日本でも根付いてきた善意!芸能人に学ぶ「寄付文化のあり方」 | FRIDAYデジタル

日本でも根付いてきた善意!芸能人に学ぶ「寄付文化のあり方」

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多額の寄付をしたことで、歌手の浜崎あゆみ、AAAの西島隆弘、元SMAPの中居正広、香取慎吾などが「紺綬褒章」を受けたことが政府官報で発表されたのは2月初旬。 

「紺綬褒章」とは、公益のために国や地方公共団体などに500万円以上寄付した個人や団体を顕彰する制度のこと。中居は東日本大震災などに関して新しい地図が設立したプロジェクトにも寄付していたほか、個人で3000万円ほど寄付していると言われている。 

今回の受賞者には他に、高橋一生、仲間由紀恵などの名前もあるが、ほとんどがSNSなどで自身の寄付について言及しておらず、官報に掲載されたことで、貢献が世の中に徐々に知られるに至った。 

改めて感じるのは、寄付のスタンスや、世間の受け止め方がここ10年ほどで徐々に変わってきていることだ。

(撮影:蓮尾真司)
(撮影:蓮尾真司)

例えば、東日本大震災発生時。GLAYは朝日新聞厚生文化事業団を通じ、2000万円を寄付(2011年3月15日/日刊スポーツ)。DREAMS COME TRUEは緊急支援NGO2団体へそれぞれ500万円ずつ、計1000万円を寄付した(2011年3月16日/ORICON STYLE)。

さらに、5000万円を日本赤十字社に寄付し、大きな称賛を浴びたのは、安室奈美恵だ(2011年3月19日/日刊スポーツ)。しかも、彼女は1995年の阪神・淡路大震災でも多額の寄付を行っていたほか、2001年のアメリカ同時多発テロでも1200万円、2005年のスマトラ沖地震でも1000万円という寄付を行っていたが、いずれも公表を控えていた。

(撮影:結束武郎)
(撮影:結束武郎)

さらに、宇多田ヒカルは日本赤十字社を通じて8000万円の寄付と献血を行ったことが報じられた(2011年3月27日/サンケイスポーツ)。

ただし、安室奈美恵の5000万円あたりを機に、世間は“金額”に注目するようになり、そこから次第にwebメディアなどが「有名人の高額寄付ランキング」を取り上げるようになる。

すると、ネット上では芸能人たちを寄付額で値踏みしては「全く寄付していない芸能人は誰か」「〇〇は稼いでるわりに金額がショボい」「△△は頑張っている」といった話題が盛り上がるようになる。自責の念も込めて、つくづくゲスである。

その一方で、チャリティコンサートなども盛んに行われ、「自分にできるのは歌で元気を届けること」といった姿勢を示すのも、一つの貢献のかたちとなる。

そんな中、所ジョージと共同で被災者の支援団体に共同で1000万円を寄付したビートたけしは、東京スポーツ(2011年3月19日発売号)でこんなコメントを発表。それが“正論”として支持されていた。

「こういう時には『芸人は被災地に笑いを届けることしかできない』なんて意見もあるけどさ、そういうのは戯言でしかないんだよね。メシがちゃんと食えてさ、ゆっくり眠れる場所があって、初めて人間は心から笑えるんじゃないかな」 

(撮影:山田宏次郎)
(撮影:山田宏次郎)

一方、炊き出しなどの行動で貢献した人たちへの称賛も多かった。

たとえば、歌手の小林幸子は無洗米10トンとまんじゅう1万2千個を福島県相馬市内の避難所に寄付(2011年4月6日/デイリースポーツ)。また、はるな愛は、震災のあった3月中に2度、福島に物資を届け、炊き出しも行ったことが話題になった。

さらに「カッコいい」と絶賛されたのは、芸人の江頭2:50。今では大災害がある度に芸能人の炊き出しが多数行われるようになっているが、江頭2:50は東日本大震災の当時、自ら運転した2トントラックで福島入りし、支援物資を届けたことがTwitterの目撃情報によって明らかになっていたのだ。

同様に、今回紺綬褒章を受章した中居正広の場合、東日本大震災でも、2016年の熊本地震でも、各地へプライベートで「お忍び」で炊き出しに行っていたことがTwitterの目撃情報などで明かされていた。しかも、シャイな中居らしく、露出を一切せず、東日本大震災では原発事故の避難所となった学校を訪れた際に「僕が来たということは黙っておいてください」と語っていたことがわかっている。

また、熊本地震の際には、香取をつれ、3度も熊本を訪れている。加えて、ラジオ番組『中居正広ON&ON AIR』では、復興支援のお願いとしてHPで募金の呼びかけを現在も継続中だ。

それに比して、いわれもない批判を浴びる流れになってしまったのが、ジャニーズ事務所だ。

東日本大震災の復興支援として立ち上げた「Marching J」プロジェクトでは、近藤真彦が打ち出した宮城県仙台市・八木山動物公園への「パンダ招致」計画に批判が寄せられた。そうした反応を受け、近藤が「皆さんからの募金はパンダ関係には一切使いません」と明言したが、それにもファンは大いに苦笑し、以来、募金のたびに「自分たちの金がパンダに使われるのではないか」と目を光らせざるを得ない事態となった。

後に大規模災害の被災地で行う「スマイルアッププロジェクト」で炊き出しなど、堅実な支援が行われるようになってからも、お忍びで完全なプライベートで行く中居と比べて、マスコミを引き連れていくジャニーズを「ニュースになること分かってやってるよね、計算高いわ」「「カメラを連れて行かないと出来ないの」と批判する声もあったのは事実だ。

(撮影:川上孝夫)
(撮影:川上孝夫)

海外ではセレブを中心に、当たり前に浸透している寄付。日本においては寄付文化が根付いてこなかったこともあり、本来はごく一部(パンダなど)を除いて立派な行為であるにもかかわらず、それが「売名」「偽善」などと言われがちだったのも、一つの特徴だ。

たとえば、2016年。熊本地震の際、タレントの紗栄子が500万円の寄付をしたことをインスタグラムに投稿。実名での振込明細も掲載し、多くの賞賛の声が上がった一方で、一部では「金額を公表する必要あるのかな」「売名」「偽善」などの批判の声もあがっていた。そこで本人は後日、インスタグラムで「一人でも多くの人が寄付について改めて考えてくださり行動に移してくれたらとの思いで、批判も覚悟の上、実名での振り込み明細を掲載しました」と自身の思いを明かしている。こうした勇気ある意思表示は、「寄付」の意義に一石を投じるきっかけとなっていった。

また、東日本大震災の後、トラック20台分の支援物資を集め、被災地で炊き出しを行った歌手・俳優の杉良太郎が「売名ですか」とメディアに聞かたれた際、「もちろん売名だよ。売名に決まってるじゃないか」「私は今までこれだけのことをやってきました。あなた、私がやってきたこと全部やってから、もういっぺん同じ質問をしてくれますか」と答えたことが話題になった。インパクトの強さゆえに語り草となったが、しかし、その真意は時間をかけて徐々に理解されてきている。

さらに今回、紺綬褒章を受けたX JAPANのYoshikiは、新型コロナウイルスを研究している医療機関に1000万円を寄付。そのうえで、自身のTwitterでこんなツイートをしていた。

「みなさん、寄付は、もし可能なら、公表したほうがいい。(そして一部の批判に耐えられるなら…)そうすることによって寄付先にさらに多くの寄付が集まりさらに多くの人が救われる」

(撮影:西原秀)
(撮影:西原秀)

少数にはなってきたが、今もやはり「売名」「偽善」などの批判はあるだけに、公表せずに寄付を行う有名人は多い。また、サンドウィッチマン斎藤工など、大きなニュースにはならなくとも、長い間寄付を継続している有名人も多数いる。しかし、こうした有名人の行動が、我々一人一人の気づきにつながり、寄付文化の土台作りに寄与してきた面は大きいだろう。

そもそも大きな災害に度々見舞われた2010年代~現在までの約10年。これだけ災害が度々身近にあると、多くの人が「寄付」の必要性を肌で感じる機会が増えていることはあるだろう。

また、寄付の方法そのものも、ネット募金やコンビニ募金、「タイガーマスク現象」などの匿名寄付、NPO経由や、被災していない自治体が被災自治体に代わって行う「代理寄付受付」などなど、様々な広がりを見せている。「寄付文化が根付かない」と言われて久しい日本だが、ここ10年ほどで少しずつでも着実に変化してきている。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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