大谷翔平「激変! 投打フォーム改良で二刀流完成」
筑波大学・川村卓准教授が分析 40本後半ホームラン王と 15勝で最多勝の投打2冠達成も可能
打撃フォーム比較 ポイントは「下から上へ」の成果


シーズン序盤に起きた夢のような出来事――。
メジャーリーグ公式サイトが、エンゼルス・大谷翔平(26)の”リアル二刀流”をこう絶賛した。大谷は、5月6日(日本時間)のレイズ戦で先発投手として5回を投げ無失点。打っては打率.264、9本塁打、22打点(同日現在)とア・リーグ上位の数字だ。ロイヤルズなどで投手として活躍した元日本人メジャーリーガー、マック鈴木氏は、投打でのタイトル2冠獲得を期待する。
「昨年、右ヒジを故障したにもかかわらず、これだけの結果を残せるんです。ケガさえなければ、少なくとも35本塁打。うまくいけば40本台後半で、本塁打王の可能性もあります。投手としては15勝は期待でき、最多勝争いに絡むのではないか」
今季の大谷は’18年のメジャー移籍以来、最高のパフォーマンスを続けている。何が改善されたのか。専門家のフォーム分析から、驚きの事実がわかった。
「今季の大谷選手は、理論上ではムチャクチャな打撃スイングをしています。バットを、下から上に振り上げているんです。重力に逆らった軌道ですよ」
解説するのは、スポーツ科学が専門の筑波大学体育系准教授・川村卓(たかし)氏だ。
上の「打撃フォーム比較」写真をご覧いただきたい。上段が今季、下段が’18年時のスイングだ。まず今季から。起動では左ヒジの位置が肩より上にあり(上段写真①)、右ヒジを曲げ(②)、下から上に向けスイング。最後のフォロースルーでは、大きく振りぬいている(④)。
一方、’18年は起動でヒジが肩と同じ高さにあり(下段①)、右ヒジが伸びたレベルスイング(地面と平行な振り。②)。フィニッシュも、コンパクトなイメージだ(④)。川村氏が続ける。
「レベルスイングだとボールをミートしやすいですが、打球も水平に飛ぶので飛距離は出にくい。今季の大谷のように下から叩けば、ボールはより遠くに飛ぶでしょう。ただ上下の動きが激しいスイングなので、フィジカルがしっかりしていないとフォームが乱れてしまいます」
今季の大谷は、左脚でしっかり身体を支え振り負けていない(上段③)。
「体幹トレーニングを積み、パワーが増したのでしょう。今季のスイングなら、打球を30度の角度で飛ばせる。本塁打になる理想の角度です。中距離打者から、ホームラン打者にシフトしたと言えます」
投球フォーム比較 ポイントは「脱・沈み込み」
ピッチングで改善されたのは、身体の沈み込みが無くなったことだ。上の「投球フォーム比較」を見ると、’18年は胸のロゴが一度下がっている(下段①~③)。
「以前は、体重移動に課題があるなと感じました。身体を沈ませてから、ステップしていたんです。これでは下半身がうまく使えず、上半身に頼らざるをえない。今季は、その課題を克服しています(ロゴの位置が沈まず一定。上段①~③)。投打に、ここまで完璧なフォームができるのは、メジャーでも大谷くらいでしょう」
フォーム改善で、二刀流を完成させた大谷。今季は「夢のような出来事」で、日米のファンを魅了し続けそうだ。
『FRIDAY』2021年5月7日・14日号より
写真:共同通信社