3年ぶり復帰の武井咲が『黒革の手帳』で見せた「スゴイ輝き」
結婚、出産を経て帰ってきた武井咲はさらに輝いていた!

2017年に連続ドラマとして放送されていた『黒革の手帖』(テレビ朝日系)の2時間スペシャルが年初に放送され、大きな話題を呼んだ。タイトルは『黒革の手帖~拐帯行~』。
放送中から主演の武井咲の美しさにSNSは話題騒然。3年ぶりだとはとても思えない名演技で視聴者を圧巻した。私もブルーレイレコーダーに録画したが「また見るかもしれない」と消去できずにいるほど。どれほどのインパクトがそこに存在していたのかを伝えていきたい。
人は加齢で輝くのだと、お勉強させていただきました
『黒革の手帖』はこれまでに数多の女優が繰り返し演じてきた名作。簡単なあらすじは、家庭の経済状況に恵まれず育った原口元子(武井)は派遣先の銀行から1億8千万円を横領して、銀座にクラブを開業する。さまざまな人間関係を経て、元子が最終回に逮捕されるところで連続ドラマは終了した。『黒革の手帖~拐帯行~』はその後を描いた内容だ。
元子は出所して、金沢に拠点を移してまた夜の世界に返り咲く。容姿も含めてどうしても目立ってしまう元子。彼女の行く手を阻む人間が次々に現れる中、元子は新しい“勝利”を手中にしていく。
目を離せなくなってしまったのは、この記事内でも幾度も書いてしまう武井の“美しさ”がある。刑務所から出所してくる地味な雰囲気にも隠しきれない何かがあったし、クラブ内のシーンでは全身スパンコールの衣装が、美しさに完敗していた。そして「(美しさの)真打登場!」と呼びたくなる。着物姿で武井が登場すると、もう見ている側は笑いが出てしまうほど。ただきれいなだけではなくて、欲深い企みを感じさせる妖艶さも出ている。共演にエイジレスさで話題のホステス役で安達祐実も出演していたが、いつもの存在感が霞んでしまうほどだった。
この3年間で、武井は結婚と出産を経験している。母親になることを決意したのは、主演作が続く人気上昇中の頃。デビューからスター街道を疾走していたような彼女だったけれど、ズン、と記憶に残るような作品に恵まれていなかった気がする。それが『黒革の手帳』への主演で、世間からの見る目が変わってきた。女優としてのひとつの転換期に、母親になっていた。
人は加齢することをどこかで怯えている部分がある。出産など、さまざまな負担がかかってくることによって、見た目に変化が出てしまうからだ。
「シワも経験を示す年輪」
「加齢に争わずに生きたい」
という、着飾ったワードを聞くことがあるけれど賛同するのは……どうだろう? なかなか難しいのではないだろうか。
美しさに加えて、貫禄も備わった無双ぶり
よく著名人が出産後に「変わらない抜群のスタイルで!」と賞賛されることがある。でも彼女は変わらないどころか、加齢を味方に変えて、女としての深みをグッと増していたのは驚きである。一体どんなトレーニングを積んだのだろうか……。
27歳になった彼女には、演技にも貫禄が出ていて、セリフを話す艶っぽい抑揚が3年前よりもリアリティがあった。
「父が金に負けたなら、私は勝ってやるって決めたの。何遍捕まって刑務所に入ったって、最後には勝つ」
ドラマ内では元子の強欲さを感じさせるセリフが随所に出没する。その様子を見ていると、外見は全く違うけれど、逃亡犯のまま刑務所内で死亡した福田和子が浮かんできた。生きるため、金のためなら手段を選ばない二人がぼんやり脳内で重なった。ただきれいなだけではない、人としての毒々しさも備えた演技だからこそ見えた現象かもしれない。
物語の終盤はドタバタしていたけれど、見終わった後には勇気がわいてくる。パンデミックで心も身体も不安定な今、“生きよう”とする想いを剥き出しにしてくる元子。そんな女性を演じている武井咲は本当に美しかった。
けしてPRではないが『黒革の手帖~拐帯行~』は、現在もABEMAにて無料配信されている(1月20日(水)終了予定)。さらに、アマゾンプライムなどでは、4年前に放送された連続ドラマ本編を一挙に見ることができる。実は私も2時間スペシャルを見終えた後に、記憶を掘り起こしたくなり、連続放送版を少しだけチェックした。新旧で見直すと、武井がいかに自分を進化させたのか? を堪能できる。
コロナ禍で外出しづらい今、ぜひおうち時間で美のお勉強をさせていただきましょう。
文:小林久乃
エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。
写真:共同通信社