名女優・波瑠にはなぜ「イタ可愛い女」の役が似合うのか | FRIDAYデジタル

名女優・波瑠にはなぜ「イタ可愛い女」の役が似合うのか

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コロナ禍による息苦しい状況や、「新しい生活様式」を真正面から取り入れているドラマ『#リモラブ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)。

その中で、真面目でプライドが高い主人公の産業医・大桜美々を演じている波瑠が、なかなかにイタく、愛おしい。

最初は、男たちを値踏みし、心の中で料理の名前で呼び、自分のことは「フランス料理」とたとえる上から目線の美々が、古典的な面倒くささを持つ人に思えた。

「面倒な恋愛より一人が良い」というスタンスで、長いこと恋愛をサボってきた美々。しかし、産業医として「コロナパニック」による新しい日常への対応に追われ、社員たちの健康を厳しく管理するなかで、不意にわいてきたのが「恋をしたい」という謎の感情だった。

そして、コロナ禍だからこそ、オンラインゲームを通じて知り合ったハンドルネーム「草もち」の美々と「檸檬」との恋心が芽生え、育っていく。

そもそも「ハンドルネームでのやりとり」がまず、なかなかイタイ。

「5分だけ、お話ししてもいいですよ」と上から言い放ったかと思えば、交流を深めた後、緊急事態宣言明けには一方的に「もういいです、けっこうです」「ありがとう、さようなら」と宣言。かと思えば、すぐに後悔したり、相手からの連絡を心待ちにしてソワソワしたり、相手の「正体」がわかってからもなかなか名乗り出ることができなかったり、互いを認識し、さらには「交際」に発展してからもなお、「イチャコラが得意ではない」と言いつつ「濃厚接触」について考えたり戸惑ったり。

分厚い壁を作っていたかと思えば、唐突に相手の膝の上にのりそうなくらいの心の距離の詰め方をして、直後には再び何キロも先に心が離れている。こうした独り善がりかつへたくそな距離のとり方、不器用さは、いまどき中高生の恋愛においてすらなかなか見られない。

見ていてイタくなるし、気恥ずかしくなるし、だからこそ愛おしく、応援したくもなる。 

プライベートでは、休日はほとんど家から出ないと公言し、「忙しくなければ、ゲームが〝日課〟」と話すインドア派(写真:アフロ)
プライベートでは、休日はほとんど家から出ないと公言し、「忙しくなければ、ゲームが〝日課〟」と話すインドア派(写真:アフロ)

面倒くさくて、ちょっとイタイ…

思えば『G線上のあなたと私』(TBS系/2019年)で波瑠が演じたアラサーOLの也映子もなかなかイタかった。

寿退社の当日に「好きな人ができた」という理由で婚約者に一方的に婚約破棄され、傷心を癒すために始めたバイオリン教室にハマり、直球の毒舌や、面倒くさいやりとり、衝突を繰り返しつつも、中川大志演じるバイオリン仲間のドS年下男子・理人との恋に発展していく。

しかし、付き合ってからも、すぐに「好き」の先を求めてしまう自分に不安を抱く也映子は、恐れから距離をとろうとするが、バイオリン仲間で大事な友人となる松下由樹演じる主婦の幸恵にこんなアドバイスをされる。

「ゆるくて優しい世界にとどまってちゃダメよ。本当に大切な人とは、ゆるくて優しい世界のその先にいかなきゃ。じゃなきゃ、深くはつながれないんじゃないかな」

しかし、「好き」だからこそ、相手がいつか自分のもとから消えてしまうのが怖くて、未来でのつながりを求めるために「人間愛」に置き換えようとする也映子。そんな面倒くさい也映子を変えてくれたのは、理人の「俺、あなたのためならなんとかするから。絶対」という宣言と、強引なハグだった。

また、『あなたのことはそれほど』(TBS系/2017年)で「2番目に好きな人」と結婚したものの、小学生の頃から好きだった同級生と再会、不倫にのめりこむ美都も、つくづく面倒くさい女だった。

さらにいえば、上記のような恋愛モノではなく、ホームコメディの『もみ消して冬~わが家の問題なかったことに~』(日本テレビ系/2018年)で演じた、主演・山田涼介の姉で、才色兼備の敏腕弁護士で「超毒舌」「ドS」「自己チュー」の知晶もまた、恋愛に関しては不器用な面があり、ちょっと面倒くさい女ではある。

なぜ波瑠はとびきり華やかで美しく、愛らしいのに、ことごとく面倒くさく、ちょっとイタイ役がしっくりくるのか。

一つには、波瑠の根っからの青臭いほどの真っすぐさ、無防備なまでの正直さがあるだろう。

『あなたのことはそれほど』(2017年)では、不倫にハマる役を演じたことから、バッシングも続出。それに対し、波瑠は正面から自身のブログで「応戦」してみせた。

「私は美都には共感できないけど、毎日やらなきゃ仕方ない」「こういう内容の作品ですからね。しょうもないとか馬鹿とか最低とか言われても、観て感想を抱いてもらうっていうことで私は報われるような気持ちです」 

また、『A-Studio』出演時に、「お母さんに『(女優を)やめたい』というメールを送った」と告白したり、『another sky』(1月26日放送)出演時には、モデル時代の思い出に触れ、「話が合う人がいないなって」と語ってもいた。

おそらくこの正直さは、相手の年齢や立場などを問わず、全方位的に平等に発動するものなのだろう。

『もみ消して冬~』で姉弟を演じたことで仲良くなった山田涼介が、兄役の小澤征悦も誘って、コロナ禍に波瑠にリモート飲みを持ちかけたところ、「絶対いや! 今、漫画読んでるの。今後二度とリモート飲み会の誘いはしてこないで!」とバッサリ断られたことを自身のラジオ番組『Hey! Say! 7 UltraJUMP』(2020年5月放送分)の中で語っていた。

しかも、「さすがですね、姉さんは。やっぱりブレないな。そういうところが良いんですよ、媚びないというか、誰にでもきっとこうなんだろうな。そういうところが男友達っぽくて良いですね」となぜか断られたことをうれしそうに語っていたのだった。

こうした波瑠の「素顔」として語られるエピソードや、トーク番組での発言などは、波瑠がドラマで求められる「自分自身に常に正直である」役柄と重なり合う。 

自分の気持ち、そして自分自身の生き方に正直すぎるがために、不器用で、ときに無防備で、見ている側はハラハラするし、恥ずかしくなるし、イタくもなる。 

でも、そもそも誰かの恋なんて、傍から見たらいつでもイタイものだ。だからこそ、不器用で真っすぐなイタ可愛さが、波瑠にはよく似合うのだ。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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