東京五輪・映像使用のルールは実は「こんなに複雑」だった | FRIDAYデジタル

東京五輪・映像使用のルールは実は「こんなに複雑」だった

知っているとテレビ観戦がより面白くなる! オリンピック放送にまつわるトリビア【前編】

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2020 東京オリンピックのメインスタジアムである新国立競技場。テレビ中継でも外観や空撮映像などがよく映る 写真:長田洋平/アフロスポーツ

いよいよ始まった東京オリンピック。毎日テレビに釘づけになっている人も多いのではないかと思うが、実はテレビで放送されるオリンピックの映像には、想像を超えるほど細かい「使用ルール」がいろいろと決められている。

筆者も長年テレビ局報道番組やワイドショーなどの制作に携わってきて、何回もオリンピックの放送を経験してきているが、正直あまり良い思い出がない。複雑怪奇なルールを守らなければいけなくて、緊張のあまり気が抜けないからだ。

今回は、そんな「知られざるオリンピック映像の使用ルール」について、詳しく紹介してみたい。日々放送されるたくさんのオリンピック関連番組の裏側では、多くのテレビマン達が人知れず大変な苦労をしているということを、少しでも知ってもらえたら幸いである。

「競技映像」と「ADエリア内撮影映像」の違い

まず、ひと口に「オリンピック映像」と言っても、実は2種類に分けられる。「競技映像」と「ADエリア内撮影映像」だ。

ひとつ目の「競技映像」についてだが、これは「競技中」の映像のことで、「競技が始まってから競技終了時点までの映像」だ。この「競技終了時点」というのが結構ややこしく、各競技によって細かく定められている。

例えば「競泳」の場合、競技終了時点は「全レースの順位確定時」と定められているので、ひとつのチームが泳ぎ終わった時点ではまだ競技は終了しておらず、プールサイドを選手が歩いている映像であっても「競技映像」という扱いになる。

「マラソン」だと、女子なら「スタート時刻から3時間経過時」が競技終了時点と決められているし、男子なら「スタート時刻から2時間半経過時」と決められているので、1位の選手がゴールしても競技は終了しない。逆に、定められた時間が経過してしまえば、まだ走っている選手がいたとしてもその映像は「競技映像ではない」という扱いになるようだ。

この「競技映像」のルールは、「優先放送種目」に適用される。「優先放送種目」とは、簡単に言えばNHKや民放のとある局が「この競技はうちの局が優先で生放送させてもらいます」と指定した競技で、各局で協議して決められている。

優先放送種目の生放送中は、他の局は地上波でその競技の映像を生放送することはできない。だから、上述のような「『競技終了時点』についての競技ごとの細かいルール」が必要となってくるというわけだ。これは「生中継」についてのルールで、「録画された競技映像」については3時間過ぎて走っているマラソン選手の映像も当然「競技映像」ということになるはずなので、誤解ないようにお願いしたい。

この「競技映像」とは別に、「ADエリア内撮影映像」がある。これは、各競技会場やIBC(国際放送センター)などで撮影された映像のことで、こうしたエリアに入るには「AD(アクレディテーションカード、通称「アクレジ」)」と呼ばれる身分証を持っていないと入れないため、この中で撮影された選手のウイニングラン、メダルセレモニー、インタビュー等の映像などは「ADエリア内撮影映像」と呼ばれている。

「競技映像」と「ADエリア内撮影映像」のふたつを合わせて「オリンピック映像」になるわけだが、実はどの番組でも使えるわけではなく、「限られた特別な番組のみ」が使うことができるのだ。

オリンピック映像を使える番組・使えない番組

オリンピック関係の番組は大きく分けると「競技を生放送で中継するもの」と「試合の結果などを録画で伝えるニュース・情報番組」になると思うが、この「オリンピックの映像を使える番組」というのは事前にきちんと決められている。

これを「東京五輪映像使用可能番組」と呼び、各局から事前に申請があった番組以外は「録画された競技映像」も「ADエリア内撮影映像」も一切使うことができない。

「東京五輪映像使用可能番組」のリストを見てみると、日本テレビは早朝の『Oha!4 NEWS LIVE(1部)』から深夜の『news zero』まで29番組、テレビ朝日も同じく29番組、TBSは少し多くて38番組、テレビ東京はダントツで少なくて15番組、フジテレビは23番組が掲載されている。

そんなにたくさんニュース番組やワイドショーがあったっけ?と不思議に思う方もいるかもしれないが、時間帯ごとに「第1部」「第2部」などと別番組扱いになっていたり、「ローカルゾーン」と「ネットゾーン」を別の番組として登録しているので、このような数になっている。

面白いのは、各局によって登録する番組の色合いや範囲に違いがあること。例えばテレビ朝日は意外とバラエティ番組に厳しく、『中居正広のニュースな会』は東京五輪映像使用可能番組だが、『ビートたけしのTVタックル』は入っていない。

それに比べてTBSは比較的バラエティ番組系も登録していて、『王様のブランチ』も『サンデー・ジャポン』も『アッコにおまかせ!』も使用可能番組だ。フジテレビも『ワイドナショー』を登録していて、不思議なのは『週刊フジテレビ批評』まで登録されていることだ。

そういうわけで、ニュースや情報番組で東京オリンピックの映像を使ってニュースが流せる番組は事前に決められたものだけ! ということなのだが、実はその「映像使用のルール」にもびっくりするような細かいものがビッシリ定められている。

それについてはまた別項で紹介していくことにしよう。

【後編】CMの順番にも決まりが…?五輪映像使用の「厳しすぎるルール」

  • 鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。近著に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)

  • 写真長田洋平/アフロスポーツ

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