4団体統一へ突き進む井上尚弥は「3R以内にカシメロを倒す」
リゴンドーとの凡戦ですべてが見えた いよいよ実現する因縁の対決
試合終了のゴング直後、現地で取材していた少なくない記者が「リゴンドー(40)の判定勝ち」を予想していたという。
「リゴンドーはアウトボクシングに徹してカシメロ(32)の攻撃をほぼ完璧に封じました。試合会場のアメリカ(カリフォルニア州)では攻める姿勢がポイントにつながるから、積極性が評価されて勝ちを拾えた。彼の大振りのパンチはことごとく空を切っていました」(現地で取材したノンフィクション作家の林壮一氏)
これまで「逃げている」「ノロマな亀」などと、さんざん井上尚弥(28)を挑発してきたカシメロは、試合後あらためて中指を立てて対戦を要求。「問答無用で倒す」と井上も応えたことから、いよいよ因縁の対決が実現しそうだが――「ここまではカシメロの作戦勝ち」だと、前出の林氏が舞台裏を明かす。
「どうして井上を挑発し続けるのか、直接本人に聞いたことがあります。彼はこう断言しました。『あいつと戦いたいんだよ。絶対に噛み合うと思う』と。日本ではビッグマウスの無礼者のイメージでしょうけど、素顔の彼は真っ直ぐなファイターなんです。
大凡戦と叩かれたリゴンドー戦はカシメロにとって苦しい展開でしたが、最後の最後まで空振りを繰り返しながらも攻め続けた。あの愚直さがカシメロの持ち味です。思うように試合を運べないフラストレーションを抱えながらも、出来ることを120%やって勝利を掴み、井上とのタイトルマッチをグッと引き寄せた」
舞台は整った。だが、かつて井上と日本タイトルを争った元WBA・IBF世界ライトフライ級王者の田口良一氏は「カシメロの進撃はここまで」と断ずる。
「カシメロの思い切りの良さ、フィジカルの強さは特筆すべきものがありますが、井上選手を捉えることはできないでしょう。攻撃に注目されがちですが、井上選手はディフェンス技術もハイレベルです。天才的なのが距離の取り方。パンチの当たる距離にいないのです。空振りしたところに猛スピードで距離を詰めてきた井上選手がエグいボディを突き刺して、カシメロがのたうち回る――そんな展開になるんじゃないでしょうか。4Rまでもたないと予想します」
林氏の予想はもっと早い。3Rだ。
「井上はリゴンドー戦の解説をしていましたから、すでにカシメロのパンチのタイミングや距離感を掴んでいるはず。カシメロの左フックが空を切った瞬間、より軌道が小さく速い井上の左フックが炸裂して3RまでにKOすると見ています」
たしかに噛み合う一戦となりそうだ。

『FRIDAY』2021年9月3日号より
写真:アフロ(1枚目)、ロイター/アフロ