新作動画でわかったHey! Say! JUMPの「スゴい実力」 | FRIDAYデジタル

新作動画でわかったHey! Say! JUMPの「スゴい実力」

  • Facebook シェアボタン
  • X(旧Twitter) シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
YouTube上に突如現れた謎の8人組ボーイズグループ「Honey Bee」。その正体は実は…(写真・AFLO)
YouTube上に突如現れた謎の8人組ボーイズグループ「Honey Bee」。その正体は実は…(写真・AFLO)

「トガりまくった最前線のアーティスト×振り切れたHey!Say!JUMP」、迷いなき“ヲタ専グループ”

YouTube上に突如現れた謎の8人組ボーイズグループ「Honey Bee」によるパフォーマンス「狼青年」がSNSで話題沸騰となったのは、10月12日。作詞作曲・プロデュースを女王蜂のアヴちゃんが手掛け、東京ゲゲゲイ・MARIEが振り付けを担当するという豪華なコラボに対する注目度に加え、真っ赤なフード姿で顔を隠してパフォーマンスする彼らのダンスのキレキレぶり、ビリビリと痺れるような歌声に心奪われた人は多く、YouTubeではたちまち動画再生数800万回を記録している。

赤いフードで顔を隠した姿は、まるで「赤ずきんちゃん」に扮した狼がおばあさんを丸呑みするような童話の甘美で毒々しい世界観を連想させるが、その正体は実は、Hey! Say! JUMP。山田涼介、知念侑李、中島裕翔、伊野尾慧をはじめとした”ビジュアル担当“ともいえるメンバーを多数抱えるグループだけに、この正体が分かった際、ネット上の一部では「せっかくの顔を隠すなんてもったいない」という声もあがっていた。

しかし、この戦略は大正解だと思う。語弊を恐れずに言うなら、歌唱力もダンスも旧来のジャニーズのイメージからは到底想像しえないかっこよさだからだ。

そして、正体を明かさずに動画をアップして話題をさらうというスタイルには、まるで誰かの裏垢が流出してしまったような危険な香りと、それをのぞく背徳感・ワクワク感がある。

何より他のどのグループでもない、Hey! Say! JUMPにこの露出スタイルがピッタリだったのは、若くしてデビューした正統派&エリートグループゆえの、子役出身俳優につきまとうような「いつまでも子どもっぽく可愛いイメージ」や「優等生」感、「健全」感を強制的に捨て去り、純粋にパフォーマンスのみに人々の視線を集中させることができるからである。

実はHey! Say! JUMPが『ミュージックステーション』などの音楽番組に出るたび、「ダンスがキレキレでカッコいい」「ダンスが揃ってる」「フォーメーションダンスがすごい」などと話題になることは、これまで何度も何度もあった。それどころか、振り返ると、実は2011年発売のシングル『Magic Power』に収録されている『BEAT LINE』 あたりからキレキレで揃ったダンスは注目され、2013年の『Ride With Me』あたりからは複雑なフォーメーションダンスもこなすようになっていた。にもかかわらず、いつまで経っても話題は必ず音楽番組出演時のピンポイントで、点と点がなかなか結び付いていかない。 

伊野尾慧が大学卒業後、露出を増やし、キャスター仕事をこなすなどの“通称・伊野尾革命”でファン層が中高年まで拡大した時期はあった。

ファン層拡大にともない、「嵐のようなグループになりたい」と言葉にし、やたらとサンリオみたいな甘フワ衣装を着たり、「可愛い」を前面に押し出したりしていた時期もあった。正直、どうなるんだろう、このグループ? と思ったこともある。

しかし、サンリオ的な甘フワ売りが一段落すると、パフォーマンスのクオリティがどんどん上昇していった。ただし、それを披露する場が、音楽番組が非常に少なくなっている現在では限られている。シングルリリース時に『ミュージックステーション』の放送がない場合などは、もはや一般層に観られる機会はほぼない。会社内の推し具合によって、シングルリリース時以外にも出演するグループはあるが、それは会社の推し具合によるため、結果、「今回のシングル、どこでも披露していないんだけど」ということだってあった。

「子どもっぽく可愛いイメージ」や、「若いファンが多いイメージ」が強いために、お金を注ぎこむ経済力ある中高年女性を巻きこめないという事情もある。また、彼らのグループ名「Hey! Say! JUMP」が、一文字の「嵐」や2文字の「V6」を除いて、「キンキ」「関ジャニ」「キンプリ」「セクゾ」「スノ」「スト」のように統一の略称がある数々のグループと異なり、「JUMP」や「ジャンプ」、ファン以外の間でよく使われる「ヘイジャン」、いまだに多い「平成ジャンプ」など、表記がまちまちになるため、グループ名がSNSのトレンド入りしにくく、注目されにくい点も否めない。

そんな中、2010年代前半には「揃える」ことを主眼に置いてダンスを磨き、近年は歌を磨き、歌番組ではほとんどのメンバーが生歌を披露するようにもなっている。 

しかし、KinKiKidsなど一部を除くジャニーズのグループに世間的に「口パク」イメージが強いこと、さらにHey! Say! JUMPのダンスが激しいこと、生歌が非常に安定していることもあって「口パク」とSNSなどで言われることが多いのは、本人たちはきっと無念だろう。パッケージ化されている音源と明らかに異なることは、ファンはわかるが、聴き比べできない一般にはわからない。

その点、「生歌」をアピールするために、なんならアドリブを入れたり、歌番組ならではのアレンジをきかせたりしたって良さそうなものだが、何しろ稽古熱心なメンバーが多いだけに、歌が安定すればするほど「口パク」と言われる。

そんな中、どんなに努力し、ダンスも歌もスキルが向上しても一般にはなかなか認められなかった、あるいは一瞬注目されても固定イメージとして浸透しなかったパフォーマンスが、名前を伏せ、顔を隠したことにより、様々な「偏見」から自由になったのは、実に素晴らしい戦略だと思う。

ジャニーズに限らず、AKB48グループも坂道グループも、世間的にはほとんどの人が知らない曲が驚異的売り上げを叩きだす昨今。

Hey! Say! JUMPの売り上げはたいてい22万~25万枚程度で、一般基準にしては大いに売れている部類だし、会社内基準にしても、売れていないわけではない。とはいえ、売れている方とも言えない微妙なポジションにある。

しかし、熾烈な社内競争から一歩引いたことで、アーティスト路線を着実に歩み始めたHey! Say! JUMPの楽曲やパフォーマンスは、実に新鮮だ。

売上最優先で、たっぷりお金を落としてくれる中高年女性が安心して聴けるようなわかりやすい曲・ゆったりしたバラードなどに走るのではなく、なんなら中高年を無慈悲に置いてけぼりにするような、感度の高い若年層に狙いを定めたトガりまくった楽曲は、とにかく痺れる(これは置いてけぼりにされる側の中高年だからこそ、たまらない快感なのだ)。

12月16日にリリースしたニューアルバム『Fab!-Music speaks.-』は、「音楽×童話」をコンセプトにし、ピーターパン×橋口洋平(wacci)、アラビアンナイト×Ayase(YOASOBIコンポーザー)、白雪姫×清水翔太、オオカミ少年×岡崎体育、ヘンゼルとグレーテル×まふまふなど、錚々たるアーティストが参加している。

そのため、先の『狼青年』をはじめ、YouTubeでアップされた数曲を観た非ジャニオタ層からは「カッコいい!」「ジャニーズには全然興味なかったけど、予約した」などの声がSNS上に多数あがった。

正直、このコラボの本当の凄さが理解できるのは、若年層と、一部カルチャー指数が相当高めの中高年くらいだろう。

でも、お茶の間人気や知名度、売上競争という呪いから解放され、ある意味、一般は全くついていけない究極の“ヲタ専”として、誰にでもわかる目線に下りてくることなく、トガりまくって常に上を見続けているHey! Say! JUMPの活動の振り切り方は、潔く、かっこいい。

そもそも子どもの頃に、背伸びして大人の本を読んだり映画を観たり音楽を聴いたりという経験をしたことがある人は多いだろう。完全にはわからないからこそ、知りたい、触れたい、理解したい。カルチャーの醍醐味って、何歳になっても、結局のところ「完全に理解できる範囲のちょっと上や、ちょっと外側」にあると思う。 

そんなトガりまくった最前線のアーティストと、振り切れたHey! Say! JUMPのコラボには、ワクワク感しかない。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey! Say! JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

FRIDAYの最新情報をGET!

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事