究極の器用貧乏!? パンサー向井の「他者を輝かせる」強さ

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『ロンドンハーツ』(テレビ朝日系/ 11月24日放送分)のサシ飲み企画において、同じく「ツッコミ」「独身」のバイキング・小峠英二相手に、パンサー・向井慧が「この仕事、向いてないんじゃないかと思う」と悩みを吐露したことが話題になっていた。 

悩みの理由は、「人気者」としてテレビに出たことで、「同業者からは嫌われていると思っていた。それがコンプレックスだった」ことや、スタッフからの指示でムチャぶりするなどの意地悪なことができなくなっていることなど。

さらに、「ボケをやりたかったけど、同期のシソンヌやチョコレートプラネットを見たら、ボケでは無理だ。お笑い好きだから、なんとかこの世界にいる術はないかなと、ツッコミだったら努力とか勉強でなんとかなるかもしれないと」という闇深い弱音も漏らしていた。

これに対する小峠のアドバイスがあまりに優しく、ネット上では絶賛の声が続出していたのだが、間が悪いことに(?)同日、その直後に、『マッドマックスTV』(テレビ朝日/ABEMA)の中で、ひろゆきが向井に対して「笑いをとってない」「面白くない」と発言。台無しな流れである。

思えば、『アメトーーク!』(11月12日放送分)でも、向井は、ハライチ、チョコレートプラネット、シソンヌ、すゑひろがりず、アインシュタイン稲田と共に「意外と同期芸人」に出演し、“出待ち率ナンバー1”とされ、人気があると言われるために、どこに行ってもウケなかった苦悩を語っていた。

そこで「向井しか友達がいない」と語るチョコプラ・長田と、「芸人が乗って帰るバスで俺の隣だけ芸人が誰も座ってなかった(中略)。その時に向井君が隣に座ってきてくれて話しかけてくれて、なんて優しい人なんだって」と語るハライチ・岩井との向井をめぐる三角関係が語られた。

しかし、向井と澤部が先輩などからライバル的に注目されていたという話の流れの中、岩井が放った一言に、一瞬、向井が顔を曇らせる。それはこんなセリフである。

「澤部と向井君がなんかね、争ってるみたいな感じあったけど、澤部は単体でもめちゃくちゃ笑い取れるヤツだからね、本当に」

向井と岩井は非常に仲良しであることが知られており、唐突に岩井の“相方愛”が爆発してしまってのコメントだが、実はこれは向井が一番悩んでいることでもあるだろう。

そこで改めて思う。芸人は「単体で笑いをとる」ことができなければいけないのか。

(写真:アフロ)

『あちこちオードリー~春日の店あいてますよ?~』(テレビ東京系/8月25日放送分)に出演した際にも、自身の現状についてこんな嘆きを呟いていた向井。

「こういう裏側話す系(の番組)でシャシャッてる向井も嫌いなんですよ。目立つこんなとこで芸人になりたいと思って入ってきてないじゃないですか、本来。一生満たされない気持ちで芸人やってるんすよ、いま」

「本当はもっと、それこそ尾形さんみたいにばーんっていって、『スベッてんなー』でも笑ってもらえるし、ウケても『尾形面白いよねー』とか、菅さんみたいにボソッとセンスある一言を言って笑ってもらえるとか、そんなのになりたいですよ。お笑い好きなんだけど。(お笑いは自分のことを)愛してくれてないな。片想いだって思うときありますよ」

そして、スタジオに向けて「粗品、面白くしてね」と自虐的なVTRのふりをし、「結局俺が『粗品、面白くしてね』って言うことは、粗品を道具にしてる先輩になってしまったっていう。俺が一番嫌だった先輩にもなってるって言う悲しさで、いろんな涙が出ちゃった」

また、そのとき、毎日仕事終わりに喫茶店に寄って反省ノートを書いている話を吐露。「その日、仕事でできなかったこと」ともに「めちゃくちゃムカついたこと」を書くという、闇の部分を見せてもいた。

これだけたくさんの番組に出演していても、満たされない向井。その理由は何なのか。

そこには向井の並々ならぬ「お笑い愛」がある。

『アメトーーク!』~「バラエティ観るの大好き芸人」に出演した際には、大好きな番組として『相席食堂』『あちこちオードリー』『アメトーーク!』『有田ジェネレーション』『有吉ぃぃeeeee!』『有吉の壁』『オドぜひ』『くりぃむナンチャラ』『さまぁ~ず×さまぁ~ず』『霜降りバラエティ』『水曜日のダウンタウン』『スクール革命!』『全力!脱力タイムズ』『テレビ千鳥』『チャンスの時間』『にけつッ!!』『爆笑問題のシンパイ賞!!』『ロンドンハーツ』をフリップ一杯に書き連ねるお笑い愛の強さを見せていた。

また、テレビだけでなく、素人時代からラジオのヘビーリスナーで、共演する芸人たちについて、同じ吉本芸人だけでなく、他事務所の芸人の出演番組やパーソナリティーも把握し、共演時にはさりげなく他の芸人に話をふるような場面が多々見られる。

向井は陣内智則や麒麟・川島明のような“サブMC”仕事を務めることも多いが、そこには彼の日々の勉強熱心さや細やかな気遣いが大いに生かされているはずだ。

それを裏付けるのが、12月8日放送の「ロンドンハーツ」~「もしも俺が女子だったら…この人と付き合いたい」企画の前半戦で、EXIT・兼近大樹に僅差で勝ち、暫定1位の支持を得ていたこと。

向井が選ばれた理由には、「顔の可愛さ・中性的」(かまいたち・山内健司)や、「ずっとニコニコ喋ってくれる。ずっと笑ってくれる」「ちょっと見せる無邪気さ」(さらば青春の光・森田哲也)、「出会ってからずっと好き! 自分でもわかんないくらい好き。大好き!」(ハナコ・岡部大)、「男気がある。自分が仕事がないときに、劇場に毎日行って手売りをしていた。パンサーが人気だったので、その列に売っていたが、『りんちゃん大丈夫? 絶対報われるよ』といつも声をかけてくれた」(EXIT・りんたろー。)といった「見た目」や「優しさ」などを挙げるものから、ネットニュースで6.5世代のMCに選ばれていた」(三四郎・小宮浩信)といった”将来性“に関するものまで様々な意見があった。

四千頭身・後藤に至っては「昔からパンサーの番組のDVDの握手会にも行っていた。番組表をパンサーで登録して全部観ていた。なかでも向井が好き!」「みんな『向井』『向井』と向井ブームがきているが、『今頃何言ってんの?』」などと、向井推しの他の芸人にマウンティングする勢いである。

番組では嬉しそうな反応を見せていた向井だが、ガチの「お笑い好き」の向井にとって「芸」ではなく「顔」「人柄」を評価されることが多いのは、本音では微妙なのかもしれない。

しかし、カリスマ性のある大物芸人が仕切る番組においても、向井がいて、絶妙なトスをあげてくれることで、実力以上のスパイクが打てる芸人はたくさんいるはずだ。

向井自身がガンガン得点をあげるエースアタッカーではないが、周りの人達一人一人が最も打ちやすい場所にトスをあげることで、最大限の輝きを引き出してくれる、名セッターのような役割を果たしていると思う。 

将来的にはサブMCでなく、メインMCとして、同僚や後輩に慕われる優しい向井のもとで、芸人たちが安心してのびのびと自身の力を出せる優しいバラエティ番組が作られる日だってあるだろう。 

しかし、自身のそんな求められる姿に抗い、満たされず、得意分野の中ばかりで勝負し続けることを捨てて、『有吉の壁』において、正直、あまり向いていると思えない体を張る笑いに果敢に挑んでいく向井の姿は、ちょっと胸に迫るものがある。 

求められる場や役割は多く、それぞれに期待される以上の安定した仕事ぶりを見せているはずなのに、それでもいっぱいケガをして、日々反省し、悩みながら、自身で笑いを取りに行くことも諦めない向井慧。そんな器用貧乏で努力家の「お笑いマニア」のことなんて、応援するしかないじゃないか。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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