人気は世界規模!?『チェリまほ』赤楚衛二の示す“人たらし力” | FRIDAYデジタル

人気は世界規模!?『チェリまほ』赤楚衛二の示す“人たらし力”

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赤楚衛二×町田啓太出演の話題のドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京ほか)、通称「チェリまほ」が、オリコンのドラマ満足度ランキングで4週連続首位にランクイン。 

初回から観ている視聴者たちは、この作品が今クールで最も優しく、愛おしく、多幸感に溢れた名作だと信じていた人も多いだろう。しかし、反響は意外にも第一話からSNSで熱狂が起こっていた海外配信のほうが先行しており、日本のメディアは後発で乗っかるかたちになるという、異例のヒットの道をたどってきた。

赤楚衛二(写真左)×町田啓太(同右)が主演するBLドラマが、世界中でヒット中だ! ©豊田悠/SQUARE ENIX・「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」製作委員会

原作は豊田悠による同名BLコミック。童貞のまま30歳になったことで、触れた人の心の声が聞こえるようになってしまった主人公・安達(赤楚)は、仕事がデキてイケメンでモテる同僚・黒沢(町田)の心の声を聞いてしまったことから、意中の人が自分であることを知り、意識し始め、やがてそれが恋心に変わっていく。

スマートで優しく完璧に見えるイケメン・黒沢を演じる町田啓太は、そのまんま漫画の世界から飛び出してきたような再現度の高さだ。いつでも絶やすことのない爽やかな笑顔が、逆に彼の傷つきやすい心を覆い、守っている壁のようにも見える。

しかし、意外なのが、自分に自信がなく、いつもちょっとオドオドしていて、人に仕事を押し付けられがちなサエないサラリーマンの主人公・安達清に、スマートな長身の赤楚衛二を起用したこと。プロフィールだけ見ると赤楚は178センチで、町田啓太が181センチあるとはいえ、その差はわずか3センチ。原作の画的バランスを考えても、オドオドしたキャラであることを考えても、もっと小柄で中性的イメージの役者を探してしまいそうなものである。ところが、実際に映像で見る二人の並びは、驚くほどに完璧だ。

これは、赤楚衛二の役作りによる猫背っぽさが醸し出しているバランスはもちろんある。小犬っぽくウルウルした黒目も理想的だ。

しかし、キャスティングの見事さに唸らされたのは、ドラマが実際に始まってから。何より30歳になった途端に人の心の声が聞こえてしまう力を持つという、本来ならリアリティゼロのファンタジー設定が、赤楚が演じることによって違和感なく、普通の日々の暮らしの延長線上に地続きで感じられるのだ。

安達は周囲には「サエない」認定されていて、目立たないが、一つ一つの仕事が非常に丁寧で、お人好しな性格につけこまれて、つい人に仕事を押し付けられてしまいがちだ。堅実で丁寧な仕事をしているものの、スピードやアピール力がないだけに、なかなか評価に結び付きにくい。しかし、そうした人が人知れず様々な人の尻拭いを粛々とこなしてくれているケースは、実はどの職場にもあるだろう。

自らアピールすることのできない安達のような人にとって、一番必要なのは、実はアピール力よりも、そうした仕事ぶりを見て、気づいてくれる同僚なり先輩、上司なりの存在だと思う。

その点、『チェリまほ』では、華やかで目立つ黒沢が気づいてくれている。それは黒沢自身が、他者に求められる自分と本当の自分とのズレに苦しみ、悩み、葛藤しているからなのだが、安達はそんな黒沢の思いに触れ、自分自身すらも気づいていなかった自分の良さを知り、自信をつけていく。

そんな黒沢が安達のことを大好きなポイントの一つに、「いつも同じ場所についている寝ぐせが可愛い」というものがあるが、これは“自分のことにはだらしないのに、人の気持ちには敏感で、仕事は丁寧”という、安達の全神経を”他者“に全フリしている人柄に対する評価が土台にある。

そして、これは安達を演じている赤楚衛二にも感じるポイントなのだ。

最終回は、12月24日。同日深夜からはスピンオフ作品も配信される(「TSUTAYAプレミアム/TSUTAYA TV」)。©豊田悠/SQUARE ENIX・「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」製作委員会

以前、インタビューしたとき、ロケで突然、散歩中のおじいさんに会釈し、会話を始めた彼に驚いたことがある。撮影中に通行人などの邪魔にならないよう配慮するのは、本来、編集なりライターなり周囲のスタッフの仕事である。

しかし、こちらが動く前に、彼はまるで後頭部に目がついているかのように、背後に近づいてくる老人に気づき、振り返り、目が合った途端に道の隅によけて、「こんにちは」と笑顔でペコリと頭を下げた。その一連の流れがあまりにスムーズだっただけに、知り合いが偶然通ったのかと思ったくらいである。

「僕、人に話しかけられる率がすごく高いんですよ」と笑い、道をよく尋ねられること、電車の中でおじいちゃんに延々と話しかけられることなどを語ってくれたのが、強烈に印象に残っている。

余談だが、ライターや編集者には取材対象者とすぐに打ち解け、タメ口で話すような距離感の近いタイプもたくさんいる。しかし、何度会っても「初めまして」のテンション・距離感の自分ですら、彼にはなんとなく話しかけやすく、衣装の可愛さを指摘したら、「すごい可愛いですよね? でも、これ、めっちゃ高いらしいんですよ。値段聞いちゃってから、緊張してます(笑)」と返してくれたのをよく覚えている。それにしても、この話しかけやすさ、一体何なのだろうか。

TSUTAYAプレミアム/TSUTAYA TV見放題作品では、歴代最高の視聴数を記録したという ©豊田悠/SQUARE ENIX・「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」製作委員会

実は彼の「話しかけやすい、親しみやすさ」は、生まれながらの人懐こさではなく、もがき、苦しんだ時代を経ての気遣い力が根底にあるのではないかと思う。

10代から名古屋でモデル活動を始め、名古屋の男性グループBOYS AND MENで活動していた時期を経て、21歳でデビュー。『サマンサタバサ』のメンズモデルオーディションでグランプリを受賞したのが転機となった。

もともと役者をやりたくて芸能事務所に入ったものの、アイドルのような活動をする中で、就職も視野に入れ始めたとき、東京での最後のチャンスとしてオーディションを受けた。そこで現在の事務所・トライストーンの社長に声を掛けてもらったことで「役者」をやっていく覚悟を決めたのだという。

とはいえ、配信の『仮面ライダーアマゾンズ』(2016年)を経て、2017年の『仮面ライダービルド』での愛すべき筋肉おバカキャラの万丈龍我役で一躍人気者になるまでは、オーディションをたくさん受け続け、落ち続け、バイトをしてきた生活だった。

しかも、「親しみやすさ」が大事だと気づいたのも、最近だったそうだ。というのも、もともと考え込みやすいタイプで、これまでは自分自身を強い気持ちでガチガチに固め、戦う気持ちでいたが、「みんな仲間だと思って生きていったほうが、他者とも自分自身とも向き合うのが楽しくなるんじゃないかと思うようになったから」と語っている。

しかし、この「考え込みやすい性質」が、自身にも、他者に対しても、気持ちや変化に気づく敏感なアンテナになっているのだろうし、キャッチした様々な情報をどうアウトプットするか迷う気持ちが、様々なシチュエーション・様々な相手にとってベストな選択肢を用意する優しさにつながっているのではないか。

よく「人たらし」だとか「コミュ力が高い」と言われる人には、大別すると主に2つある気がする。一つは教室の真ん中でいつでも大勢の友人に囲まれ、誰とでも分け隔てなく接する明るいタイプ。もう一つは、大物や変わった人、扱いづらい人などにも遠慮なく懐に入り込めるようなタイプだ。

しかし、そうした二つのタイプとは異なり、例えば大勢の飲み会の賑やかさやテンションに疲れて、ふと立った後になんとなく隣に座りやすい人や、初対面同士が集まる場でなんとなく話しかけやすい人、何気なく自分の身の上話や本音などをポロっと話してしまう人というのもまた、一つの「コミュ力」「人たらし」だと思う。

それは自分自身を押し出さず、グイグイ相手の領域に踏み込むことなく、相手の気持ちやテンションをやわらかく受け止めてくれる「受信力」の高い人ではないか。決して集団の真ん中でイニシアティブを握っているタイプじゃないのに、気づけばいろんな人の悩みを聞かされたり、いろんな人の様々な事情に通じていたりするのが、この手のタイプだ。そして、真の意味で「コミュ力の高い人」は、実はこういう「受信力」の高い人なんじゃないかと思う。

そういった意味で、やたらと街中や電車で話しかけられやすい赤楚衛二という人と、いつも自分よりも周りのことを見て、考えている安達には、非常に近しいモノを感じる。

安達が人の心の声を聞けるようになったのは、誰より人の心に、その変化に敏感だから。おそらく鋭敏な感性が、30歳まで童貞だったことによって、さらに研ぎ澄まされた結果手に入れた能力なんじゃないかとすら思えてくる。

もう一人、同作で安達と同じ能力を手に入れるのが、安達の親友で「恋愛小説家」の柘植(浅香航大)というところも、人の心の機微への敏感さをあらわしている気がしてならない。

しかし、前回、魔法が使えなくなった柘植の忠告により、安達は魔法を封印しようとする。そして、心の声をずっと聞いてしまっていた罪悪感から、黒沢に魔法のことを告げるのだが……。

いよいよ24日は最終回。優しさゆえにもどかしい安達は、黒沢は、どんな結論を選ぶのか。『チェリまほ』の最終回が気になって仕方ない。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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