深田恭子『ルパンの娘』で見逃せない、瀬戸康史の「最弱の美しさ」

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濡れ、縛られ、怪我…、最後は深キョンに助けられる。その存在は、もはや「姫」!

続編になって、ますます物語も演出もゴージャス・トンチキ感が増している深田恭子主演の『ルパンの娘』(フジテレビ)。 

前シリーズでは、代々「泥棒一家」の“Lの一族”の娘・三雲華(深田恭子)と、代々「警察一家」の刑事・和馬(瀬戸康史)の許されない禁断の恋を描いてきた。しかし、続編となる本作ではそんな二人が結婚。さらに、馬小屋での天地創造を思わせる壮大かつシュールな出産シーンを経て、母となった深キョンのますますの可愛さは、当然ながらこの作品を支える大きな柱となっている。 

しかし、その一方で、見逃せないのは、毎回捜査の過程などでとらえられてしまう、瀬戸康史演じる「和くん」だ。 

今シーズンではそのお約束の展開について、華の家族たちが口々に「出たわ、また和くんのつかまりグセが」などと困惑したり苦笑したり、揶揄したり、楽しんだりしている。そして、毎度、頼もしい深キョンに助けてもらうことになる。もはや和くんこそが、華たちが行動を起こす大きな動機となっていて、その存在は「姫」なのだ。 

『ルパンの娘』を語る際、深キョンの魅力に集中しがちだが、実は続編の裏テーマは、むしろ「弱く美しい姫」和くんじゃないかと個人的には思っている。そして、瀬戸康史に「弱く美しい姫」を演じさせたスタッフの慧眼には、つくづく感心してしまうのだ。

瀬戸康史といえば、これまで思いを寄せた相手に最終的にフラれることの多い、いわゆる“当て馬”を演じることが多かった。

『私、結婚できないんじゃなくて、しないんです』(2016年)では中谷美紀に、『先に生まれただけの僕』(2017年)では蒼井優に片思いしていたし、『パーフェクワールド』(2019年)では、後に私生活で伴侶となる山本美月に、やっぱりフラれる役を演じていた。

一方、NHK連続テレビ小説『まんぷく』(2018年)で演じた神部茂の場合、福子(安藤サクラ)と萬平(長谷川博己)の姪・タカちゃん(岸井ゆきの)を好きになり、思いが成就して無事結婚。しかし、“萬平愛”があまりに強すぎることで、妻の不満が出るという、ある意味報われない片思いをし続ける設定だった。

そうした流れを見事に継いでいたのが、『私の家政夫ナギサさん』(2020年)で相原メイ(多部未華子)が務める製薬会社のライバル社のMR・田所優太だった。仕事がデキて、性格も穏やかで、容姿端麗。だからこそ最初から漂ってしまう“当て馬”臭。 

確かにそれは瀬戸康史の大きな魅力の一つではある。需要がたっぷりあるのもわかる。

しかし、それらの豊富な需要すらも凌駕するのが、実は『ルパンの娘』の和くんのような「弱く美しき姫」ぶりのような気がする。

(イラスト:まつもとえりこ)

11月12日放送分の第5話では、渉(栗原類)の作った秘密道具により、華と祖母・マツ(どんぐり)が入れ替わるという珍展開が繰り広げられた。深キョンとどんぐりの入れ替わり芝居の細かさ・巧みさにも唸らされたが、大きな見どころだったのは、和くんの寝起きドアップ+水もしたたるイイ男具合。

今回は華と入れ替わっているマツと和くんがつかまってしまうが、2人が毒ガスで殺されそうになったとき、華を守ろうとする和くんに「本当のことを言わなあかん」と思いつつ、マツはつい欲望に負けてしまう。

「接吻する気や! あかんよ? うちはマツやで? いてまうか? いや、あかんて! いてまう? あかんあかんあかん! 何を考えてるんや! 孫のダンナやで~~。瞳キレイすぎるやろ!」

これには視聴者は大いに爆笑・共感してしまったことだろう。まるで視聴者の声を代弁しているようだった。

それにしても、『ルパンの娘』の和くんはなぜこれほどまでに魅力的なのか。 

和くんは、正義感が非常に強く、熱く、真面目で、真っすぐだ。だからこそ、見事なまでにスキがある。

そのために毎回、とらわれてしまい、縛られたり、怪我を負ったり、白目をむいて意識を失ったり、びしょ濡れになったりする。

本来はコテコテにコミカルな描写のはずなのに、白目をむいて倒れる瀬戸康史の華麗さときたら。縛られたり、傷を負ったりする、優雅さときたら。実はこうした瀬戸康史の弱さ、脆さ、エロ美しさに、不届きながら萌えてしまう視聴者は多数いるようだ。 

しかし、なぜ負傷して、倒れて、白目をむいて、びしょ濡れになる瀬戸康史が最高に輝くのか。そこには、スーツ姿が非常に美しく、髪型などもビシッときまっているトラッドさ・上品さ・清潔感・落ち着きがベースにあるだろう。そもそも『海月姫』も、『グレーテルのかまど』の「15代ヘンゼル」も、何の違和感もなく麗しく演じられる逸材である。

そんなベースが上品で整然としている人が不意に見せる「乱れ」の魅力・破壊力には、凄まじいものがある。

若い世代にはわかりにくい例で恐縮だが、『ルパンの娘』の和くんを見るたび、どうしても思い出してしまうのは、紫綬褒章を受賞した天才漫画家・高橋留美子の『うる星やつら』に登場する面堂終太郎である。 

容姿端麗で秀才で運動神経もよく、大金持ちで、女性にモテるが、「暗所恐怖症・閉所恐怖症」という大きな弱点を持っているキャラ。

普段華麗で美しい彼が、狭く暗い場所に閉じ込められるたび「暗いよー狭いよー怖いよー」と泣くシーンは、子ども心に邪なワクワク感が芽生えてしまったものだった。しかも、普段はオールバックできっちりまとめた髪が、自宅である豪邸の大きな風呂に入るときだけ、洗髪によってラフにおろされている。

おそらく『うる星』世代は、面堂によって「濡れ髪」「乱れ」の破壊力を萌えポイントの一つに刷り込まれているんじゃないかと思うほどだ。

思えば、深キョンの「ラムちゃんコスプレ」は大好評だったわけだし、和くんが面堂だと思うと、『ルパンの娘』は、女たらしの主人公・諸星あたるが存在しない『うる星やつら』のパラレルワールドのようにも見えてくる。 

毎回毎回、酷い目に遭う瀬戸康史の姿は、自分を含む多くの視聴者たちにとって一つのご馳走となっている。不謹慎で不届きで、本当にごめんなさい。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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