家庭内で、お店で!「第三次レモンサワーブーム」発生の舞台裏 | FRIDAYデジタル

家庭内で、お店で!「第三次レモンサワーブーム」発生の舞台裏

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全卓に「サワーサーバーを設置」した焼肉酒場が急成長中!

レモンサワーの勢いが凄まじい。現在、アルコール売り場の棚がレモンサワーで埋め尽くされているスーパーマーケットやコンビニエンスストアも珍しくない。 

実際、サントリースピリッツ株式会社が行った、RTDに関する消費者飲用実態調査によると、2020年のRTD市場は前年比で112%成長し、過去最大規模となった。RTDとは、「Ready To Drink」の略で、レモンサワーを含むふたを開けてすぐに飲めるドリンクを指す。RTD市場は13年連続で伸長しており、現在、レモンサワーがその市場を牽引しているといって過言ではない。

そもそも今のレモンサワーブームは「第三次ブーム」と呼ばれている。ブームの流れについては諸説あるが、第一次ブームが1980年頃、第二次ブームが2010年頃、そして現在が第三次ブームに当たる。

現在、家庭を中心に起きている第三次レモンサワーブーム。スーパーやコンビニでも「レモンサワー」が売れており、コロナ禍で業績が悪化しているビールメーカーの売上を支えるまでの存在となっている
現在、家庭を中心に起きている第三次レモンサワーブーム。スーパーやコンビニでも「レモンサワー」が売れており、コロナ禍で業績が悪化しているビールメーカーの売上を支えるまでの存在となっている

レモンサワーの起源

もともとレモンサワーは中目黒の「もつやき ばん」で誕生したメニューだと言われている。その昔、焼酎を炭酸で割った「タンチュー」と呼ばれるドリンクがあった。それを「サワー」と名付け、レモンをいれて「レモンサワー」として売り出したのがばんの創業者、小杉正氏に他ならない。およそ1960年代の半ば頃の出来事だ。

その後、レモンサワーは居酒屋チェーンの拡大と共に市場を席巻していく。その中心にいたのが「養老乃瀧」「つぼ八」「村さ来」から成る「居酒屋御三家」だ。特に「村さ来」はさまざまな「酎ハイ」の提供に力を入れ、第一次レモンサワーの中で重要な役割を果たす。

なお、「ばん」は中目黒駅の再開発で2004年に閉店したが、2014年10月に小杉正氏の監修下で「もつ焼き ばん」として復活し、今なお多くのファンに愛されている。

第二次ブームは2010年頃から起こった。その頃、ダンス&ボーカルグループのEXILEがライブの打ち上げで、文字通りレモンサワーを浴びるほど飲んでいたことで一躍脚光を浴びた。彼らの本拠地がレモンサワーの発祥の地、中目黒である点も見逃せない。

一方で、同じ頃、昔懐かしい大衆酒場に新たなエッセンスを加えた酒場が続々と誕生し出した。こうした酒場が誕生した背景にはさまざまな理由がある。長引くデフレ下で安価な酒場が求められたことはもちろん、東日本大震災で人との絆が見直されたり、レトロブームが起きたりしたことなどがきっかけとなり、多くの新しいタイプの酒場が誕生した。

そうした酒場のアイコンとしての役割を果たしたのがレモンサワーだ。事実、各店がそれぞれ趣向を凝らした新しいレモンサワーを開発し、メニューのメインに置く。その提案が店のターゲットである若者たちに刺さり、第二次ブームが巻き起こった。

そして、現在起きているのが第三次ブームだ。これまでのブームと決定的に異なるのが店ではなく、家庭で起きているということだ。コロナ禍で飲食店の営業自粛が求められているだけでなく、2020年10月の酒税法の改正や健康意識の高まり、若者のビール離れなどを受けて、アルコール飲料各社がさまざまな商品をリリースしている。

実際、サントリーの「こだわり酒場のレモンサワー」や、キリンビールの 「麒麟特製レモンサワー」、アサヒビールの「アサヒ贅沢搾りレモン」、サッポロビールの「濃いめのレモンサワー」と、大手ビールメーカーが積極的に商品を販売している。そして2018年5月には日本コカ・コーラが「檸檬堂」を九州限定で先行リリースし、同年10月からは全国展開を開始。

コカ・コーラ社として、初めてアルコール飲料の発売に踏み切り、市場に驚きを与えた。こうした要因もあり、家庭用レモンサワーの競争は激しく、各社がしのぎを削っている。

家飲みニーズの高まりもあり、レモンサワーの人気は拡大している。そうした市場の動きを受けて、各社が続々とレモンサワーの新商品を投入。商品の裾野が広がることで、また新たなファンが生まれるという好循環が生まれている
家飲みニーズの高まりもあり、レモンサワーの人気は拡大している。そうした市場の動きを受けて、各社が続々とレモンサワーの新商品を投入。商品の裾野が広がることで、また新たなファンが生まれるという好循環が生まれている
ここ最近、付加価値を付けた商品も多くなっている。ノンアルコール飲料に付加価値を付けて販売するのはなかなか難しい。しかし、レモンサワーならさまざまな切り口があるので、さらに付加価値を付けた商品も開発可能だ(写真は、「麒麟 発酵レモンサワー」CMより)
ここ最近、付加価値を付けた商品も多くなっている。ノンアルコール飲料に付加価値を付けて販売するのはなかなか難しい。しかし、レモンサワーならさまざまな切り口があるので、さらに付加価値を付けた商品も開発可能だ(写真は、「麒麟 発酵レモンサワー」CMより)

各社の2020年の施策 

2020年も、各社が積極的に新商品のリリースを行い、概ね好成績を残した。

例えば、キリンビールは2020年10月に「麹レモンサワー」を発売すると爆発的な人気を博し、38万箱の年間目標を大きく上回り、2カ月で112万箱を売り上げた。また、同じく2020年10月に発売した「氷結 無糖レモン」も好調で、67万箱の当初目標を軽々クリアし、186万箱も売れた。2020年度、キリンビールの缶チューハイを含むRTDの売上は12.3%成長している。ビール、発泡酒、新ジャンルの「ビール類計」が−4.5%だったことを考えると、大きな伸びといって過言ではない。

一方で、ビール類シェアで、キリンビールと熾烈な争いを続けているアサヒビールもRTDに力を注ぐ。アサヒビールのビール類以外のカテゴリーは、洋酒、ワイン、焼酎がマイナス成長だったが、RTDは前年比101.8%の成長を記録。2021年度は「ザ・レモンクラフト」「樽ハイ倶楽部」「贅沢搾り」の3ブランドに注力し、さらなる市場の拡大を狙う。

また、サッポロビールは、2019年に5年の開発期間をかけてリリースした「レモン・ザ・リッチ」を2021年2月にリニューアルし、2021年度のRTDの売上で前期比22%の成長を目指す。

今後、酒税は2023年10月、2026年10月にも上がる予定で、最終的には「ビール」「発泡酒」「新ジャンル」の分類が統合される。その結果、チューハイなども2026年10月に7円増税となり、35円になるが、それでも一人勝ちの状況が続く。

現在、キリンビールの「麒麟 発酵レモンサワー」など、高付加価値なアイテムの売れ行きも好調だ。レモンサワーをはじめとする多くのチューハイの価格が100〜110円のところ、発酵レモンサワーは40円ほど高い価格で売れている。こうした商品がビールメーカーの新たな収益の柱となり、第三次レモンサワーブームをより盛り上げていく。

「0秒レモンサワー 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」は、巨大ターミナル駅はもちろん、首都圏を中心とした鉄道路線の中核都市にも展開している。現在、数時間待ちになる店があるほど、大きな人気を集めている。まだまだ出店する余地は残っており、同ブランドの快進撃は続く
「0秒レモンサワー 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」は、巨大ターミナル駅はもちろん、首都圏を中心とした鉄道路線の中核都市にも展開している。現在、数時間待ちになる店があるほど、大きな人気を集めている。まだまだ出店する余地は残っており、同ブランドの快進撃は続く

まだまだ続くレモンサワーブーム 

家庭を中心に広がる第三次レモンサワーブームだが、コロナ禍で厳しい経営環境に置かれている居酒屋でも確実にブームの波が広がっている。数年前、ハイボールがブームになったときは、まず居酒屋で人気に火が付いて、その後家庭での定番表品となった。今回、それとは逆の流れが起きようとしているのだ。その流れを牽引しそうなのがGOSSO株式会社の運営する「0秒レモンサワー 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」だ。

同店のなによりの特徴が全卓にサワーサーバーを設置した点だ。文字通り0秒でレモンサワーをつくれる演出はもちろん、60分500円飲み放題という安さや、仙台発祥の塩ホルモンなどの提案が受けて、若者を中心に絶大な人気を博す。2020年だけでも8店舗の新規出店を実現させ、その勢いは21年も衰えることをしらない。1月に3店舗をオープンさせると、2月に1店舗、3月に3店舗、4月に2店舗とコロナ禍でも快進撃を続けている。

同店の標準モデルは25坪で60席、卓数は18だ。現在、一席あたり50万円稼ぎ出し、月商にすると900万円を超える店が続出しているから驚きだ。焼き肉業界の中でも空白のマーケットの客単価3000円を狙った点や、コロナ禍に合わせて90分制を採用したことなども功をそうしている。

それでもコロナ禍でなかなか思うような経営ができていない。同店の大きな売りがスタッフと客や、客同士のコミュニケーションだ。隣の席に座った客同士が仲良くなり、二次会に一緒に行く光景も珍しくない。だからこそ、コロナ禍以降、ときわ亭はもっと大きな人気を獲得するだろう。

コロナ禍で起きている第三次レモンサワーブームが、アフターコロナでも続いていく可能性は高い。

  • 取材・文三輪大輔

    フードジャーナリスト。1982年生まれ、福岡県出身。2007年法政大学経済学部卒業。歓楽街情報誌や放射線技師専門誌、歯科衛生士求人誌などを経て、2014年に独立。外食業界を中心に取材活動を行い、2019年7月からは「月刊飲食店経営」の副編集長を務める。

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