天海祐希『緊急取調室』3つの禁じ手と桃井かおりのメッツセージ | FRIDAYデジタル

天海祐希『緊急取調室』3つの禁じ手と桃井かおりのメッツセージ

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『緊急取調室』で厳しい取調官役を演じる天海祐希。ドラマは人気シリーズになりつつある

女優の天海祐希が主演する刑事ドラマ『緊急取調室(キントリ)』(テレビ朝日系)が産声をあげたのは、‘14年1月期。奇しくも、取り調べの可視化を義務付ける「刑事司法改革関連法案」が国会に提案される時期と相まって、今までに見たことのないスタイルの刑事ドラマが誕生した。

気がつけば今年7月期の放送でシーズン4を迎え、テレ朝の長寿シリーズドラマの仲間入りを果たそうとしている。

しかし、このドラマは、今までのテレビ朝日の刑事ドラマとは一味も二味も違う。

「『キントリ』は取調室が主な舞台。だから刑事ドラマとしての派手さはありません。しかし緊迫した雰囲気の中で、人1人を深掘り・丸裸にして行くスタイルは、今までの刑事ドラマにはなかった魅力を感じます。

その一方で『事件が起きて、犯人を割り出し、逮捕する』といった”刑事ドラマのお約束”が使えない。それだけに、このドラマのオリジナル脚本を手掛ける井上由美子さんは、『約25年の脚本家人生で一番難しい台本だった』と、立ちあげ当時の苦悩の日々を振り返っています」(制作会社プロデューサー)

実は「キントリ」には、さらに”3つの禁じ手”もある。

そのひとつは刑事ドラマの見せ場でもある「アクション」を入れない。そして刑事ドラマの醍醐味でもある「国家権力や大きな組織との闘い」も入れない。さらに犯人役を「当て書き」せず、脚本を作り上げてから出演者に読んでもらいキャスティングする、の3つ。

”刑事ドラマのお約束”が使えない上に、”3つの禁じ手”まであっては、もはや逃げ場を失った袋の鼠も同然。そんな「キントリ」の唯一の武器は、取り調べのみ。だからこそ”密室の戦場”取調室で繰り広げられる、死闘とも思える”役者同士の対決”が見ものなのである。

それだけにシリーズ初回の犯人役には、毎回大物女優が起用されている。これまでもシーズン2には三田佳子、シーズン3には浅野温子が登場。そして今シリーズでは、初回から2回に渡って”ハリウッド進出”も果たしている個性派女優・桃井かおりが登場するとあって、放送開始前から大きな注目を集めていた。

「桃井が演じるのは、50年前機動隊を相手に連帯を訴え、”7分間の演説”が伝説となり『黒い女神』と呼ばれた活動家・大國塔子。50年後の今になって突然ハイジャック事件を起こしてキントリの取り調べを受けるわけですが、取調室のシーンは二日間にも及び、2人の申し出もありラストは、本番一発勝負。アドリブも飛び交う取り調べシーンを終えた桃井は『最高だぜ!』と歓喜の声をあげ、2人は熱い抱擁を交わしています」(ワイドショー関係者)

第2回の塔子の取り調べは、CMを二度も跨いで激しいバトルを展開。特に、桃井演じる19歳の塔子の7分間に及ぶ演説シーンから始まる二人のバトルには、目を見張った。

「今日だけは武器を捨てようではないか。名を知らぬ者への恨みを捨てようではないか。それが自由に向かって羽ばたくということではないのか」

「あの7分間は永遠だ」

「この50年間で味わったすべての感情を足してもあの7分間の興奮にはかなわない」

と恍惚とした表情を浮かべ呟く塔子を演じる桃井は、まさに”黒い女神”そのもの。しかし、その輝きがあったからこそ、50年後の落魄ぶりが胸にしみる。

「桃井は“50年前から時間が止まっている”大國塔子の役作りに際して、コロナ禍の自粛期間ロスの自宅に1年4か月篭った時に感じた世間から隔離された時の孤独感、時間が止まってしまった感覚を役に込めたとコメント。さらに”女神”と呼ばれた19歳の少女が、おばあちゃんになってしまう残酷さを、桃井自身が経験したものすべてを投影して演じたと明かしています」(前出・制作会社プロデューサー)

塔子の潜伏していた時間の重さを象徴するようなシーンが、潜伏先のアパートを訪ねる場面に登場する。殺風景な部屋のテーブルに不造作に置かれたチェ・ゲバラの文庫本『ゲリラ戦争』を真壁が手に取ると、所々ページが切り取られ、部屋を見渡すとゲバラの肉声を綴った言葉が襖の穴を塞ぐために使われている。このシーンには、50年という年月の残酷さを改めて考えざるを得ない。

時間を止めて潜伏生活を送っていた塔子。やがて死に場所を求めた彼女は過去を振り返り、「黒い女神」としてハイジャックを決行する。しかし、塔子を演じる女優・桃井かおりはどうだろう。桃井自身は決して過去など振り返ろうとはしていない。

「‘05年にハリウッド映画『SAYURI』への出演をきっかけに、活動の拠点をアメリカに移すと、グリーンカード(米国永住権)を所得。ハリウッド大作からインディーズ映画まで、世界を股にかけ様々な映画に出演。さらには『無花果の顔』や『火 Hee』では主演は勿論のこと監督にも挑戦しています。

塔子と同じく”死に際”にこだわる桃井は、『俳優なんて、どのタイミングで死ぬか、いいタイミングで伝説になりたいってしか考えていないから』と前置きした上で『松田優作が死んだ時に”あ〜やられちゃったな”と思いましたもん』『今はもう逆に時代の生き証人になってやろうという気持ちです』。さらには『最後はアカデミー賞のノミネートくらいまで行かないと、私らしくない』と自身の思いを語っています」(ワイドショー関係者)

そんな桃井の本音が垣間見られる、目を見張るような場面がある。

「爆弾が偽物なら、あなたも偽物っていうわけね。その自覚があるから爆弾が偽物だって言いたくなかったんじゃない。かっこ悪い」

と切り込む真壁に対して塔子は、机を叩き、烈火のごとく怒りをあらわにする。

「じゃあ真壁。お前は胸を張って自分は本物だと断言できるのか。自分の頭で何か考えたことがあるのか」

「じゃあ本物とはなんだ。今ここで説明してみろ」

「ここは生きるに値する世界なのか」

とまくし立てる。そして”目を覚ませ”と言わんばかりに真壁に水をぶっかけ、

「だから嬢ちゃんだっていうだよ」

と斬って捨てる。

これは、”桃井かおり史上最高の女優”と賞賛する天海祐希ヘのメッセージ。いや、桃井かおりから日本の映画やドラマに携わる志ある人たちへの叱咤激励なのかもしれない。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

  • PHOTO坂口 靖子

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