松重豊、山田孝之の次は?いま最大の誉め言葉「ザ・テレ東な俳優」

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杉野遥亮、濱田岳…注目株の若手俳優は?

今はドラマ好きの人にとって最も信頼度のアベレージが高いと言っても過言ではない「テレ東深夜ドラマ」。『勇者ヨシヒコ』(2011年)シリーズを筆頭に、低予算を逆手にとって長年アイディアで勝負してきたテレビ東京が、最も時代の空気に合うようになってきたことは、むしろ自然な流れかもしれない。 

ところで、そんな“テレ東的役者”として思い浮かべるのは誰だろうか。『孤独のグルメ』の松重豊や、『湯けむりスナイパー』からテレ東で活躍を続ける遠藤憲一、『デザイナー渋井直人の休日』主演の光石研などを筆頭とした『バイプレイヤーズ』シリーズの面々だろうか。あるいは『勇者ヨシヒコ』シリーズ、『山田孝之の東京都北区赤羽』(2015年)、『山田孝之のカンヌ映画祭』(2017年)の山田孝之か。 

しかし、ここで注目したいのは、現在のテレ東ドラマにとって欠かせない若手俳優たちである。

テレ東で、連続主演中の杉野遥亮。写真は『東京怪奇酒』より ©️「東京怪奇酒」製作委員会

濱田岳

現在、エース筆頭格といえば、濱田岳だろう。他局のゴールデン・プライム枠でも多数出演しているし、32歳で「若手」かどうかは微妙ではあるが、現在のテレ東深夜ドラマにおける重要度を考えると、彼抜きでは語れない。

『アオイホノオ』(2014年)に岡田トシオ役で出演した翌年には、『釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~』(2015年)シリーズで主演。

その印象も強いが、忘れてはいけないのが、彼の主演作でデリヘル業界を描いた『フルーツ宅配便』(2019年)だ。これは『監察医 朝顔』の脚本家でもある根本ノンジの丁寧な取材と構成力と、役者たちが作り上げるリアリティが高く評価され、第45回放送基金賞テレビドラマ番組部門奨励賞を受賞した作品だ。

そして、翌年には『きょうの猫村さん』(2020年)に出演。さらに、サレンダー橋本の漫画を原作とした主演作『働かざる者たち』(2020年)では、様々な年齢・環境・立場の“働かなくなった人たち”の心理や生き方を模索する姿が深く描かれていた。もちろん各話ゲストの存在も大きいが、様々な事情を見聞きするうち「働かないこと」もアリなんじゃないかと考えさせられてしまう揺らぎを担っていたのは、受け手である濱田岳のバランス感覚によるところが大きかっただろう。テレビ賞を受賞したり、もっと大きく話題になったりしても良い秀作だったと思う。

(写真:アフロ)

岡山天音

また、20代のリアル若手でテレ東深夜ドラマにとって欠かせない俳優といえば、岡山天音・26歳を挙げたい。放送局や時間帯を問わず出演本数が非常に多い彼のテレ東デビューは『白虎隊~敗れざる者たち』(2013年)で、翌年には『玉川区役所OF THE DEAD』(2014年)にゲスト出演している。

振り返ってみると、全体の中でテレ東深夜ドラマの出演本数はさほど多くないのだが、光石研主演の『デザイナー渋井直人の休日』(2019年)でいまどきの若者のフラットな態度や温度感をリアルに醸し出していたアシスタント役が、非常に印象的だったことがあるかもしれない。今年に入ってからは『バイプレイヤーズ~』ゲスト出演や、『直ちゃんは小学三年生』『東京怪奇酒』と、テレ東深夜ドラマへの出演が続いている。

芳根京子

意外だと思われそうだが、テレ東深夜枠との相性が非常に良い女優といえば、芳根京子だ。連ドラ初主演作『表参道高校合唱部!』のヒロイン役もいやみのない朝ドラヒロイン的だったし、なにしろ『べっぴんさん』(2016年)の朝ドラヒロインである。しかし、野木亜紀子脚本×山下敦弘監督の『コタキ兄弟と四苦八苦』(2020年)で演じた喫茶店「シャバダバ」の看板娘・さっちゃんが、素晴らしかった。明るいのに、どこか闇がありそうな感じがひっかかると思っていたら、それがコタキ兄弟とのつながりとして見えてくる。非常にプレーンで、明るさと闇の部分とのテンションが変わらないところに、彼女の背負ってきた悲哀が感じられた。

また、南海キャンディーズ・山里亮太の短編小説を原作とし、山里亮太役として仲野太賀が主演を務めるテレビ東京の『あのコの夢を見たんです。』第2話では、RPGの世界に挑戦。小さな診療所に務める医療事務員から勇者に選ばれてしまうヒロインという、同シリーズ史上最も珍妙な役だったが、引きつり笑いがクセの陰キャが、他者の思惑に巻き込まれつつ人気者になっていく変化は見事だった。『バイプレイヤーズ 名脇役の森の100日間』にも出演しているが、もはやすっかりテレ東の顔である。

磯村勇斗

そして、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』(2017年)や、テレビ朝日の『仮面ライダーゴースト』(2015年)、日本テレビの『今日から俺は!!』など、代表作が各局にある超売れっ子の磯村勇斗も、ぜひ「テレ東的役者」に挙げておきたい。各局まんべんなくたくさんの連ドラ&映画に出演し、全く異なる表情を見せている彼だが、強烈に心をつかまれてしまったのは、テレビ東京系『きのう何食べた?』(2019年)で演じた同性愛者の青年「ジルベール」こと井上航だ。

自分にベタ惚れの恋人・大策(山本耕史)の愛を確かめるため、ワガママや気まぐれで振り回しまくり、悪態をつく“ドS”ぶりを発揮する。が、酷い仕打ちを受ければ受けるほど大策は喜ぶ……という、完全に需要と供給のバランスがとれた超絶面白カップルは、一つの理想にも見えた。

いつも変なTシャツを着て、頭もボサボサで、だらしなく寝そべっていても、なんだか可愛い。しかも、作り込まれたあざとい”小悪魔“感でなく、どこまでも自然体で、自由で、うっかり笑ってしまう愛嬌がある。それは磯村がジルベールを表面的なキャラや役割としてとらえているのではなく、”人物“として深く理解していることによって出せる味わいだろう。

(写真:アフロ)

杉野遥亮

そしてもう1人。テレ東によって今まさに開発されまくっているのが、『直ちゃんは小学三年生』『東京怪奇酒』で連続主演中の杉野遥亮だ。前者は、大人たちが全力でリアルな小学三年生に扮して「今」を懸命に生きるブラックユーモアたっぷりの物語。

その中で杉野は、純粋で真っすぐゆえにときどき想像もつかないような直感的な行動をする、子どもらしい子ども・直ちゃんを演じていた。はしゃいでいた直後にシラッとして急に帰ってしまうようなテンションの乱高下ぶりは、あまりにナチュラルだ。しかも、発育が良いことをからかわれた女子に対して、「目立たないように」自分の母親のブラジャーを渡す少しずれた優しさには、めまいがするほどである。しかし、そこにエロの香りが全く漂わない“ガキンチョ”感が出せる成人男性は、少ないのではないか。

大人たちが全力でリアルな小学三年生に扮して「今」を懸命に生きるブラックユーモアたっぷりの物語『直ちゃんは小学三年生』ギャラクシー賞テレビ部門2021年2月度月間賞を受賞 ©️「直ちゃんは小学三年生」製作委員会

また、後者の『東京怪奇酒』は、清野とおるの体験談を描いた同名漫画を原作とし、杉野遥亮が本人役で主演している作品だ。

ホラーが苦手な杉野が原作と同様に、毎回さまざまなゲストから心霊話を聞き、その心霊スポットに行って酒を飲む「怪奇酒」を体験するという内容なのだが、これがコロナ禍において理想的な作品となっている。なにしろ物語の大部分は杉野1人が心霊スポットに行き、酒を飲むシーンで、ソーシャルディスタンスは万全だ。

ただし、これを単調にしないためには、ひたすら一人芝居のスキルが問われるわけで、最初はビビりまくっていた杉野が、恐怖心+酔いによってあっちの世界と「混ざる」快感を得て、徐々に飲み込まれていき、常に「怪奇酒」チャンスを伺っているような危うさすら見せ始める。その開放感に満ちた壊れ方を毎週見せられるのは、テレ東深夜ならでは。

『東京怪奇酒』は毎週金曜日深夜0時52分から放送中(3月26日は、深夜1時07分から)©️「東京怪奇酒」製作委員会

一見クセのない綺麗な顔立ちながら、これまでもMBSの『スカム』や映画『羊とオオカミの恋と殺人』などをはじめダメさ・危なさを見せてきた杉野だが、テレ東によって完全に新しい扉が開かれ、もはや戻れない道を歩み始めているようにも見える。

低予算と深夜という時間帯を最大限に利用し、ゴールデンやプライム枠ではできないグルメや趣味など、ニッチな“個”の世界を「巧い役者の少数精鋭」で作るテレ東のドラマ作りはすっかり定着し、時代のトレンドをリードしている印象すらある。そんなテレ東深夜ドラマを「少数精鋭」で成立させる若手俳優たち。”テレ東的役者“は今では、ある種、最大の誉め言葉だ。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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