ずっと見てられるのはなぜ…?「ぼる塾」本当の魅力を分析

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この「どうでもいい」感がたまらない! 『ぼる塾チャンネル』の常習性

今ではすっかり定着した感のある「ずっと見ていられる」というフレーズ。これは、TEAM NACKSなどの”仲良しおじさんたち“や、男子アイドルグループなどに使われがちな表現だ。 

しかし、その「ずっと見ていられる」の最前線、さらに先を行く「つい、ずっと見ちゃう」存在として中毒的魅力を放っているのが、「ぼる塾」のYouTube「ぼる塾チャンネル」である。

実は4人組だったり、芸歴が全然新人じゃなかったり…。知られていないことが多い「ぼる塾」

ぼる塾は言わずと知れた超売れっ子の女芸人グループだが、昨年、「ユーキャン新語・流行語大賞2020」のノミネート30語に「田辺さん」の「まぁねぇ~」が選ばれたときには、「そんなに流行したっけ?」などと巷で言われていた。

2019年に結成するや、すぐにブレイクしたが、実はカルテットで、テレビでよく見かける3人のほかに、産休中で、YouTubeでときどき出演やナレーションを担当しているネタ作成&「ブレーン」担当の酒寄希望(さかよりのぞみ)がいること。

しかも、前身は「あんり」と「はるちゃん」こと「きりやはるか」によるコンビ「しんぼる」と、「田辺さん」こと「田辺智加」と酒寄によるコンビ「猫塾」という別々のコンビで、その二組が合流した際にそれぞれのコンビ名の一部を合わせて「ぼる塾」という名前になったこと。

しかも、あんりときりやは小学校からの幼馴染ということ。「猫塾」は9年目、「しんぼる」も7年目で、実はどちらも芸歴は全然新人じゃないこと。また、あんりときりやが26歳なのに対し、田辺さんだけ11歳上の37歳ということなどなど、まだ知らない人もいるだろう。

なぜなら、テレビで観るぼる塾といえば、田辺さんの「まぁねぇ~」と、イジられたときの返し「はい、出たー。好きな子いじめるタイプー」から始まり、今ではアンタッチャブル山崎や有吉弘行などがあんりをイジリまくり、「お前、また私のこと煮込もうとしてるだろ!?」「お前、すぐ煮込むな!」などと冷静かつ乱暴にツッコむパターンが主流になっているからだ。

もちろんそれはそれで面白い。しかし、短い時間内にお約束のフレーズややりとりをテンポよく盛り込むテレビ的作りとは異なり、ぼる塾の本当の面白さや魅力がわかるのは、先の「ぼる塾動画」である。

【ぼる塾チャンネル】「ぼる塾がポテトチップス(大)を平らげるまで…#1」

動画のメインを占めているのは、カップラーメンや、餃子、いなりずし、グルメカレー弁当、松屋のバターチキンカレー、楽屋の焼肉弁当、各々がコンビニで買ったらしい弁当、ポテトチップス(大)、ファミマスイーツ、タピオカなどなど、ただ何かを食べながら、ひたすらダラダラしゃべるだけというもの。

しかも、コロナ禍においては、ソーシャルディスタンスを保って座っていたり、間にアクリル板を立てたりしながら、やっぱりひたすら食べて喋っている。

その話題がまた、この上なくどうでも良い。例えば、マクドナルドのポテトを食べながら、不意に「カリカリが好きか、しなしなが好きか」と田辺さんが問いかけ、あんりがそれぞれの魅力があると答えると、そこで田辺さんの温度が急上昇。あんりと意気投合して「結局のところどちらも正解」「なぜならどちらも芋だから!」などと熱弁を振るい始める。その間、ひたすら黙々と食べているきりやは、ビックリするほど何も聞いていない……なんてことがザラだ。

また、あるときは、ケンタッキーフライドチキンのポテトの塩について、田辺さんが「ただの塩じゃないの!」と力説。あんりが「塩な気がするけどなあ」と首を傾げ、やはり黙々と食べ続けていたきりやがあまり興味無さそうに「そのことに気づくのはすごいよね」と答える(※実際にただの塩なのかどうかは不明)。

【ぼる塾チャンネル】「ポテトはシナシナかカリカリか、正解はこちら…」

テレビではポンコツ扱いされがちな田辺さんだが、食べ物に対する執着心や愛は尋常じゃなく、『今夜くらべてみました』(2020年12月23日放送)に「芸能界最強スイーツ女子」として登場した回は大評判に。また、雑誌の企画でも著名なパティシエやフードジャーナリストなどと並んでお勧めスイーツの紹介などをしている。

仕事につなげるために特技を磨いたタイプや、特徴を作るために始めた趣味とは大きく異なり、田辺さんの場合、実際に自分の嗅覚で気になったものを全部購入して食べ続けている。あんりいわく「食ってきた数が違う」のだ。何より美しいのは、有名店や有名シェフ・パティシエなどの名前から入るわけではなく、全国の名店の銘菓などとコンビニの数百円のものとを差別せず、それぞれに愛情を注いでいること。

先述のマックのポテトの「カリカリ・しなしな問題」のような大手チェーンの数百円のジャンクフードなどにも猛烈な熱量を注ぐし、「ファミマのサラダは野菜が多いから、ドレッシングを二個買いする」というような、小さいながらも強烈なこだわりを持っている。ちなみに、2021年の目標は「食べ物に妥協しない」だ。

しかも、「お笑い」の話には興味がなく、ほとんどのってこないのに、食べ物の話になると、その場で立ち上がって力説するほどの露骨な温度差を見せる。それでいて、お笑いの神に一番愛されているというのが、なんともおかしい。また、ファンと公言している亀梨和也とテーマパークに行った夢を「夢占い」で調べるような「乙女」感も多々ある。

そうした田辺さん劇場に対し、あんりは切れ味鋭いツッコミを入れていそうに見えて、YouTubeでは理解者になっている部分もあるし、リスペクトもあるように見え、視聴者にわかりやすいよう説明・補足することもある。また、田辺さんとは「食べ放題仲間」という微笑ましい関係でもある。

また、意外なことに、彼氏がこれまでいたことがないあんりが、「束縛する男をどう思うか」という話題で、「お互いに恋愛だけ。自分だけで満足できると思うのか?」と強く正論を主張。それに対して、異性との交際経験がある二人が先輩的立ち入りになるような展開もあり、挙句、あんりが「エア彼氏」のシミュレーションでネタ作りに入っていくような、ある種普通の芸人的動画もある。

ちなみに、マイペースで黙々と食べ続けていて、口数が少なく見えるきりやが実は一番クレイジーで毒舌で、時折、ネタ作りの中で田辺さんに対するツッコミとして「どうみても40(歳)いってるだろ!」と言ったり、あんりを「豚王子」、田辺さんを「豚姫」と言ったりすることもある。小学生の頃からの幼馴染であるあんりは、そんなきりやのかわし方がうまいが、田辺さんはときどきやっつけられている。

【ぼる塾チャンネル】「はるちゃんと田辺さん~同居開始編~」

にもかかわらず、最近の動画で面白いのは、「唯一の常識人」に見えるあんりを除いた2人、田辺さんときりやで同居を始めたこと。

2人の動画は、どちらも声をはらず、ぼそぼそ喋り、とにかくよく笑う。

話題は「一人暮らしすごい」「上京してくる人たち、すごい」というもので、37歳にして初めて親元を離れて暮らす田辺さんがしみじみ語った「生きてくってことはお金がかかることなんだね」は、『魔女の宅急便』のキキ(13歳)が語っていたことと同じで、「20年後に気づいた」という点でも2人は爆笑する。

喋っていることのほとんどがたいした内容がなく、「食べ物」を中心とした日常生活の小さなこだわりばかり。実はコロナ禍以降に、“楽しい世捨て人”感を漂わせている『有吉マツコ のかりそめ天国』にも少し似た空気がある。

その一方で、彼女らのやりとりを見ると思いだすのは、中学生時代の部活の帰り道や、部活引退後の夏休みや、時間を持て余して教室に残り、ダラダラと意味のないことを喋って笑った放課後の時間だ。「リア充」などというものがほぼ存在しなかった昔の田舎の中学生たちの、果てしなく非生産的で非合理的で、どこまでも長くて退屈で、でもいつまででも続けていられるおしゃべり。

そんな日々を「ぼる塾」に見る気がして、コロナ禍で友人などに長く会えない現状もあって、ついつい懐かしく、微笑ましく、彼女らが愛おしく、ずっと見てしまうのだ。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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