コロナ禍の1月ドラマは「生きること」を考えさせる良作だらけ | FRIDAYデジタル

コロナ禍の1月ドラマは「生きること」を考えさせる良作だらけ

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エンタメに携わる人達の思いがたっぷり詰め込まれたオリジナルストーリーに注目

世界が急速に大きく変わってしまった2020年。 

ドラマ界では、『半沢直樹』『ハケンの品格』『BG~身辺警護人~』『SUITS/スーツ』など、続編だらけだった春夏ドラマを経て、夏~秋には『リモラブ~普通の恋は邪道~』『姉ちゃんの恋人』など、物語の中でコロナを描く作品も増えた。 

そうした流れを受け、コロナ禍の真っただ中にじっくり企画・構想が練られた物語がかたちになるのが、おそらく2021年1月期ドラマだろう。 

つまり、1月期ドラマは、力作揃いになる可能性が高い。一つには、人気脚本家のオリジナル作品が多数あること。また、「人生」や「生きること」を深く考えさせる作品が豊富だという印象がある。 

(イラスト:まつもとりえこ)

大本命、対抗ともにTBS、今期も圧勝!?

まず大本命としたいのは、森下佳子脚本×綾瀬はるか×高橋一生出演のTBS日曜劇場『天国と地獄~サイコな2人~』 (1月17日スタート)だ。

森下×綾瀬はるかのタッグといえば、『世界の中心で、愛を叫ぶ』(2004年)、『白夜行』(06年)、『MR.BRAIN』(09年)、『JIN-仁-』(09年)、『わたしを離さないで』(16年)、『義母と娘のブルース』(18年)に続く7作目で、これまでほぼ外れなし。

また、本作は、正義感や上昇志向の強い刑事(綾瀬)と、殺人犯(高橋)が入れ替わってしまう物語となるが、奇しくもこの“入れ替わり”設定は、森下脚本×高橋一生が、コロナ禍に放送された『今だから、新作ドラマ作ってみました』(NHKの第3夜『転・コウ・生』で経験済み。

柴崎コウと高橋一生、ムロツヨシ、そして猫という4者が入れ替わる物語は、彼らの演技力が存分に生かされ、もっと観たいと思わせる内容になった。まさかあれから半年とちょっとで、同じ森下佳子脚本により、今度は綾瀬はるかと高橋一生の入れ替わりをTBSで観られるとは。

ところで、設定そのものはドタバタコメディを連想するが、おそらくそこに終始しないのが、森下佳子脚本だ。例えば、直近で思い出されるのは、森下佳子オリジナル脚本のNHKよるドラ『だから私は推しました』(2019年)。

タイトルから地下アイドルが頑張る物語を想像する人もいたが、フタを開けてみると、「推す」は、とあるストーカーを階段から「押す(突き落とす)」とのダブルミーニングとなっており、アイドルとファンとの共依存の厄介さ・危険性も孕んだ物語となっていた。

こうした物語の深さは、おそらく「ものの見方」を宗教学から学んだところにルーツがある。

森下佳子は東京大学文学部卒としてよく知られているが、専攻は宗教学科だった。東京大学大学院社会家系研究科・文学部の卒業生インタビューによると、もともと文化人類学志望で、演劇や儀礼での人間の表現行為や、人が集まるとどうなるのかなどを勉強したかったようだが、「芝居ばっかりやっていたので、点数が足らない」ということ、「宗教学科でやっていることと、そんなに変わらないらしいよ」と友人から聞いたことから、宗教学を学ぶようになったようだ。

宗教学の中で学んだのは「ものの見方」だそうで、おそらくそうした経験から出たのが、「シナリオを書くときに心がけていることとして、シナリオの単純な図式としては、主人公がいて、敵対する悪人がいる、という風な物語上の見え方がありますが、敵対する悪人にもこの人の信じるもの、理由なり、理屈なりが必ずあるんです。それをできるだけ多面的に表す、その方がドラマって絶対に濃くなります」という言葉だろう。

『天国と地獄』の中で入れ替わるのは、女と男、刑事と殺人犯だが、おそらくどちらが正義でもどちらが悪でもなく、その“あわい”を行き来することで価値観が揺らぐ面白さ・奥深さが味わえる作品になるのではないだろうか。

森下佳子脚本×綾瀬はるかのタッグは『義母と娘のブルース』に続いて7作目

また、対抗に挙げたいのは、『池袋ウエストパーク』からドラマ・映画で5回組んできた宮藤官九郎脚本×長瀬智也『俺の家の話』(1月22日スタート/TBS系)だ。

長瀬が演じるのは、42歳のプロレスラー。脳梗塞で倒れて要介護となった父(西田敏行)の世話をするために、25年ぶりに実家に戻り、父や弟妹たちと共同生活を送ることになるという物語が描かれる。『タイガー&ドラゴン』からの系譜で伝統芸能の世界を軸とし、そこにプロレスが絡むのかと思いきや、介護の話あり、学習障害の息子の話あり、”家族“の様々な問題がじっくり描かれる内容となりそう。

「宗教学」的見地がベースにある森下とは異なるものの、宮藤官九郎作品もまた、物事を単純な善悪で断じたり、勝者・敗者といった基準でとらえたりしないのが特徴であり、逆に光があたらない「敗者」の物語を救いあげるところに大きな魅力がある。ここにもまた深く豊かな人間ドラマが紡がれていくことだろう。

人気脚本家の作品といえば、他に、『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジテレビ系)が好評を博した岡田惠和と連ドラ初タッグとなる高畑充希『にじいろカルテ』(1月21日スタート/テレビ朝日系)や、NHK連続テレビ『半分、青い。』(2018年)以来の連ドラとなる北川悦吏子脚本、菅野美穂×浜辺美波が「友達親子」を演じる『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(1月13日スタート/日本テレビ系)も挙げられる。

『池袋ウエストパーク』からドラマ・映画で5回組んできた宮藤官九郎脚本×長瀬智也

40歳を演じる池脇のリアリティに息を呑む

ところで、「本命」「対抗」ときて「大穴」と本来はする予定だったのが、池脇千鶴が9年ぶりに連ドラ主演を務める『その女、ジルバ』(1月9日スタート/東海テレビ・フジテレビ系)。

「予定だった」と書いたのは、これを執筆している1月11日現在、すでに第一話が放送されており、第一話の冒頭を観ただけで「今クールナンバーワンかも」と思ってしまったためだ。

これは有間しのぶによる同名漫画のドラマ化で、夢なし・貯金なし・恋人なしで、人生をあきらめかけていた主人公・笛吹新(池脇)が、40歳の誕生日を迎えるとき、超高齢熟女BAR「OLD JACK & ROSE」の張り紙を見つけるところから物語が生まれる。

その張り紙の内容は「未経験者歓迎 時給2000円 ホステス求ム! 40才以上」というもので、扉を開けるとマスターに「お嬢ちゃん、うちはロリコンクラブじゃねえんだ。お客はくつろぎに来るんでね。シジュー前に用はねえよ!」と言われる。40才なんて「ギャル」で「小娘」で「ピチピチ」なんである。思えば人生100年時代はすぐそこに来ているのだから、40才なんて折り返し地点にも立っていないわけで。なんて素晴らしい世界・価値観なんだろう。

それにしても40歳の新を演じる池脇のリアリティといったら。女優が加齢を表現する場合、たいてい髪を少し白くし、メイクによってしわを作るあたりに終始する。しかし、実際に人が外見から年齢を判断するのは、近くで見たときの髪やしわといった「部分」よりも、遠めに見たフォルム、体型や姿勢のほうが大きい気がする。

その点、池脇は、自分自身が確認できない背中の肉付きや丸まった背の具合などの大まかなフォルムで、パッと見で「老け」を表現してくる。しかも、冒頭で見せた姿と、人生諦めモードでいたときとは、全く違うのだ。いったいどういう調整の仕方をしているのか聞いてみたいくらいだ。

実は池脇が少し前に番宣でバラエティ番組に出ていた際、SNSやネット記事で「池脇千鶴 劣化」などと騒がれていた。池脇はこれまで何度も役作りでかなり体重のコントロールや体作りをすることがあっただけに、個人的には「ジルバのためだろうに、なんで騒がれるんだろう」と不思議に思っていた。

しかし、ドラマが始まってみると、やはりSNSやネットの掲示板では「番宣から役作りが始まっていたのか」と驚愕・賞賛する声が続出していた。軽々しく女優に「劣化」などと騒ぎ立てることがいかにナンセンスか、突き付けられたような思いである。

ちなみに、池脇の演じる新は、第一話では原作よりも明らかにおばちゃんっぽい(このおばちゃんという言葉自体、抵抗感はあるが)。これが実写化の醍醐味で、原作も非常に面白いのだが、池脇の役作りがあまりに生々しくリアルなために、ドキュメンタリーを観ているような感覚にもなれば、その一方で「OLD JACK & ROSE」は草笛光子をはじめとした超熟女たちがあまりに素敵すぎて、一夜の夢を見せてもらったかのような多幸感に浸ることもできる。

そしておそらく今後、新の「変化」、そして「伝説のママ」ジルバの二役との演じ分けが堪能できるはずだ。WOWOWやNetflixじゃないのに! 地上波で無料で観られるのは凄い。

40代~50代の女性たちにとって、間違いなく元気やパワーをもらえる物語なのだ。

池脇千鶴が9年ぶりに連ドラ主演を務める『その女、ジルバ』が気になる

「高校」が舞台のコミック原作ドラマが秀作揃い

さらに、先の見えない不安な時代だからこそ、「生きること」「人生」を深く考えさせてくれそうなのが、山田裕貴主演のNHK「よるドラ」『ここは今から倫理です。』(1月16日スタート)だ。

原作は20代を中心に異例の人気を誇る雨瀬シオリの異色の学園コミック。山田裕貴の先生役というと、『ホームルーム』(MBS/2020年1月期)で演じたド変態教師を思い出してしまうが、本作で演じるのは、新時代のあるべき「倫理」を問う、ミステリアスで風変わりな倫理教師・高柳である。

「倫理」というと、「大学受験であまり使わない科目」くらいのイメージの人が多いかもしれない。しかし、高柳のセリフを借りると、「倫理は選択科目ですが、実は人生における必修科目」なのだ。

こう書くとずいぶん説教臭いイメージを持つ人もいるだろう。しかし、高柳はズバッとわかりやすい名言で解決するような教師とは真逆を行くタイプだ。

問題や悩みを抱えた生徒に対して、一面的な正義や正論を振りかざすことは一切なく、わかりやすく明快な答えも出さない。答えのない事態と向き合いながら、生徒が悩みながらも一歩踏み出すための手助けをする程度なのだ。

そもそも単なる科目としてとらえられがちだが、「倫理」とは本来、「人として、よく生きることの探求」である。世界が激変し、日々価値観が大きく揺さぶられる今の世の中に実にふさわしい作品が『ここは今から倫理です。』なのではないだろうか。

他に注目したいのは、和山やまの同名人気コミックを原作とし、『夜行観覧車』『Nのために』『リバース』『アンナチュラル』『MIU404』などの塚原あゆ子が監督を務める『夢中さ、きみに。』(1月8日スタート/MBS系)。

これは男子高校生たちの日常を描く物語で、終始ローテンションの中にクスリとさせられる笑いが散りばめられた原作に比べ、ドラマは感情表現・演出ともにややビビッドになっている印象はある。しかし、ゆったりした時間の流れの中で「今しかできない無駄なこと」を楽しむ高校生たちの様子にキュンとしたり、羨ましくなったり……。

余談だが、コロナ禍の中で様々な役者やプロデューサーに取材する度、耳にしたのが「じっくり考える時間ができた」「これまでの仕事や人生、これからについて改めて考えた」という言葉だった。

そうしたエンタメに携わる人々の思いがたっぷり詰め込まれたモノがおそらく豊富にそろう1月期ドラマ。そこにはきっと「よく生きる=倫理系ドラマ」ともいうべき、「人生を考え、愛する」ドラマがあるのではないだろうか。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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