かったんじゃないか」という声も出ているほどである。

それにしても、ちょっと前までは「低視聴率女王」とも言われ、批判されることも多かった彼女がなぜ一気に評価を高めたのだろうか。

川口春奈は『桜蘭高校ホスト部』(2011年)『放課後はミステリーとともに』(2012年)『天魔さんがゆく』(2013年)と、連続ドラマにコンスタントに出演してきたものの、深夜帯とはいえ、いずれも視聴率は1~2%台と苦戦していた。さらに、2013年のゴールデン初主演ドラマ『夫のカノジョ』(TBS系)が8話で打ち切られ、平均視聴率3.8%を記録したことが大きなきっかけとなり、ネット上では「低視聴率女王」という不名誉な呼ばれ方をするにいたった。

特に『夫のカノジョ』は『ドクターX~外科医・大門未知子~』が裏番組だったこともあり、比較として面白おかしく取り上げられがちだったという、巡り合わせの不運もあった。そんな中、本人が視聴率を「めちゃめちゃ気にしていた」こと、事務所からは「ネットでのエゴサーチ禁止令」が出ていたことなどを、バラエティ番組出演時に語っていたこともある。

では、その後、川口春奈自身は大きく変わったのだろうか。『アナザースカイ』(2014年)出演時には、「これからもっといろんな場面に遭遇すると思うけど、負けたくないし、弱っている姿も見せたくない」と語っていたが、実は彼女自身は変わっておらず、世間の評価のほうが勝手に変わってきた印象もある。

(イラスト:まともとりえこ)
(イラスト:まともとりえこ)

世間の評価が変わってきたきっかけの一つに、川口春奈の「素」の飾らなさ、気丈さが挙げられるだろう。

公式YouTubeチャンネル「はーちゃんねる」は、開始約4カ月で登録者100万人を突破。実家でまったり過ごす様子や、スライム作り、巨大なブリをさばく様子、メイクの仕方、さらに最近では「モーニングルーティン」を公開するなど、飾らない素顔を続々と公開。「可愛さ」だけじゃなく、豪快さ、お茶目さなど、その人柄に好感を抱く人が増えている。

また、インスタグラムの投稿も人気だ。最近では、疲れで目の下にクマがあるすっぴん画像をインスタグラムにアップし、心配の声とともに、絶賛の声が続出していた。13歳くらいの頃の姿を公開し、「超絶美人」「すでに出来上がってる」などと、ファンを驚愕させたこともあった。

しかし、飾らない、そのままの性格もまた、かつてはバッシングの対象になっていた時期がある。

『行列のできる法律相談所』(2014年8月3日放送)で、フットボールアワー・後藤について「声がダメ」「うるさい」と語ったときには、「生意気」「感じ悪い」などの批判が多数出ていた。

また、『今夜くらべてみました』(2017年2月14日放送分)で「嫌いな女子」がテーマとなった際、「カフェのテイクアウト容器に店員が添えた手書きのメッセージやマークの写真を『今日も1日ハッピーでいられそう』といったコメントを添えながら投稿する女子が嫌い」「そんなん誰が知りたいんやろ? 載せんでいいやん」と、地元・長崎の訛り全開で語ったときには、「性格悪い」という批判も殺到。

人気上昇のきっかけの一つとなったインスタグラムでさえも、自撮り写真をアップし、「ニキビがいてぇ! 肌荒れつらい、、、」とコメントしたときには、「口悪いね」「女優から『ニキビがいてぇ』なんて聞きたくないです」など、ネガティブなコメントを浴びたこともあった。それも、そう古い話ではなく、今年3月末のことである。

盛大に持ち上げていた人が、ふとしたきっかけから、手のひら返しでバッシングし始めたり、その逆にこき下ろしていた人が絶賛したりという「豹変ぶり」は、まさに現代の空気ならでは現象だ。

しかし、これまでも様々な批判にさらされてきた、ある意味百戦錬磨の川口春奈は、何しろ気丈だ。大河出演決定時にはインスタグラムで、こんなコメントも投稿している。

<職業柄、日々いろんな声が聞こえてきますが、全く私には刺さりません。私にしかできないこと、私にしかないストロングポイント。大切な人の言葉に耳を傾け、自分を信じてやるのみです>

自身を飾らず、ありのままにさらけ出せること。そして、批判を浴びても、おもねることなく、曲げることなく、自身を貫くこと。こうした芯の強さは、帰蝶という人物像とピタリと重なる。

また、現在放送中の『極主夫道』でも、家事全般が苦手で、ハンバーグを作る予定がキッチンをグチャグチャにして倒れ込んでいたり、洗濯物も投げ捨てるように畳んだり、言葉遣いが悪かったり、ラリアットしたりする一方で、優しく愛らしい妻であり母・美久を、おおらかに魅力的に演じている。

かつてはバラエティやドラマの番宣などで見せる素顔が、あまりにストレートで、大雑把で、飾り気ないために、「美人でなかなか大胆そうで、良い子なのに、なかなかヒット作が出ないのは、素直さ・おおらかさゆえに、ちょっと“大味”な感じがして、芝居に繊細さや揺らぎがあまり感じられないからだろうか」などと個人的に思っていた。

しかし、そこから繊細なタイプの女優に変貌したかというと、おそらく違う。むしろ根っからの大胆さ、大雑把さ、気丈さが、まるで波平らかな海のように、小さなことで動じない“大物”感、落ち着き、威厳を醸し出す効果につながっている気がするのだ。

様々な批判を乗り越え、自身の「素」の魅力を閉じ込めることなく、女優としての大きな魅力につなげていった川口春奈。その戦い方の強さは、見事と言うよりほかない。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

  • 撮影足立百合

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