箱根駅伝で大逆転!急失速の創価大・最終走者に起きていた変化 | FRIDAYデジタル

箱根駅伝で大逆転!急失速の創価大・最終走者に起きていた変化

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最終10区で創価大の小野寺を抜き去る駒大の石川(画像:共同通信社)
最終10区で創価大の小野寺を抜き去る駒大の石川(画像:共同通信社)

創価大学のアンカー・小野寺勇樹(3年)が、苦しそうに顔を上げる。その横を、涼しい表情でスルリと走り抜けたのは駒澤大学の石川拓慎(3年)だ。箱根駅伝の最終10区。残りわずか2kmの地点で首位が入れ替わる、戦後最大の逆転劇となった――。

1月3日に行われた箱根駅伝の復路の争い。9区を終えた時点で2位の駒大・大八木弘明監督(62)は、逆転は難しいだろうと考えていた。それもそのはず。1位の創価大とは1km以上、3分19秒の差があったのだ。

大会後の会見で、大八木監督はこう語っている。

「(優勝は)ムリかと思った。3分19秒も離されていたので、2番は覚悟かなと思っていました。アンカーの石川には『区間賞狙いで思い切っていけ』と言いました」

この開き直りが、功を奏したのだろう。石川はチームのことより、個人記録を狙いグングンとスピードを上げる。試合後の石川のコメントだ。

「(同じ10区を走り早稲田大に1秒差でかわされ8位に終わった)去年の悔しさを晴らしてやろうと思いました。15km地点の給水をもらった時点で、いつもなら体がきつくなるのに動いてきて、可能性があるのかもと思いました。20km地点でアームウォーマーをはずしたときに『これはいける』と思った」

流れが変わったのは、石川が指摘した15km過ぎ。小野寺との差がみるみる縮まっていると実感した大八木監督は、運営管理車から叫んだ。

「区間賞と優勝の二つを狙え! 男だろ!」

指揮官の言葉に、石川は右手をあげて答える。試合後、石川はこう語っている。

「監督から『男だろ!』『男だよ!』って言われ、『よっしゃー!』ってスイッチが入りました」

石川はさらにペースアップして、20km過ぎで小野寺を抜き去る。大八木監督は「やったよ、やった! オマエ、男だよ!」と絶叫した。

「大八木監督は、選手のヤル気を引き出すのが上手い。周囲には、こう語っています。『以前は怒ると褒める割合が8対2だったが、最近は5対5かな』と。選手の調子が悪いと感じれば『どうした。何かあったか?』と声をかけ、結果が出れば『いい走りだったな』と称賛する。LINEやメールは極力使わず、選手と直接対話を心がけているそうです。選手からは『第二の父』と慕われていますよ」(スポーツ紙担当記者)

大差も初優勝のプレッシャー

創価大の9区・石津佳晃(4年、右)からトップでタスキを受け取る小野寺。この時点で2位・駒大とは3分以上の大差があった
創価大の9区・石津佳晃(4年、右)からトップでタスキを受け取る小野寺。この時点で2位・駒大とは3分以上の大差があった

一方、急失速した創価大の小野寺には、何が起きていたのだろう。10区序盤は1km3分ほどのペース。だが10kmを超えた付近でフォームが乱れ始め1km3分10秒ほどになると、以後は急激に速度が落ちていったのだ。駒大に抜かれ2位で倒れ込むようにゴールインすると、担架に乗せられ酸素吸入を受けた。榎木和貴監督(46)は、試合後こう語っている。

「(脱水症状などは)大丈夫と聞いている。(失速の原因は初優勝の)緊張からくる精神的なものだったと思います」

自身も早大のランナーとして箱根駅伝に出場した、マラソン解説者の金哲彦氏が語る。

「9区終わった時点で3分以上の差があれば、普通は逆転できません。駒大のアンカー・石川君が、ペースを落とさず走り続けたのが良かった。おかげで、急にペースを落とした創価大の小野寺君の後ろ姿が見えてきました。力が湧いたでしょう。前走者が見えると見えないのでは、選手のモチベーションがまったく違いますから。

創価大は、残念ですが自滅としか言いようがない。3分以上の大差があったんですから。小野寺君が余裕を持ち、ペースを落とさなければ逃げ切れたはず。ハイペースの石川君の姿を背後に意識し、ガクッと気持ちが落ちてしまったのかもしれません。結果として、10区の走者の中で最下位という大ブレーキになってしまいました」

試合後、創価大の榎木監督はこう語っている。

「今日の悔しさを一生忘れることなく、今後の競技人生に生かしてほしい。卑屈になることはない。この経験があったからこそ、将来の小野寺があると言えるよういかしてほしい」

歴史ある箱根駅伝。優勝への壁は、われわれの想像よりもはるかに高いようだ。

駒大の石川は3分以上の差をものともせず、20km過ぎで創価大の小野寺を抜き去ると一気に差を広げていった
駒大の石川は3分以上の差をものともせず、20km過ぎで創価大の小野寺を抜き去ると一気に差を広げていった
駒大の石川はガッツポーズでゴールイン。最終的には創価大に52秒差をつけ13年ぶり7度目の総合優勝を飾った
駒大の石川はガッツポーズでゴールイン。最終的には創価大に52秒差をつけ13年ぶり7度目の総合優勝を飾った
ゴールした創価大の小野寺は倒れ込み担架で運ばれた。出場4回目での2位は大健闘だろう
ゴールした創価大の小野寺は倒れ込み担架で運ばれた。出場4回目での2位は大健闘だろう
  • 写真共同通信社

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