連続3時間半!tvk日曜夜が「昭和のアニメ天国」になっている訳
7タイトルぶっ続け!
今年4月下旬より、テレビ神奈川(tvk)が日曜夜になんとも大胆不敵な番組構成をしていることが、SNSなどで話題になっている。
日曜20時から『ガラスの仮面』『キャプテン』『らんま1/2』『北斗の拳』『スラムダンク』『銀河鉄道999』『機動戦士Zガンダム』と3時間半にわたり、毎週アニメ番組、それも1980年代を中心としたアニメをぶっ続けで放送しているのだ。
小学生の頃、毎日夜7時台や8時台にアニメが放送されていた時代を知るアラフィフ世代の自分などからすると、まるで子どもの頃に戻ったようなラインナップで、「お風呂にいつ入れって言うんだ!?」と妙な逆ギレをしそうになるほどの夢のような編成である。
大胆不敵な番組構成の経緯
tvk、なぜこんなすごいことになっているのか。その問いに対して、番組編成の三浦絢也氏がこんな回答をくれた。
「まず2020年10月改編の編成で22時30分に『スラムダンク』、23時に『銀河鉄道999』、23時30分に『機動戦士ガンダム』という流れを作ったんですね。
それがSNSを含めて非常に高評価をいただいていたんです。
実はそれまで日曜20時から22時までは映画を流していたんですが、インパクト的にいまひとつだったのに対し、在京のキー局さんを見ると、裏がすごく強いんですよ。NHK大河ドラマに、『世界の果てまでイッテQ!』、TBS『日曜劇場』があるわけですから。
だったら、それに属さない人をターゲットにするには、何が良いかと。さらに、今のご時世において、強いコンテンツは、見逃し配信や録画で都合の良い時間にしっかり観る人も多い。そうした背景があり、リアルタイムでザッピングして見ている人を、tvkに引き留めるのもひとつの戦略だと思っていて。
それで、ザッピングで観るのにちょうど良いのは何か、強力な裏番組に左右されないのは何かと考えたときに思いついたのが、アニメでした。
さらにインパクトを与えるにはどうするかという点で、賛否はありましたが、2時間分の枠を全部アニメで積んでしまおうということになったんです」
コロナ禍に撮影がストップしてしまったことで、昔のドラマの再放送がたくさん放送され、好評だったが、実はtvkの「昔のアニメ三昧」の流れは、コロナ以前にスタートしていた。
「2017年くらいから23時に『シティーハンター』を放送し、これがまずまず好評で。
さらに、2020年1月から23時枠で『新世紀エヴァンゲリオン』を放送したんですが、これは本来、映画が昨年夏に公開予定だったことを見込んで、そのまま映画に突入する流れを作るつもりだったんです。ただ、コロナ禍の影響で映画が公開延期となり、アテが外れたわけですが、放送自体は非常に高評価で。
ガンダムに関しては横浜という地域柄ならではですが、GUNDAM FACTORY YOKOHAMAのオープンが昨年予定されていたので、2020年4月に23時30分に編成しました。
そこで『新世紀エヴァンゲリオン』『機動戦士ガンダム』の流れができ、『スラムダンク』も2020年1月に、当初は金曜夜に放送できることになったんですよ。
でも、せっかくだからということで、日曜夜に引っ越して、まずスラムダンク、エヴァ、ガンダムの3つの並びができました」
そして『新世紀エヴァンゲリオン』終了後には、『銀河鉄道999』がスタート。正直、これら3作品連続だけでも強いのに、今年4月25日からは、その前の時間帯で2時間分・4作品を積んでしまうのだから、かなりクレイジーである。
「編成部の中で4本積もうという話になり、どの作品にするか話し合ったわけですが、僕自身の希望で編成されたものは、『キャプテン』と『北斗の拳』なんですよ(笑)。
僕はその他に『週刊少年ジャンプ』黄金期の別の作品を2つ挙げていたんですが、女性の担当から挙がってきたのが『ガラスの仮面』でした。
正直、僕は『ガラスの仮面』で良いのか半信半疑だったんですが、家に帰って妻(40代)に話すと大喜びで(笑)。
さらに、同じく女性の担当者から高橋留美子作品が挙がり、『うる星やつら』のほうがキャッチーで良いんじゃないかという声もあったんですが、『らんま1/2』のほうが久しく関東局でアニメをやっていないんじゃないかということが決め手になりました」
80年代アニメ作品で固めた理由
それにしても、『銀河鉄道999』は1970年代後半、『スラムダンク』は1990年代前半と少し時期はズレるが、主に80年代アニメで固めたのは何故なのか。
「やはり当時『機動戦士ガンダム』が非常に好評だったことは大きいです。現在放送中の『機動戦士Zガンダム』も多くの反響をいただいております。
そこから40~50代の層を狙っていこうということで『銀河鉄道999』を選び、『スラムダンク』は若干新しいですが、80年代アニメを観ている層であれば『週刊少年ジャンプ』黄金期の最後のほうも抵抗がないだろうと」
さらに、40~50代をターゲットにしたことには、もう一つ意外な理由もあった。
「昨年、コロナ禍で横浜DeNAベイスターズの野球中継がなくなったことで、『プレイバック!横浜DeNAベイスターズ熱烈LIVE』として、過去の名試合に実況を加えて生放送したんです。
そのときにベイスターズの今の監督・三浦大輔さんの引退試合の放送が話題となり、Twitterのトレンド1位になって。
この番組の視聴者層って、いわゆる若者ではなく、中高年なんですよ。
そもそもSNSは若者のものというイメージを持たれがちですが、それにはちょっと懐疑的で。人口分布から考えても、SNSでバズを起こすのは中高年層なんじゃないかと思うんです。
だったら、その40~50代に刺さるコンテンツは何かということでアニメをやってみたら好評だったという経緯もあります」
ところで、わが家では、tvkの日曜夜のアニメ枠を、テレビ朝日の日曜朝の特撮枠“ニチアサ”に引っ掛けて、勝手に「ニチヨル」と呼んでいるのだが、正式名称はあるのだろうか。
「実は名前はないんです。認知が増してブランド化できれば、名前もつけたいと思っていますが、むしろそれは僕たちが決めるよりもSNSの投稿者の方などから自然発生的に出てきたら最高ですよね。
今のところSNSでは、『tvkアニメチャレンジ』『tvkアニメマラソン』などとタグ付けされていますが、こういう名付けなどがさらに広がり、盛り上がっていくと嬉しいです」
さらに、今後については、こんな展望を語ってくれた。
「実は『スラムダンク』の話数が、残り半年分を切ったので、次はどうするか迷っています。
もちろん権利関係などもあるので、必ずしも実現するかはわかりませんが、もし『この作品をやって欲しい』などのリクエストがありましたら、SNSなどで【#tvkアニメ 】をつけてコメントいただけると嬉しいです。
あるいは、アニメが今好調ですが、必ずしもアニメじゃなくても良いとも思っています。昨年から平日夜7時台で、ドロドロ系昼ドラの『牡丹と薔薇』や、『あぶない刑事』などを放送しているんですが、昔のドラマでも特撮でも良いので、40~50代にバズを起こすコンテンツは今後も力を入れていきたいですね」
- 取材・文:田幸和歌子
ライター
1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマに関するコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。