有村架純、山田裕貴…「人見知り俳優」の演技が心に響くワケ | FRIDAYデジタル

有村架純、山田裕貴…「人見知り俳優」の演技が心に響くワケ

  • Facebook シェアボタン
  • X(旧Twitter) シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン

自身の殻を破って、内に秘めた熱い情熱が溢れ出す… 

NHK大河ドラマ『青天を衝け』で主演中の吉沢亮、フジテレビの月9ドラマ『イチケイのカラス』に出演中の黒木華、 1月期は『ここは今から倫理です。』主演、『青のSP-学校内警察・嶋田隆平-』(KTV)出演、フジテレビの月9ドラマ『監察医 朝顔』ゲスト出演を経て、4月期は『特捜9 season4』(テレビ朝日系)に出演と、まさしく引っ張りだこの売れっ子・山田裕貴。 

今年1月より、『ポーの一族』で以前から夢だと語っていたミュージカルに初挑戦したほか、『いいね光源氏くん』し~ずん2(6月7日より/NHK総合)が発表されたばかりの千葉雄大。 

NHK連続テレビ小説『エール』に主演していた窪田正孝。昨年10月期ドラマ『姉ちゃんの恋人』に主演し、4月期ドラマ『コントが始まる』(日本テレビ系)に出演する有村架純。その有村とNHK連続テレビ小説『ひよっこ』で共演、Huluオリジナルの究極のワンシチュエーションドラマ『THE LIMIT』出演中の泉澤祐。 

『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ系)に出演していた浜辺美波。今年はドラマ『あなたのそばで明日が笑う』(NHK総合)に出演していたものの、映画を主軸に活動しており、ドラマで観られるときにはかなり得をした気分になる俳優・池松壮亮。他に、奈緒も、高杉真宙も、松本穂香などなど……。 

ここに挙げた錚々たる顔ぶれに共通していることとは? タイトルですでにネタバレしていて恐縮だが、全員が「人見知り」である。

(写真:アフロ)
(写真:アフロ)

俳優をやってなかったら「人と関わらない仕事を…」

たとえば、吉沢亮の場合、「極度の人見知りで打ち解けるまでに時間がかかる」そうで、1クールのドラマ内で一言も話さず挨拶しかできなかった共演者がいたことを『おしゃれイズム』(2018年4月1日/日本テレビ系)に出演した際、語っていた。

また、黒木華は高校時代から演劇部で芝居漬けの日々を送り、大学在学中の野田秀樹取材のワークショップのオーディションに合格、NODA・MAP公演に出演しているが、「人見知りなので、あんまり人前に立つことが好きではなくて……。でも、お芝居をしていると褒めてくれたり見てくれる人がいて、舞台の上は自分がいてもいい空間だと思えたんです」とインタビューで語っている(東洋経済ON LINE 2015年10月16日)。

また、山田裕貴も数々のインタビューで「人見知り」だったことを語っているし、窪田正孝も同様で、「uno新CM発表会」(2016年3月)では「俳優やってなかったら」という質問に対し、「人見知りだから、人と関わらない仕事を」という理由で「整備士」を挙げていたくらいである。

喋りがかなり達者で面白いイメージのある千葉雄大も、もともとは人見知りで、『川柳居酒屋なつみ』(2019年10月15日放送/テレビ朝日系)に出演したときには、「猫かぶってる」と言われることについて「このトシになって言うのも恥ずかしいんですけど、やっぱり学生時代からの人見知りがやっぱり抜けなくって」と明かしていた。以前、インタビューした際には、「変わらないこと」として「人見知りな性格」を挙げ、「インタビューでも1聞かれたら0.5返せる程度」だったことを語っていた。

おとなしいとよく言われる有村架純も、インタビューにおいて、人前に出る仕事を続けていくうえで克服しなければいけないのが人見知りだと語っている(2014年10月3日号『週刊朝日』)。

子役時代から活躍している池松壮亮の場合、もともとはプロ野球選手になりたかったが、「人見知りが直れば」と、両親がミュージカルのオーディションを受けさせたことから、芸能界入りしたことを黒木華との対談で語っているのが印象的だった(「キボウノアシタ」スペシャル対談vol.11)。

また、同じく子役時代から仕事をしている浜辺美波は、人見知りのために美容師にうまくオーダーができないという悩みを『バゲット』(2020年3月10日/日本テレビ系)出演時に語ったのが、話題になっていた。美容師が右側の髪を切って、別の客の会計をしてから戻ってきて左側も切ったと思い込んでいたことがあっても、「私、(左側を)切ってないですよと言えなくて」「前髪もちょっとえぐれてるみたいな」状態で現場に行き、すごく怒られるという重症度である。

泉澤祐希も未就学児の頃から活躍している若きベテラン俳優だが、もともと人見知りで、引っ込み思案で「授業で教科書を読むこととか、すごく苦手だったし……。順番がせまってくるじゃないですか。1小節読むのもドキドキしちゃって、いつも声が震えて(笑)」とルーツを語っていたことがある(『大河ドラマ読本』洋泉社)。

「人見知り」ならではの観察力が演技に生かされる?

ここに挙げた俳優の半数以上にインタビューしたことがあるが、インタビューのときには「仕事」としてスイッチを入れているため、もともとフレンドリーな印象の方も一部にはいる。また、そもそも番組宣伝でテレビ番組に出たり、インタビューを受けたりするが多いことから、シンプルに「慣れる」こともあるだろう。

しかし、共通しているのは、一見物静かで口数が少なく、人との壁がある印象があっても、「作品のこと・役柄のこと」になると、生き生きと饒舌になる方が多いということ。台本を深く読み込み、人物を、行間の意味を、深く理解する。黙々と行われるそうした作業に、楽しみや充実感を見出す人が多いということは言えるだろう。 

それに、「引っ込み思案」や「人見知り」の人は、グイグイと接近せず、対象物と距離をはかりつつ、眺めたり観察したりする。引いた位置から全体を見ることで、得られる情報量が増えるため、そうした観察力が演技に生かされることもあるだろう。

また、黒木華が「自己表現が苦手なので、逆にお芝居だと素直に感情表現ができる」と先のインタビュー内で語っていたように、“自分じゃない誰か”になるほうが、日頃自身の中に閉じ込めている様々な感情・情熱を表現しやすいという点もあるだろう。

そうした感性は、「作品」「役柄」に触れることで刺激され、自然と感情が引き出されるケースもある。

たとえば、先の泉澤はインタビューの中で、「役の気持ちになると『かわいそうだなあ』と思って自然に泣ける」と語り、『白夜行』(2006年/TBS系)で主人公・山田孝之の少年時代を演じた際には、「オーディションのときに台本を読んだだけで泣いちゃったくらい」と語っていた。

面白いのは、吉沢亮を取材したとき。普通のグラビア撮影時よりも、カメラマンが「設定」を伝えた途端に表情が一変、様々な顔や仕草が次々と生まれていった。単にカメラの前でポーズをとるのではなく、「設定」があることで”自分じゃない誰か“になれる。そこで「芝居」のアイディアがどんどん広がり、セリフは一つもない静止画が、物語や作品となっていく。根っからの役者なのだということを痛感させられる光景だった。

「人見知り」俳優は、基本的にシャイで、表面的には物静かだが、内に秘めた熱い情熱があったり、脳内は実は非常にお喋りだったりする人が多い印象もある。そうした優れた観察力と豊かな想像力とが、何か「役」を演じることによって、自身の殻を破って溢れ出すからこそ、観る人の心を強く揺さぶるのだろう。 

そんなわけで、いつも思うのは、「人見知り俳優」ばかりが集まった作品をぜひ一度観てみたいということなのだ。

  • 田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

Photo Gallery5

FRIDAYの最新情報をGET!

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事