おもしろ荘優勝の芸人・ダイヤモンドが放つ「異彩」の正体

〈ニュースな動画〉『ダイヤモンドお笑いチャンネル』

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新風を巻き起こすか 

2021年元旦の『ぐるナイおもしろ荘』(日本テレビ系)で優勝したダイヤモンドの野澤輸出と小野竜輔。優勝後は『スッキリ』『シューイチ』(ともに前同)といった朝の情報番組、『ネタパレ』(フジテレビ系)に出演するなど、徐々にテレビの露出が増えている。 

とはいえ、同番組の優勝によってすぐブレークにつながるほど芸能界は甘くない。ブルゾンちえみ with Bは直後に人気が爆発したが、ミルクボーイ、鬼越トマホーク、空気階段など、「今振り返れば出ていた」というメンバーのほうがはるかに多いのだ。

注目すべきは、そうしたメンバーをどこよりも早く「おもしろ荘」が取り上げている点だ。知名度がなくとも、強い個性があればスポットを当てる。ほかのネタ番組と一線を画しているのは、このスタンスによるところが大きいだろう。 

実際、2019年に私が宮下草薙の二人にインタビューしたところ、本来なら観客を入れたライブ形式のオーディションで落ちていたところを、番組スタッフから「でも面白いから」と声が掛かり本番の出演が決まったと聞いたことがある。結果的に3位となり、彼らは徐々にブレークしていった。この事実からも、ネタそのものというよりは「キャラクター」や「芸風」を第一に考えて選んでいることが想像される。 

ダイヤモンドの優勝についても、例外ではないように感じた。では具体的にはどんな魅力があるのか。その要素を一つずつ挙げてみたい。 

YouTube『ダイヤモンドお笑いチャンネル』より

『ごっつええ感じ』を彷彿とさせる笑い

二人が「おもしろ荘」で見せた漫才は、「コーヒーのサイズ」にまつわるネタだった。

小野が「コーヒーショップのサイズを間違えて恥をかいた」と口にすると、野澤が体を使ってコーヒーショップごと異なるサイズ名の覚え方を披露していく。しかし小野は、どの店も「スタバと一緒じゃない?」と納得できない。何度もこのやり取りを繰り返すうち、サイズと関係ない「相撲の番付」にまで発展する、ほのぼの感とシュールさが同居したネタだった。

【公式】ダイヤモンド 漫才『スタバ』/コーヒーのサイズ おもしろ荘で優勝したネタ

想像するに、これは「おもしろ荘」の色に合わせたものだ。というのも、彼らにしてはかなりオーソドックスなネタだからだ。YouTubeチャンネル「ダイヤモンドお笑いチャンネル」に投稿されている過去のネタ動画を見ると、なかなか攻めたスタイルで漫才やコントを披露している。

たとえば「手漫才」は、野澤が「フリ」「ボケ」「ツッコミ」を担い、あらゆる物を手で表現する。隣にいる小野は一言も発することなく、時折、野澤の世界に巻き込まれる立ち位置を演じるのみ。もともと野澤がピンで披露していたネタらしいが、あえて二人で見せるところにセンスを感じる。

【公式】ダイヤモンド 漫才『手漫才』

また、コント「竹ブラジル」は、一人寂しく公園にたたずむ少年(小野)のもとに、知らないおじさん(野澤)がやってきて、シュールな「なぞなぞ」を出していくというものだ。「パンはパンでも食べられないパン なーんだ?」には「竹フライパン」、「ブラジルはブラジルでも旅行できないブラジル なーんだ?」には「竹ブラジル」と、なぜか答えに「竹」が入る。これが飛躍してシュールさを増し、子どもが泣き出してしまうというネタだ。

【公式】ダイヤモンド コント『竹ブラジル』

共通しているのは、「ニュアンス」を核とした笑いだ。ダウンタウン・松本人志、130R・板尾創路にも似た世界観を感じる。『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)のコントや企画を振り返ると、二人の笑わせ方は非常に抽象的だった。

「思春期」では、浜田雅功が自分の部屋で溶接作業を行っているところに母親役のYOUが入ってくる。母親が「いつから一人でコソコソと……」と取り乱すところに、父親の松本が現れて「父さんの頃はこんなものはなかったからなぁ。ずっと想像で溶接してたよ」などと“男同士の会話”を匂わせるというものだ。

また、「シンガーソングライダー板尾創路」では、架空の歌番組の平場で新曲のバックボーンを語り、本番でそのストーリーを彷彿とさせるフレーズをアカペラで歌って笑いを誘った。

ダイヤモンドのネタにも少なからず影響はあるだろう。どのネタにおいても、小野が無表情のまま淡々と言葉を発し、野澤が動いてノリボケ、ノリツッコミを担当している。よくある漫才の形式にとらわれない自由なスタイルが見ていて新鮮だ。

「東西のハイブリッド」の文脈

昨今、関西弁と標準語のコンビが珍しくなくなった。これは、吉本興業のお笑い養成所「NSC」の影響が大きいだろう。

野澤は東京NSC15期、小野は大阪NSC32期。つまり、もともと二人は東と西、別々の拠点で活動をスタートさせている。小野が「奈良県住みます芸人」を辞めて上京後、しばらくは別々のコンビで活動していたものの2017年に結成。東西のハイブリッドではあるが、ネタに東京っぽさを感じるからか違和感がない。

とくに漫才は掛け合いが重要だが、言葉やイントネーションが違っていても成功したコンビはいる。「M-1グランプリ2004」で準優勝した南海キャンディーズを皮切りに、2010年前後に頭角を現したピース、最近ではニューヨークもこれに該当する。

南海キャンディーズ、ピースが活躍した時代、私は標準語と関西弁のやり取りがしっくりこなかった。とはいえ、南海キャンディーズは二人のキャラクターからくる「ファンタジーな世界観」、ピースは「コント調の漫才」という工夫があったことで、言葉の壁を回避していたように思う。

この問題がなくなったのは、さらば青春の光による影響が大きい気がする。彼らは「キングオブコント2012」で準優勝を果たして以降、大きな賞レースで決勝の常連となった。

二人とも大阪出身だが、強烈なキャラクターを前面に押し出すのではなく、構成力や演技力が問われるネタを得意としている。また、饒舌な関西弁の森田に対して、相方の東ブクロは控えめなイメージがある。大阪弁ではあるが、アクの強さは感じないのだ。

つまり、ネタや東ブクロにどことなく東京っぽい雰囲気がすることで、東西のコントラストに見慣れたのではないかというのが私の考えだ。

「M-1グランプリ2020」のニューヨークの漫才を見て、言葉の違和感を覚えた視聴者は少ないだろう。彼らと同期のダイヤモンドは、小野から関西弁が出ることはほとんどない。基本的には標準語で、時折関西弁が出るくらいのバランスで漫才を披露している。

地方出身者で標準語を話す芸人は多いが、この“微妙な関西弁”というのが個人的にすごく新鮮だった。

YouTube動画で感じる芸人らしさ

「ダイヤモンドお笑いチャンネル」は約1年前に開設されている。ネタ動画のほか、ラジオ配信、リモート大喜利やクイズ、芸人仲間の自宅に訪問する企画などジャンルも幅広い。とはいえ、芸人らしいコンテンツを揃えている気もする。

2018年10月にキングコング・梶原雄太が「カジサック」と名乗り、YouTubeチャンネル『カジサックの部屋』を開設して以降、芸能人の参入が爆発的に増加。当時は、YouTuberを意識した企画動画が多く、知名度の高さによって再生数を伸ばす傾向にあった。

その中、2019年1月にニューヨークが「ニューヨーク Official Channel」を開設。「ニューラジオ」と銘打った週1回のラジオ配信を軸に、賞レースに関連した動画、元学生芸人を特集した動画、東京NSCの謎のグループを追ったドキュメンタリー映画「ザ・エレクトリックパレーズ」など、芸人特有のコンテンツを次々と投稿して支持を集めていった。

【生配信】2019.1.27 ニューヨークのニューラジオ #1

画期的だったのは、YouTuberの文脈ではなく、今まで語られることのなかった若手芸人の内情を掘り下げ、お笑いファンの需要に応えたことだ。2020年のコロナ禍の影響もあり、ニューヨークのコンテンツがひと際目立ったのかもしれない。

いずれにしろ、2020年でジワジワと登録者数を増やし、現時点で21万人を突破。彼らのYouTubeチャンネルによって「芸人らしいコンテンツ」の土壌が築かれたといっても過言ではないだろう。

それは、吉本興業に所属する芸人がYouTubeのラジオ番組を「ニューラジオ」(または「ニューラジオ0 (ZERO)」)と名付けていることからも明らかだ。今のところ、ダイタク、ジェラードン、オズワルド、レイザーラモンら12組が毎週、もしくは不定期でラジオ動画を投稿している。

ダイヤモンドも「ニューラジオ0 (ZERO)」を配信する1組だ。芸人同士がつながり、それぞれのYouTubeチャンネルを盛り上げていく。ニューヨークを起点としたものではあるが、この文脈でダイヤモンドのチャンネルから面白いコンテンツが誕生する可能性もあるだろう。

ダイヤモンドのニューラジオ0(ZERO)#1【2020年6月6日(土)】

ネット時代に珍しい「ニュアンス」の笑い

ここ最近で急速に普及した音声SNS「Clubhouse」。意外な著名人同士がつながって盛り上がりを見せる中、芸人たちもユニークな切り口で活用方法を模索しているのが面白い。

レイザーラモンRGは神田伯山の講談を思わせる口調でWikipediaを朗読し、バカリズムは親交の深い後輩・おかゆ太郎の生い立ちをインタビューするのが恒例となっている。

ダイヤモンドの二人も、なかなか興味深いトークをしていた。野澤が同居しているポンループのアミと言い争いをしていたり、小野が富山県住みます芸人・ノビ山本の電波状況を確認するトークルームを立ち上げたりと、独特の関係性によるくすぐり笑いが印象的だった。

今後、こうした「切り口」や「つながりの面白さ」というものが、エンタメの中でより重要性を増すことになるのだろう。 

まさに今起きているお笑い界の多様性を体現しているダイヤモンド。テレビ、ラジオ、YouTube、Clubhouseなど、プラットフォームの傾向や成熟を意識しながら、自分たちの色をアウトプットすることになるはずだ。 

また、「わかりやすさ」が求められるネット時代に、1990年代に浸透した「ニュアンス」の笑いを核とする若手も珍しい。この個性がジワジワと拡張し、新風を巻き起こすことに期待している。

■YouTube『ダイヤモンドお笑いチャンネル』はコチラ

【ロングインタビュー】「ダイヤモンド『地上波じゃ背負えない笑い』の根底に松本人志の影響」はコチラ

  • 鈴木旭

    フリーランスの編集/ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人をリスペクトしている。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」更新中。http://s-akira.jp/

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