CMの順番にも決まりが…?五輪映像使用の「厳しすぎるルール」 | FRIDAYデジタル

CMの順番にも決まりが…?五輪映像使用の「厳しすぎるルール」

知っているとテレビ観戦がより面白くなる! オリンピック放送にまつわるトリビア【後編】

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民放でオリンピックの中継を見ていると、CM前によく映るスカイツリー。実はこれにも、五輪映像のルールにまつわる深いワケが…… 写真:アフロスポーツ

オリンピック映像の知られざる「驚きの細かいルール」。前編では、「オリンピック映像には『競技映像』と『ウイニングラン、メダルセレモニー、インタビュー等のADエリア内撮影映像』の2種類があることや、「東京五輪映像使用可能番組」と呼ばれる事前に登録されたニュース・情報番組などしかオリンピックの映像は使えないことを紹介した。

今回は、オリンピック映像をニュース・情報番組で放送するとき、どんな驚きのルールがあるのかを紹介していきたいと思う。ちなみにこのルールが適用されるのは、8月8日の閉会式終了まで。その後は過去のオリンピック映像の使用と同じように、これまたややこしい別のルールに従って映像が使われることになる。

勝利のインタビューは「90秒遅れ」で

前編で説明した「優先放送種目」についてのルール。NHKまたは民放のどこかの局が「優先して生放送」をする権利を持っている競技では、各選手・チームの個々のレース・演技終了時点、または試合の終了時点からしか録画した競技映像を放送することができないというものだ。

これは「優先権を持つ局の権利を侵害しないため」なのでまあ理解できるが、不可解なのは、競技が終わった後のウイニングラン、表彰式、競技終了直後に行われるインタビューについての取り決めだ。

こうした表彰式やインタビューは優先権の対象外なのだが、「優先権を持たない局は原則として生放送しない」と決められている。最低「ディレイ幅90秒以上」をとらなければならないのだ。

つまり、その競技を生中継していた以外の局のニュースで、「今、〇〇選手が表彰台に上がりました」とあたかも生中継のように放送していたとしても、それは生放送ではない。一旦局のサーバーに録画して、最低90秒遅らせてから「撮って出し」で放送されたものだ。

「90秒なんか遅らせたってなんの意味もないじゃん!」と個人的には思うのだが、ちょっと首を傾げたくなるようなルールが、理由はよく分からないが厳然と決められている。

ややこしすぎる「使用可能時間」

オリンピック映像の「ややこしすぎるルール」の中でも最もややこしいのが「使用可能時間」だ。ちょっと頭がこんがらがるかもしれないが、順に簡単に説明していこう。

まず「放送で映像を使いたい選手・チームはレースなどが終わっているが、競技自体はまだ続いている」場合には、1番組につき、1種目について使える競技映像は3分以内。開会式・閉会式が行われている間に放送される番組も、開会式・閉会式の映像を3分まで使用できる。

そして、このまえTBSの『新・情報7daysニュースキャスター』で安住紳一郎アナウンサーが説明していたが、同じ番組でも「裏にオリンピック中継があるかないか」で使える競技映像の長さが違ってくるのだ。通常の時間帯に放送される番組の場合は、1番組につき使える競技映像は番組総時間の50%以内。ただし、裏で別の民放が「競技を中継で放送している」場合には、そこと重なる時間については1番組につき番組総時間の30%以内と定められている。

例えば「A局の情報番組は20時〜22時の放送。B局が21時〜24時でオリンピックの競技を中継する」という場合には、A局の情報番組で放送できるのは、20時〜21時の間は総放送時間の50%だから30分以内、21時〜22時の間は総放送時間の30%以内だから18分以内となり、全部で合わせて48分以内しか競技映像が放送ができないということになる。しかもこの48分のうち30分は必ず21時までに、18分は必ず21時過ぎに放送しなければならないわけだ。

スタジオのモニターに競技映像を流す場合には、ただ流しているだけなら使用時間にカウントされない。しかしモニターの映像を使って解説などをすると使用時間にカウントされる。

制限される「映像加工」と「テロップ」

原則として、「競技映像」および「ADエリア内撮影映像」は競技結果や元の意味を変えるような形での加工をすることはできない、とされていて、競技中のプレーを解説する目的以外では競技映像の速度を変えたりズームアップしたりしてはいけないことになっている。

加工などについては「IOCブランド&アクティベーションガイドライン」という細かいルールブックの規則に従わなければならないことになっていて、とてもここで紹介できる量ではないルールが定められている。また、テロップ(字幕のこと。スーパーとも言う)についても、競技映像に載せられるのは次の4つとされている。

①時刻・天気スーパー表示
②緊急時の速報スーパー等表示
③視聴者の理解増進を目的としたスーパー表示
これに加えて、自社で放送するオリンピック競技中継番組の告知。

まあ、ぶっちゃけ③の「視聴者の理解増進を目的としたスーパー表示」を拡大解釈すればいろんなテロップが載せられそうではあるが、①〜③は「各社判断とする」とされていて、この文言が怖い感じだ。

「各社の判断でやってもらって構わないけど、どこかからクレームがついたり、問題になったら責任取ってもらうからね」というニュアンスがひしひしと伝わってくる。

めちゃくちゃ厳しいCMのルール

CMなどについてもかなり細かくルールが決まっているので、私なりの解釈で簡単に要約しよう。

まずは「オリンピックのスポンサー以外は、CMにオリンピックの『オ』の字も使ってはいけないし、オリンピックに便乗していると思われるCMは一切放送してはいけない」という趣旨のことが決められている。まあこれは当然だ。

驚きなのが、オリンピック競技の中継などの番組の場合、オリンピック映像と「オリンピックスポンサー以外の会社のCM」が連続して流れてはならないということだ。オリンピック映像と連続して流れても良いのは、オリンピックのスポンサーのCMのみで、それ以外のCMとの間には「ブレイクバンパー」と呼ばれる、民放各局共通の素材を間に挟まなければならない場合もあるという。

また、競技の中継では、競技の流れを妨げるタイミングでCMを入れてはいけないし、各国の国歌演奏・国旗掲揚および国旗がズームアップになっているときにCMを挟んではいけないと決められている。

そして、テレビマンとして「厳しいなあ」と思うのは、提供ベース(この番組は〇〇の提供でお送りします、というナレーションが流れたり、提供〇〇株式会社といったテロップが流れる画面)で使って良い映像の制限だ。

これについては、東京オリンピックを扱うニュース・情報番組では「過去も含む全てのオリンピック競技映像」「ADエリア内撮影映像」「オリンピック資産(オリンピックのマークやエンブレム・マスコットなど)が映っている映像」を使ってはいけないだけでなく、「東京オリンピック出場選手・コーチが識別できる映像すべて」について、たとえ自分の社がオリジナルで持っている映像であったとしてもダメだということになっている。

さらに厳しいのは「競技の中継番組」の提供ベースだ。提供ベースに使って良い映像は、IOC に確認して、こんなふうに決められているのだという。

a.開催都市に関連した情景【夜景を含む】
例:東京タワー・東京スカイツリー・浅草寺・お台場など

b.開催国に関連した情景
例:富士山・東北被災地[復興五輪]・各国のキャンプ地など

c.競技会場の外景、空撮【オリンピック開催前】
例:武道館・東京体育館・横浜スタジアム・国立競技場・江の島など

d.人物中心の情景
〇べニュー(開催国)以外で応援するグループ・スポンサー色の全くない、国旗などの国のイメージも存在しないことが条件
〇スタジオの出演者 ・アスリートとは全く関係ない人物、例えばキャスターや出演者などのヨリ等
〇日本国内にいる海外ツーリスト

民放各局の中継を見ていて、「なんだかスカイツリーがよく映るなあ」と思っている視聴者もいるかもしれないが、それにはこういうルールが関係していたというわけだ。

想像を絶する「ややこしいルール」を基に放送されている東京オリンピック。もしこのトリビアが、あなたのステイホームのオリンピック応援生活を、少しでも楽しくしてくれたらこれほど嬉しいことはない。

【前編】東京五輪・映像使用のルールは実は「こんなに複雑」だった

  • 鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。近著に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)

  • 写真アフロスポーツ

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