《青木撮り》に《林撮り》「映え」を狙うラーメン画像撮影の極意

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毎日膨大な数のラーメン画像がアップされているSNSやブログ、グルメサイト。その中で注目を集めているのが、発案者の名前をとった撮影法《青木撮り》、《林撮り》。「ただ記録のために撮るだけじゃつまらない! ラーメンを前にした興奮、無心に食らいつく喜びまでも切り取れないものか……?」そんな情念から誕生した撮影ワザ、正統派プロの手法、そして店主の本音も聞き、「SNS時代のラーメン撮影術」を考えてみた。 

臨場感を写し取る! 情念がこもった撮影法、発案者に直撃 

■丼にひたすら寄ってローアングルで撮る《青木撮り》 

ネット上にラーメン画像が氾濫する中、存在感を放つのが「青木撮り」。その名の通り、イラストレーター・デザイナー・漫画家の青木健さんが編み出したものだ。

青木さんはラーメン店として世界で初めてミシュランの星を獲得した『Japanese Soba Noodles 蔦』、煮干しラーメンの気鋭店として世界各国に出店する『ラーメン凪』などのロゴデザインを手がけたラーメン専門グラフィックデザイナーの第一人者。

この青木撮り、古今東西の美のスタンダード「黄金比」とも関連するとか?

「青木撮りとは、丼にひたすら寄ってローアングルで撮る手法です。ラーメンをまさに食べんとする際の、顔をグッとスープ近づけた時を再現したものだと考えてください。トッピングなどの情報は捨てて臨場感を重視! ある人に指摘されて気づいたのですが、理想的な青木撮りは丼を除いたラーメン部分が黄金比(1:1.618)になるんです。 

ただ、あまりにラーメンに寄りすぎるので、湯気をもろに受けやすいのが弱点。デジカメで撮っていた頃は、脂の影響でレンズのカバーが開きにくくなっていたものです(笑)」(青木さん)

『中華そば専門 多賀野』の「中華そば」。画角としては斜俯瞰だが、低い構えからぐいっと寄った主張ある視点で迫力たっぷり!(撮影/青木健)

■レンズに昇ってくるかのような麺ライン《林撮り》

ダイナミックな麺の姿を切り取らんとするアプローチ「林撮り」とは、スープ、具材に隠れがちな「麺」をフィーチャーした異色スタイル。日本テキーラ協会会長にして大のラーメン好きで知られる林生馬氏の撮影法だ。

ラーメンフリークの間では麺を箸で持ち上げて撮る「麺リフト」が定番だし、グルメ誌でも同様テクが「麺上げ」として一般的だ。林撮りは真俯瞰に近いアングルを採用しつつ、レンズに昇ってくるかのような麺ラインを形成するのが特徴。ラーメン全体の構図が見えるよう、麺はあえて1時の方向から持ち上げている。

ラーメンの最初の一口を食べる興奮を再現し、流れるような麺線を活写する。『海老丸らーめん』の「冷やしメキシカンらーめん」(撮影/林生馬)
『中華ソバ ビリケン』の「手揉み中華ソバ」(撮影/林生馬)

ラーメンのパーツでは麺にこだわりを持っていたという林さん。「世のラーメン写真では麺があまり映らない」ことを残念に思い、麺がもっとも活き活きする瞬間を切り取るべく、林撮りの開発に至った。

「ねらいは臨場感です! ラーメンを食べた時の感動と興奮が蘇ってくるような、そんなライブ感です。撮り方としては、麺を持ち上げつつ箸は水平に。カメラはスープ面にフォーカスします。スマホはタテ画面なので左上にスペースが空きますから、おつまみや別盛りトッピングがあれば配置したいところですね」(林さん)

構図とフォーカスを考え、ベストな位置に麺をリフトアップ。プロセスが複雑なだけに難易度は高く、林さんですらベストショット率は5割に満たないという。

「チャレンジしてみても諦めてしまう方が多いですね。私も構図がうまくできなかったらすぐにあきらめ、さっさと食べ始めちゃいますし(笑)」(林さん)

基本は「真俯瞰」と「斜俯瞰」の使い分け。プロに聞く基本テク

では、シズル感たっぷりの画像を撮るポイントは? 『業界最高権威 TRY認定 ラーメン大賞』の表紙写真をはじめ、幾多のラーメンを撮ってきた近藤誠カメラマンは、「ラーメン撮影の基本は真俯瞰(まふかん)と斜俯瞰(しゃふかん)です!」と語る。TRY本をはじめ、メディアのラーメン画像はこの2タイプに大別されるそう。

ラーメンを真上から撮影するのが真俯瞰。彩り豊かなトッピング、澄んだスープや綺麗に整えられた麺線をアピールでき、塩ラーメンなどクリアなスープで多用される。スクエアなカットに収められ、インスタグラムとも好相性。

『東京駅 斑鳩』のフラッグシップメニュー「東京駅 らー麺」。存在感あるチャーシューやぐるりと巻きの入った穂先メンマ、オレンジの味玉の見事なレイアウト。味玉を目玉にしたドラえもんの顔に見立てるのは「ドラ写」。アートディレクターの秋山具義氏が提唱する撮影スタイル

斜俯瞰とはラーメンを斜め上からとらえる王道の画角。ガッツリ系などの迫力あるトッピングの盛りを立体的に撮影できるのがメリットだ。

『ラーメン二郎 三田本店』のラーメン。迫力ある盛りがドーンと迫ってくる。この一杯を真俯瞰でとらえたら立体感は出ず、平板なラーメン画像になってしまうだろう(撮影/青木健)

画角だけではなく明るさにも気をつけたい。近藤カメラマンによると、「スマホのフラッシュライトは絶対にオフにする」べき。発光は他のお客さんの迷惑になるし、スープの反射もマイナス要素になる。

「料理写真の場合、“汁物”は真横からライトを当てるのが鉄則です。これはスープ表面が反射してしまうのを避けるため。 

ラーメン屋さんは上から照らすダウンライトがほとんどなので、状況的には厳しいですね。綺麗に撮りたいなら、なるべく上から光が当たらない場所を選ぶのがいいでしょう」

『神田らぁめん 悠 HARUKA』の「納豆ざるらぁめん」。ホイップした納豆がカプチーノのようにふわっふわになったつけ汁をフィーチャーするか、ツルツルのテクスチャーでアクセントに海苔を乗せた麺をフィーチャーするか。どちらに焦点を当てるかで印象はガラリと変わる

「運ばれてきたら5秒以内に撮って!」がラーメン店主の本音

近年は「撮影お断り」を掲げるお店もほぼなくなり、多くの店主はラーメン撮影を黙認してくれている。しかし、撮影に長々と時間をかけるのはいかがなものか、という風潮もある。

現場に立つ店主はどう思うのか? 大阪の名店『豊中 麺哲』で修行を積み、2014年に早稲田で開業した『ラーメン巌哲』店主の平松恭幸さんに聞いた。

「自分もたくさん食べ歩きをするようになり、記憶だけではなく記録に残すため、料理を写真におさめるようになりました。撮影も食事の楽しみ方の形のひとつだと理解しています。とはいえ、ラーメンはおいしく食べられる時間が特に短い食べ物なんです。ほぼすべての店は、出した瞬間に箸をつけてもらうつもりでラーメンを提供しているはずです。 

麺本来の力を維持できるのはせいぜい30秒。出てきたら5秒以内に写真を撮り、すぐに食べてほしい。それが店主としての見解ですね。とりあえず一口麺をすすってもらえたら、それ以降は好きなペースで食べてもらって構いません」(平松さん)

確かに、複数カットをねらっていたら麺ものびてしまう。撮影するならアングルはあらかじめ決めておき、最小限のカット数ですませたい。ラーメンが置かれたら即撮影できるようにスタンバイしておくのが望ましいだろう。

『ラーメン巌哲』冬の定番「マルチョウそば」。醤油が香るスープに牛ホルモンのマルチョウがどっさり。黒コショウもきいて、体を芯からホットにしてくれる一杯

さらに、店内では「基本的にラーメン以外の写真は撮らない」のがマナーだ。卓上のメニューや調味料、こだわりの説明書きなどはケースバイケースだが、厨房や店内にカメラを向けるのは避けたい。

「従業員のプライバシーもありますし、厨房の仕組みも公開したくない。そもそも、カメラを向けられると調理に集中できない。それが本音ですね。何かを許してしまうと際限がないので、ラーメン以外は基本的に禁止と考えてもらえれば」(平松さん)

オリジナリティを極めたラーメンがどんどん登場する中、青木撮りや林撮りといった撮り方にも個性が爆発し始めている。しかし、撮影に気を取られ、ラーメンをろくに味わえなかったり、店にウザがられたりしては本末転倒だ。「ラーメンを楽しみ、店の雰囲気にひたる」ことを第一に考え、ラーメン撮影を楽しもう。

  • 取材・文・写真佐々木正孝

    1972年秋田県生まれ。キッズファクトリー代表。『石神秀幸ラーメンSELECTION』(双葉社)、『業界最高権威 TRY認定 ラーメン大賞』(講談社)、『ラーメン最強うんちく 石神秀幸』(晋遊舎)などのラーメン本を編集し、執筆では『中華そばNEO:進化する醤油ラーメンの表現と技術』(柴田書店)に参画。ラーメンを愛し、「ラーメンの探求マインドは変態であれ、振る舞いは紳士であれ」がモットー。

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