トランプ派が議事堂に乱入!米大統領選「最悪の終幕」の行方 | FRIDAYデジタル
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トランプ派が議事堂に乱入!米大統領選「最悪の終幕」の行方

トランプ自身の扇動で議事堂を占拠、死者を出す騒動に震撼する国際社会〜黒井文太郎緊急レポート

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アメリカ・ワシントン。トランプ支持者の議会突入により米上下両院合同会議が中断された 写真:AFP/アフロ
アメリカ・ワシントン。トランプ支持者の議会突入により米上下両院合同会議が中断された 写真:AFP/アフロ

2021年1月6日(日本時間7日未明)、民主主義の国アメリカで、あり得ない「事件」が起きた。大統領自らが扇動した極右たちの暴走。この事態の可能性を昨秋に指摘していたジャーナリスト・黒井文太郎氏が、緊張感の高まるアメリカの現在を緊急レポートする。

「暴動、テロが起きる」と危惧した通り「最悪の終幕」が

アメリカ大統領選前日の2020年11月3日、筆者はFRIDAYデジタルに「トランプが負けたら【アメリカ全土で暴動・テロが起きる】の深刻度~米大統領選後に警戒すべき危ない妄想系極右たち」という記事を寄稿した。

そして1月6日、同記事中で危惧していたことが、実際に発生した。ワシントンの連邦議事堂にトランプ支持者たちが乱入したのである。

その時、議事堂内では、バイデン次期大統領の当選を公式に確定する上下両院合同会議が開催されていた。トランプ支持者たちはバイデン当選を認めず、その会議を妨害しようとしたのだ。元空軍兵士でトランプ支持者の女性が議事堂に乱入、私服警察官に撃たれ死亡するなど、詳細は不明だが計4人が死亡している。

現場にはFBI部隊なども投入され、暴徒たちを議事堂から排除したが、ワシントンでは夜間外出禁止令が出され、州兵が投入された。しかし、暴徒の多くは外出禁止を無視して議事堂前に留まり続け、警官隊と睨み合っている。まるで映画のような展開である。

それだけではない。共和党全国委員会本部と民主党全国委員会本部では、それぞれパイプ爆弾が発見され、処理された。まさにテロ未遂といっていいだろう。

根拠なき陰謀論に踊らされる人々

議事堂では会議が再開されたが、共和党議員を含めて議員たちからは、暴徒を非難する発言が相次いだ。共和党議員のなかには、トランプ大統領の「選挙は不正。バイデン当選は無効」という根拠なき主張に同調する議員もいるが、流れとしては、乱入を扇動したトランプ流の陰謀論に対する批判が高まっている。

今回の事件を受けて、トランプ大統領の責任を問う声が一斉に巻き起こっている。というのも、同日、まさに両院合同会議の直前に、トランプ大統領はホワイトハウス前の広場で数万人の支持者に対して演説し、バイデン当選を拒否するために連邦議事堂に向けてデモ行進するように「扇動」していたからだ。

つまり、「議事堂乱入」を直接呼びかけたわけではないが、トランプ流陰謀論の信者が暴発する種を撒いたのは、トランプ大統領自身だったのである。

こうした事態に、米国では合衆国憲法修正25条第4節の適用が浮上している。大統領が職務を遂行できない際、所定の手続きを経て、副大統領が大統領代行として権限を行使するという内容だ。トランプ大統領の任期は1月20日までとあとわずかなので、現実にそれが実行される可能性は小さいものの、トランプ政権内の一部でも検討が始まっているようだ。

暴徒乱入を受けて、連邦議事堂内でまさに両院合同会議の議長を務めていたペンス副大統領が、孤立するトランプ大統領に代わって警察や軍の当局と協議を行った。ペンス副大統領はツイッターでも、暴徒乱入を非難する声明を発信している。

他方、デモ扇動の張本人であるトランプ大統領は、動画演説でデモ参加者に自宅へ帰るように呼びかけたが、同時に「あなたがたの苦痛は理解できる。選挙は盗まれた。圧倒的な勝利だったことは誰も承知している」と、デモ参加者への「理解」を明言した。議事堂乱入を非難する言葉は一切なかった。

次々と離れていく元側近に孤立を深めるトランプ

あくまで自分の当選を主張するトランプ大統領の姿勢は突出しており、トランプ政権の側近たちとも距離感が出てきている。

前述したように、ペンス副大統領は議事堂乱入を批判したが、もともと彼はトランプ大統領の意向に反し、議長としてバイデン当選確定の両院合同会議を進めていた。その日、トランプ大統領はペンス副大統領に対して大統領選の結果を確定しないように要請していたが、ペンス副大統領はそれを拒否していたのだ。

他にも、トランプ大統領のイエスマンだったポンペオ国務長官は、議事堂乱入に対する非難を明らかにしている。オブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)などは、辞任を考えているとの報道もある。トランプ大統領の孤立は決定的で、すでに政治的には完全に終了したといえる。

もっとも、今回、連邦議事堂に乱入した暴徒たちは、自分たちは正しいことをしていると信じている。彼らは、トランプ大統領が主張する「選挙不正があった」というフェイク情報を信じ込んでおり「正しい民主主義を守る」ために選挙不正を明らかにしなければならないと「善意」から考えているのだ。

トランプ大統領が主張する大規模な選挙不正疑惑は、すべて根拠なき陰謀論として各州当局や司法当局から却下されているのだが、トランプ大統領はそれすらも「不正な陰謀だ」と主張しており、陰謀論信者の盲信は止まらない。

事件後に再開された両院合同会議では、共和党議員も含めて、暴徒の暴力行為を非難するだけでなく、暴徒を扇動する陰謀論そのものを非難する演説が続いた。

「フェイクニュース」とは、なんだったのか

振り返れば、ドナルド・トランプ自身が、陰謀論の推進者だった。フェイク拡散の極右サイト「ブライトバート・ニュース」を主要メディアよりも賞賛し、同サイトのトップだったスティーブ・バノン氏を首席戦略官という要職でホワイトハウスに入れた(のちに解任)。初代の国家安全保障担当大統領補佐官に、ロシアと通じる陰謀論者のマイケル・フリン氏を起用(のちに解任)するなどの迷走もあった。

その後、トランプ大統領は自分を支持するFOXニュースを賞賛し、その他のメディアを「フェイクニュースだ」と非難し続けたが、今回の大統領選での選挙不正疑惑にFOXが乗らなかったため、今ではFOXすら非難し、ツイッターでは自分を支持する新興のケーブルテレビ局ばかりを引用するようになっている。閣僚やホワイトハウス・スタッフの助言もあまり聞かず、陰謀論の主な発信者であるトランプ弁護団の話ばかり聞いているとも報じられている。

もともとこうした陰謀論が政治に入り込んでいたのが、この4年間のアメリカ政治の「特殊性」だった。しかも、その陰謀論の発信者が大統領自身という異常事態がこの4年間の米国であり、その異常事態が、最後に強く可視化されたのが、今回の議事堂乱入事件ということになりそうだ。トランプ政権は、死者まで出す「議事堂乱入」で、今、最悪の終幕を見せている。

2021年1月6日は、アメリカにとって、「暗黒の日」になった
2021年1月6日は、アメリカにとって、「暗黒の日」になった
  • 取材・文黒井文太郎写真AFP/ロイター/アフロ ロイター/共同通信

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