最終回に向け盛り上がる『ウルトラマンZ』実はこんなに深い | FRIDAYデジタル

最終回に向け盛り上がる『ウルトラマンZ』実はこんなに深い

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「ご唱和ください、我の名を!」 

初めて聞いたときは、あまりの丁寧さ・マヌケた印象に、思わずズッコケそうになった。これは、6月20日よりテレビ東京系で放送されている『ウルトラマンZ』の変身シーンのセリフである。 

ゼットが「ご唱和ください」と言うと、一体化する主人公・ナツカワハルキ(平野宏周)が「ウルトラマンゼット!」と呼応する。最初は「ご唱和してるの、中の人だけじゃん。お茶の間は絶対スルーしてる」と思った。しかし、今はおそらくお茶の間のみんなもご唱和しているに違いない。なにせ、そんな悪態をついていた自分ですらご唱和しているくらいなのだから。そのくらい『ウルトラマンZ』は今、猛烈に熱いのだ。

『ウルトラマンZ(ゼット)』(テレビ東京系)公式HPより

今回の『ウルトラマンZ』は「明るく楽しく」を重要なテーマとしているのだが、そのせいもあってか、これまでのウルトラマンに比べて、第一印象はちょっとヌケている。

まずズッコけた空気を醸し出しているのは、とにかく真面目で一本気な主人公・ハルキである。

ハルキはロボットを使って怪獣災害の処理をする部隊「ストレイジ」に所属しているが、上下関係を重んじる体育会系の性質ゆえに、人間に対しても、ウルトラマンに対しても、「目上」には等しく敬語を使う。ゼットと初対面のときにはタメ口だったのに、ゼットの年齢が5000歳と聞いた途端、敬語になるのはさすがである。その礼儀正しさが真面目で愛らしい下っ端感になっている。

対するゼットが、また、軽くて呑気で、独特な言語をよく喋る。第一話では出合い頭から「申し訳ないがお前は死んだ。ついでにどうやら、私もウルトラやばいみたい」「手を組まないか? 私もお前の力が必要なのでございます……言葉通じてる?」とズッコケなトークをする。

古代ギリシャの彫刻のように神秘的なアルカイック・スマイルの昔のウルトラマンイメージで見ると、そのギャップに驚かされるに違いない。しかし、そんなハルキとゼットのやりとりは、なんだかほのぼの丁寧で優しい。 

そして、未熟なハルキを見守り、支えるチームの面々も魅力的だ。

ヒロインにあたる先輩・ヨウコは華奢な女子だが、地球防衛大を首席卒業したエリートで、フタが閉まらないほどボリューミーな弁当を食べたり、ハルキの胸を拳で叩いて励ましてくれたりする武闘派である。しかも、男相手にすぐに腕相撲を挑み、ことごとく相手を負かす。それは「自分より強い男としか結婚するな」という父の教えを守っているためで、超強いウルトラマンゼットのことは「ゼットさま」と呼び、憧れる乙女な一面もある。

また、タヌキ顔の可愛い先輩・ユカは、天才科学者ゆえに、研究のことになると興奮しすぎる姿がマッドサイエンティストめいている。

隊長はフレンドリーで温厚だが、実は正体は『ウルトラマンオーブ』に登場したジャグラー。怪獣に変身してゼットを攻撃したり、その一方でハルキたちを助けたりと、敵か味方かわからない具合は、峰不二子のよう。

そして、なぜかマグロをさばけたり、カンフーができたりする謎多い整備隊長・バコさんは、シブいおじさんなのに、娘にはめっぽう弱い。

みんながみんなちょっとずつヘンだが、地球を守るために熱い思いを抱えている。

そんなゼットを含めて頼りない彼らを助けてくれるのが、歴代のウルトラマンの先輩たちだ。

 

序盤はあくまで「明るく楽しく」軽い雰囲気だった『ウルトラマンZ』。ギャグ回も多く、M1号が巨大化し、暴れ出した回には、男たちが裸太鼓を叩き、ロボットたちが踊るという珍妙な展開が描かれた。

このM1号、近年は『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』で浜田雅功にそっくりと指摘されていることから、Twitterトレンドには「浜ちゃん」がトレンド入りする事態もあった。

しかし、こんな「お祭り」回を挟みつつ、実はシリアスかつ重要な展開が着々と水面下で進んでいたことに、当時はまだ気づいていなかった。

『ウルトラマンZ』の凄いところは、一見ギャグ回に見えるような回にこそ重要な伏線があることだ。

例えば、バコさんがマグロをさばいて振る舞ってくれた際、ハルキが食べようとすると、何度も時間が戻ってしまう展開が描かれる。

しかし、それはぐにゃぐにゃの四次元怪獣が現れた影響で起こっていたタイムリープだった。そして、四次元怪獣を討伐したことによって、次元にひずみが生まれてしまい、宇宙から怪獣が続々訪れる。

まさかマグロをいつまで経っても食べられず同じ時間をタイムリープし続けていたマヌケな悲劇の後に、こんな地球規模の大ごとが待っていようとは。

このギャグとシリアスを裏表にピタリと張り付けた構成は見事と言わざるを得ない。

また、暴れる怪獣・レッドキング(父)を倒すと、もう1体レッドキング(母)が出現。実は彼らは卵を守っていただけだったことを知ったハルキは、自身が父を失った悲しみと重ね合わせ、レッドキング(母)と卵を見逃す。

これを機にハルキは、怪獣を倒すことが目的ではなく、地球を守ることが目的なのだと強く意識し、それがハルキにとって大きな成長となる。主人公の成長物語がしっかり描かれる王道の展開である。

しかし、この回ラストで語られた「あのレッドキングはまたいつか人間を襲うかも……」の伏線が、クライマックスになって回収される。

しかも、レッドキング(母)は再登場するや、必死に守ってきた卵を残し、あっけなく人類が作り出した新兵器に吸収されてしまうのだ。なんて惨い展開なんだろう。

この伏線にも唸らされたが、さらにそこから怒涛のように襲いかかる悲劇の連続と、軽くマヌケな描き方とのギャップがすごい。

レッドキングの残した卵を守ろうと、卵を大事に抱えるゼットの姿は、優しく頼もしく素敵なはずなのに、画的には結構マヌケで哀しく見える。しかも、その後、新兵器の攻撃を受けて倒れてしまう。

さらにこのダメージにより、ハルキとゼットはもはや一体化できなくなり、突如、ゼットがハルキに別れを告げることになる。

倒れた人間とそれを見下ろすウルトラを包み込むように赤々と燃える背景が描かれるのは、初代ウルトラマンが倒れて去っていくときのパロディの構図だろう。 

しかし、この悲しい別れのシーンでも、ゼットはハルキにむかって相変わらず呑気でおかしな言葉で「ウルトラ寂しい気持ちでいっぱいでございます」と語り掛けるのだ。

この渾身のシーンで、思いきり笑わせつつ、泣かせ、感情を混乱でグチャグチャにひっかきまわしてくる『ウルトラマンZ』。笑いと悲しみが表裏一体で、笑いがある場面でこそ一番泣かせてくるのが、この作品の絶品のポイントだ。

そして、ウルトラマンの視野は何しろ「宇宙」であるだけに、守っているのは「地球」だということも、世界中が危機に瀕した今年は心に染みる。

特に本作では、ウルトラマンを超える存在を作ろうという、自然の摂理を超えた大それた企みが描かれ、それによって人類は破滅の道を突き進む。

その企みを進めているのは、宇宙からやってきて、人々に次々に乗り移る寄生生物・セレブロだ。

ハルキたち部隊は「地球は一つの大きな生命体で、ウルトロイド(ウルトラマンを超える新兵器)は明らかにオーバーテクノロジーで地球を壊す危険性がある」と訴え、起動させることに反対するが、セレブロに憑りつかれた長官(小倉久寛)に部隊を解散させられ、ウルトロイドが完成してしまう。

そして、パイロットに選ばれたヨウコはセレブロにのっとられてウルトロイドと一体化し、暴走しながら、怪獣たちを次々に吸収していくのだ。まさかのヒロインがラスボスなのである。

セレブロは愉快そうに笑って言う。「人間たちに恐怖を植え付け、防衛のために兵器を作らせて、文明を自滅させる。これは文明自滅ゲームなのだ」と。 

これは「環境破壊を引き起こしている人間が地球から有害とみなされ、地球の自己防衛システムで滅ぶかもしれない」「人間が脅かしているのは地球ではなく、人間の文明である」というガイア理論とも通じる世界観である。ガイア理論は1960年代に発表されたものだが、新型コロナウイルスと重ねて見る人もいて、実に現代的だ。

 

そして、絶体絶命のピンチで、主人公が自分の正体がウルトラマンであると明かすのは定番の展開だが、今回はちょっと違う。

普通だったら可愛いヒロイン相手に、自分がウルトラマンであることを語るシーンなのに、今回の相手は整備班長のシブいおじさん・バコさん。

しかも、一言も正体を語っていないのに、ハルキの「俺……行きます!」という真剣な目から伝わる覚悟によって、すべてを瞬時に理解し、「そうか……行ってこい!」と背中を押す。

なんという胸アツ展開。

と同時に、「ヒロインに正体を明かすんじゃないのかよ。でも、ヒロインはラスボスだし、もう一人の女子はマッドサイエンティストだし、隊長も宇宙人だし……バコさんしかいないか」と感動しつつも、ちょっとズッコける。

これが『ウルトラマンZ』だ。

コックピットがどこにあるかわからない状態にまでなり、ウルトロイドと完全に一体化してしまったヨウコを、はたしてハルキは助け出すことができるのか。ダメージが大きすぎてもう一体化できないと言い、去っていったゼットは? 

気になる最終回は12月19日放送。さあ、皆さんご唱和ください、ウルトラマンゼット!

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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