「日本批判本」出版のゴーン被告が企む起死回生の奇策

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今年9月。レバノンのホーリースピリット大学で講演するゴーン氏。秘策を披露した(画像:ゴーン氏の知人提供)

「ゴーン氏は今月発売された新著の中で日本政府批判を展開し、自らを正当化しています。自分は悪くないと世界に訴えることで、マイナスイメージを払拭したかったのでしょう」(全国紙記者)

会社法違反(特別背任)で起訴され、レバノンで逃亡生活を送る元日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告(66)が、逃亡後初の著作となる『ル・タン・ドゥ・ラ・ベリテ(真実の時)』を11月4日にフランスの出版社から発刊した。日産会長時代から親交のある元AFP通信東京支局長のフィリップ・リエス氏と共著。同書は480ページに及び、日本政府や日産だけでなくフランス政府、ルノー、自らの当初の弁護団まで批判している。

ゴーン氏は、役員報酬の一部を有価証券報告書に記載しなかったことで金融商品取引法違反に問われた。だが著書では「それに関して証拠がない」と否定。西川廣人・元日産社長、ハリ・ナダ専務、豊田正和・社外取締役、川口均・前副社長、今津英敏・元監査役らの名前を挙げて、今年1月にベイルートで会見したときと同じく「日産側が企てた陰謀だ」と主張している。ゴーン氏の知人が明かす。

「1月の会見でゴーン氏は、『策略に関わっていた』とする日本政府関係者の名前は明らかにしませんでした。しかし新著では、川口前副社長と菅義偉首相が近い関係にあったことが重要な役割を果たしたこと。また安倍晋三・前政権に近いとされる熊田彰英弁護士が、日産、政府、検察と接触していたことなども指摘しています」

募る危機感

レバノンのホーリースピリット大学で講演するゴーン氏(右)。左は同大学の学長

ゴーン氏は出版の直前、高級紙フィガロを始めとするフランスの新聞、雑誌、テレビに次々と出演して自らの無実を訴えかけた。身柄の引き渡しを求める日本政府に対してメディアを使っての徹底抗戦に映るが、前出の知人は「本人は危機感を募らせている」と話す。

「レバノン政府は自国民であるゴーン氏を日本に引き渡さない立場を取っていますが、経済危機とベイルートで起きた大規模爆発の責任を取って8月にディアブ内閣が総辞職しました。政情不安な状態ではこの先、何が起きるかわからない。かといって出国すれば第三国で逮捕されるリスクがあるため、ゴーン氏はこの先もずっとレバノンから出られません。危機感は相当強いようです」

そこで、こんな奇策を講じているという。

「9月にレバノンのキリスト教マロン派の私立大学で記者会見を開き、ゴーン氏は『我が国が直面するあらゆる問題に対処する方法がある』とぶち上げて大学への支援を約束しました。レバノンの支配層はマロン派が占めていて、ゴーン氏も同じマロン信徒。国内の実力者たちに向けて自らをアピールしたわけです。

現在、目論んでいるのが、組閣中のレバノンで大臣になること。政府の要職につけば簡単には逮捕されないうえ、外国への出国も自由です。何の大臣でもいいから空きポストはないかと政府関係者に持ち掛けています。ただ、ゴーン氏を大臣に起用すれば、日本やフランス政府との関係にヒビが入りかねない。実現の可能性は薄いでしょう」

状況が好転しないゴーン氏。日本を激しく批判した著書の出版は、焦りの裏返しなのかもしれない。

  • 取材・文桐島 瞬

    ジャーナリスト。’65年、栃木県生まれ。原発問題からプロ野球まで幅広く取材。『FRIDAY』や『週刊プレイボーイ』、『週刊朝日』など雑誌を中心に活躍している。

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