選挙区が同じ小川議員に聞く「平井大臣の一連の騒動に思うこと」 | FRIDAYデジタル

選挙区が同じ小川議員に聞く「平井大臣の一連の騒動に思うこと」

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「デジタル庁はNECには死んでも発注しないんで。脅しておいた方がいいよ」「徹底的に干す」などの発言が、朝日新聞デジタル(6月11日)で「音声付き」で報じられた平井卓也デジタル改革担当大臣。さらに、文春オンライン(6月16日)では、親密企業の参入を指示した新音声を入手したとして、官製談合防止法違反の疑いを報じている。 

そもそも平井大臣が全国的に注目されたのは、「検察庁法改正案」をめぐる2020年5月13日の衆院内閣委員会での審議中に「ワニ動画」を見ていたこと。9月に発足した新内閣では菅義偉首相肝いりのデジタル改革担当大臣になり、さらに「デジタル改革担当大臣」でありながら「アナログに脅す」という様々な矛盾を孕んだ皮肉な状況になっている。 

そんな平井大臣のライバルといえば、同じ選挙区・香川1区の対抗馬で、大島新監督の政治ドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』(通称『なぜ君』)の”被写体“であり、主人公の衆議院議員・小川淳也議員だ。ある意味、平井大臣を誰よりよく知る小川議員は、今回の一連の騒動をどう見たのか。リモートでインタビューを行った。

2020年9月16日に行われた、菅内閣発足に伴う平井卓也デジタル改革担当、情報通信技術(IT)政策担当、内閣府特命担当大臣(マイナンバー制度)就任時の記者会見(写真:アフロ)
2020年9月16日に行われた、菅内閣発足に伴う平井卓也デジタル改革担当、情報通信技術(IT)政策担当、内閣府特命担当大臣(マイナンバー制度)就任時の記者会見(写真:アフロ)

ご本人は否定されているようですので…

――平井卓也デジタル改革担当大臣の「完全に干す」発言や、それに連なる疑惑の問題点をどう思いましたか。

小川淳也議員(以下 小川) 平井先生には長年選挙区で胸をお借りしている人間として、対立候補について語るのは非常に難しいと感じます。しかし、国家的大儀に関わる問題をはらんでいるため、お受けすることにしました。 

まず今回、ご本人は具体的な指示性を否定されていますので、前提として、それを踏まえなければならないと思います。ただ音声も含めた全体のトーンとしては、契約内容に重大な影響を及ぼした疑いがあることは否めないのでは…、これが有権者の受け止めではないかと思います。 

何が問題かというと、森友・加計問題や総務省の接待問題同様、家族や古くからの友人など、権力者に近しい人間が権力行使の過程に結果として介入し、それを官僚組織が丸ごと忖度せざるを得ないという、共通する同一線上の問題です。 

今回の特定の会社の技術が、いかに素晴らしいものか詳細は分かりません。ただ報道を見る限り、長年のお付き合いが背景にあり、その個人あるいは特定会社への発注の臭いが、どうしても漂ってきます。 

一方、別の特定会社を「完全に干す」、「脅す」という発言があり、現実にその後、その会社への契約額が激減しています。 

明確に法律違反との断定は出来ませんが、公平で社会に開かれたチャンス、オープンな選考過程、フェアな税金の使われ方、という点においては、少なくとも深い疑念を招く結果となってしまったのではないでしょうか。

――平井大臣の問題について、多くの方が、個人の問題ではなく政権そのものの体質と重ね合わせて見た気がします。

小川 実際、政権の体質がそうであったことは事実ですからね。 

ご本人が政財界に力を持っているだけでなく、弟さん(平井龍司氏)が四国新聞社社長で、お母様が社主、またテレビ局やラジオ局も擁する地元メディアのオーナー一族です。 ものすごく強固な基盤をお持ちということになります。

――平井氏の権力をこれまで特に強く感じたのは、どんなときですか。

小川 もう時効だろうと思いますので、初めてお話しします。15年前私が民主党から出馬し、初当選したとき、1年生議員で右も左も分からない一方、怖いもの知らずだった私は、当時官房長官だった安倍前総理と予算委員会で激しく議論しているんです。 

当時は予算委員会が終わると、党派を超えた反省会、打ち上げのようなものがありました。そこで安倍さんが、新人の私のところに来られて『小川さんいい質問だった』と言ってくれたんです。 

その辺が安倍さんのニクいところです。その時『平井さんがあんたのことを嫌がっている』『出来れば候補者を差し替えてほしい、平井君がそういうんだ』とおっしゃったんです。要は、自分のおひざ元からいなくなって欲しいということでしょうね。 

ただその時、安倍さんが言ったことで興味深かったのが『ただね、僕は平井君が羨ましいんだ』という言葉でした。どういうことですか? とお聞きしたら『この世界、総理大臣の息子や孫はたくさんいる。でもメディアまで含めて地元のあらゆるものを持っている人は他にいない。だから僕はむしろ平井君が羨ましいんだ』と。 

今思えば、まさにそれはその後の安倍・菅政権の体質の一端を暗示する言葉であり、なおかつそれを平井先生以上に、実際に具現化し体現している方は、ローカルといえども他にない、と思うわけです。

――『なぜ君』に平井氏が登場しているのも、今改めて観ると非常に興味深いです。連日、朝夕と、小川議員が四国新聞で厳しく批判され、その一方で平井氏については「地域貢献に汗流す」などという見出しが並ぶ。むしろ逆効果ではないかと思うのですが。

小川 自らが社長を務められた西日本放送の他、四国新聞社のシェアは県内の6割超と言われていますので、その影響力は絶大です。 

同級生や地元有権者は「最近は小川について言及してくれるのは中央メディアが圧倒的に多い。小川に言及したのは、昨年のコロナ感染と報道番組で自民党改憲派への発言を批判したものをはじめ少なすぎるのではないか…」と言い、残念がります。 

逆に今回の平井大臣の発言の件で言うと、小さな枠で『「税金の無駄なくすための発言」73億→38億に 五輪アプリ経費削減巡り』という見出しですから、小川の周囲も驚いていました。

――経費削減に貢献した、むしろ庶民の味方に見える見出しですね。

小川 10年くらい前でしたかね。地元の公開討論会で、若気の至りもあって「地元新聞社や放送局に関わる一族が、政治にまで手を出すと社会はおかしくなる。そういうこととはむしろ一線を画し、政治をやるなら報道の及ばない別の地域で、あるいは政治から身を引いてちゃんと報道に専念する、そのどちらかじゃないですか」とご本人に向かって言ってしまったことがあったんです。 

平井先生はそれに対して「県民が決めることだ」とおっしゃいました。 

確かに形の上ではそうです。しかし(いかに大臣といえども)一方の候補のことは連日報道が続き、もう一方の候補は共同通信の配信すら十分に取り上げられず、書かれるといえば、病気になったことくらいですから…(苦笑)。 

それで「県民が選ぶ」と言われても、フェアなのかと私は感じます。

私は自分のことをよく書いて欲しい、などとはさらさら思っていません。しかし県民の皆様には、平井先生の良いところも悪いところも、小川の良いところも悪いところも、フェアに知るべきだと思うんです。一事が万事、そういうことも含め闘ってきた10数年だったのかもしれません。 

参院内閣委員会(2021年5月11日)(写真:アフロ)
参院内閣委員会(2021年5月11日)(写真:アフロ)

選挙区で勝利したのは、政権交代の時の1度だけ

――選挙区でなかなか勝ち抜けない厳しい現実は、『なぜ君』の主題の一つでもありました。

小川 たしかに、私が選挙区で勝利したのは、政権交代の時の1度だけです。

――いわゆる「地盤・看板・カバン」だけでなく、様々な意味で圧倒的権力を持っている方がいる選挙区で勝負し続けるよりも、他の選挙区から出馬したほうが良いのではという声もあります。

それでも、あえてこの不利な状況で戦い続けるのは、実は対平井氏個人ではなく、今の政治の構造に対して挑んでいるような面があるのでしょうか。

小川 実は最初は全然意識していなかったんです。父親にも「お前は甘い。世の中を舐めている。何を思いが上がっていい気になっているんだ」と言われるところからのスタートでした。 

高校を卒業して大学進学で上京してから、出馬を決めるまで香川県を離れていたこともあり、平井家の権力や牙城を体感せずに選挙活動に入って行きました。お恥ずかしながら理解していなかった。要するに無知で無防備だったわけです。 

そうは言っても、四国新聞社も最初10年ほどはフェアな報道だなぁと私は感心していた記憶があります。手放しに平井先生を礼賛することもなければ、私のことも良い時はちゃんと報道してくれていました。 

あくまで私見ですが、最近は少しバランスを欠いているのではないかと感じる時が多いです。逆に言えばひょっとしたら、先方もちょっと余裕やゆとりが少なくなってきているのかな…という印象も受けているんです。

――全国的にはどうしても「ワニ動画」の印象が強く、ネット上では「ワニ大臣」などとネタにされてきただけに、今回の「脅し音声」の印象に驚いた人も多かったようです。それほどの権力の持ち主なのですか。

小川 平井家はお祖父様の代から三代70年に渡って国会に議席を有するご一族です。新聞社、テレビ局、ラジオ局の他、高校、幼稚園、美術館などあらゆる分野に根を張られています。事務所秘書さんも新聞社やテレビ局から来られるケースも少なくないと聞きます。

ですから、私の東京後援会のメンバーは「この権力と闘うということは、『日本の旧来の権力構造そのものと闘うこと』であり、『日本の旧制を打破して、新しい時代をつくること』とほぼイコールなんだろうな」と言います。 

でもだからこそ、私が当選するとかしないとか、という小さな問題ではなく、そこから逃げ出すようであれば、その先もっと大きな大仕事を引き受け、その苦難に耐えることが出来るのか、という問いに直ちにぶち当たるわけです。

――それでも今回の騒動は、さすがに平井氏にとってダメージが大きいのでは。

小川 正直、どれほどの影響があるのかはわかりません。 

平井先生にある種のクリーンさやフェアさを期待しておられた有権者にとっては、少々ダメージかもしれませんね。 

「お話することがあるのかな…」「何をお話しすれば良いのかな…」と思ってお受けしたインタビューでしたが、私も意外と色々溜まっていたんですね…(苦笑)。 

ただいずれにしても、平井先生個人云々ではなく、そこには大なり小なり、日本の政治構造の問題がある。そして、それが新しい時代に適応できなくなっているのは確かであり、それは日本全体の課題です。 

そして逆に言えば、これまで小川は選挙区で勝てない、勝ったのは平井先生である、という認めるべき現実がそこにはあるんです。しかし一方で選挙区では勝てない小川を、比例区ではずっと残してくださった香川県民の判断も、またそこにはありました。 

 大変不本意ながら、国会が閉会し、総選挙に向けた「100日間の闘い」は既に事実上スタートしています。日本の旧来の政治構造、政治文化を変え、新しい時代を築き上げるために、ここで歯を食いしばって踏ん張る。そう決意しています。

衆院予算委で質問する小川淳也議員(2021年01月25日)(写真:共同通信)
衆院予算委で質問する小川淳也議員(2021年01月25日)(写真:共同通信)
  • 取材・文田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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