SNS炎上が「バカッター」から「バカスタグラマー」へ変化中 | FRIDAYデジタル

SNS炎上が「バカッター」から「バカスタグラマー」へ変化中

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でも変わらない「欠けている『友達の友達は他人』という視点」

「バカッター」と聞くと、妙な懐かしさを感じるくらいになった。

これはTwitterの投稿により、自らの犯罪や詐欺、嘘、反社会的問題行動などを「武勇伝」のように晒す行為や人のことで、「ネット流行語大賞2013」の4位ともなった言葉。

あれから8年ほど経つ今、若者はもはやTwitterをあまりやらないと言われる。本当にそうだろうか。

(写真:アフロ)
(写真:アフロ)

身近な例で見ると、自分の娘の周りの20歳前後の若者たちは、高校時代まではTwitterをやり、大学でInstagramデビューしている子が多かった。しかも、高校時代にTwitterの投稿内容が面白く、バズったり、投稿数が非常に多かったりしたのは、自称(?)「陰キャ」で、東大・京大などトップ大に合格した成績トップ層の子ばかり。もはや「バカッター」どころか「インテリ陰キャ」と中高年のものになっている印象すらある。

そんな中、いわゆる「バカッター」的人々は、今はInstagramに出没し、そこからさらに変化を遂げていると聞いた。どんな変化なのか。ITジャーナリストの三上洋氏に聞いた。

「2013年のバカッターは、Twitterに不適切画像を投稿するかたちでしたが、それが2019年1~3月になると、不適切動画をInstagramのストーリーに投稿することが続出しました。いわゆる『バイトテロ』です。 

ところが、最近ではInstagramへの投稿による『バイトテロ』がこれまでと異なる傾向になっているため、それをとある番組で『バカスタグラム』としてお話ししたんですね」(三上洋さん 以下同)

今は学校のリテラシー教育でもTwitter上の炎上の怖さなどが指導されているため、Twitterでの投稿はさすがになくなり、Instagramのストーリーに移ったのが2019年。これは15秒の動画で、24時間で消えること、自分のフォロワーにだけ公開する(初期設定の場合)ことから、仲間内でファミレスや居酒屋で武勇伝を語るような感覚で投稿されていたと言う。

「2013年と2019年ではTwitterからインスタへ、画像から動画へという変化はあるものの、内容は変わっていません。 

中高生のTwitterはフォロワーが20~30人程度で、普段は何を喋っても身内しか見ないことから、完全に身内のものだと勘違いして、武勇伝を投稿してしまっていたのが2013年。 

2019年の時点ではInstagramのストーリーなら、やっぱり内輪だろうと、仲間内でウケる動画を投稿したい心理からです。 

ただし、そこで欠けているのは『友達の友達は他人』という視点です。 

不適切画像や動画は、友達が炎上させるようなことはさすがにほぼないですが、別の友人に『こんなひどい画像(動画)があった』と見せ、さらにその人が別の友人に見せる。そこからTwitterに投稿して炎上してしまうわけです。 

とはいえ、Twitterの利用者は、毎日のように見ているアクティブユーザーはそれほど多くなく、炎上が起きたとしても1件あたりの参加者は数千、多くて数万という中のごく少数の炎上なんですよ。 

それを5ちゃんねるなどの掲示板やまとめサイトが取り上げ、『〇〇(店名)バイトテロ』とやるところからブーストされ、ニュースサイトやテレビで取り上げられ、大炎上になるんです」 

現在のブースト役は「まとめサイト」ではなく、「ゴシップ系YouTuber」

それが、2021年現在の『バイトテロ』は別のかたちになっている。その特徴の1つは“鍵垢”(フォロワー以外に非公開にすること)のストーリーへの投稿だということだ。

「拡散してしまう構造までは知っていて、鍵垢で投稿するわけですが、画面録画の機能を使えば身内の外の人にまで拡散されることまで意識が至らない。 

さらに、最近の炎上の多くは有名YouTuberのところにリスナーが投稿したことが起点になっています。つまり、今回のブースト役はまとめサイトではなく、ゴシップ系YouTuberになっているわけです」 

ちなみに、三上氏は大学の授業で100人のクラスにSNSに関する講義を行っているが、学生にInstagramについてアンケートをとったところ、複数のアカウントを使い分けている人は半数以上いたという。

これは昔のTwitterと同様に、「学校用」と「プライベート用」、もしくはアーティストなどの「ファン垢」のような切り替えで、プライベートについても投稿したいという意識が見えると分析する。

「さらに、この100人の学生に投稿頻度を聞いたところ、『投稿しないで見るだけ』という人が42%と多く、『月に数回投稿する程度という人』も42%でした。 

しかし、同様に、Instagramのストーリーへの投稿について質問すると、『週に1回くらい投稿している』という回答が多いんです(約44%)。つまり、通常のInstagramの投稿と同じかそれ以上に『ストーリーで友人向けに投稿したい』という意識があるんです」

24時間で消える投稿を知り合いだけに見せたいのは、どういう心情からなのか。

「そこはすごく微妙なバランスで、日本全国の人に有名な人になりたいとまでは思っていないんですね。 

でも、自分が普段やっていることや自分の気持ちを、周りに認めてもらって『大変だったね』とか『美味しそう』『その髪型、良いね』とか言ってもらいたいという、半径5メートル以内の小さな承認欲求みたいなものがあるんです」 

Facebookは完全に中高年のものに、細分化で見直されているミクシィ 

ちなみに、若者がTwitterからInstagramへ移行したと思われがちだが、先述の大学生100人へのアンケートによると、Instagramのアカウントを持っていない人は9%だったのに対し、Twitterをやっていないという人は3.7%だったという。つまり、TwitterもInstagramも90%以上の人がアカウントは持っていることがわかったそうだ。

「ちなみに、Twitterのアカウントをいくつ持っているかという質問では、1個しか持っていない人は28%、2個が28%、3~4個も28%、5個以上が10%以上でした。それに対し、Facebookを週に1度以上見ている人は2人しかいませんでした」

Facebookは完全に中高年のものと言われるが、やはりそうだったのか……。

「もともと日本ではFacebookはおじさんおばさんが“いいね”をつけ合う文化という認識があるため、若者は使っていませんでした。 

それでも、数年前まではOB訪問などを含め、『就職に必要なもの』と思われていましたが、今はそれもなくなりました。こうした傾向は、日本だけじゃなく、英語圏でも若者のFacebook離れが進んでいるとデータがあります。 

Facebookはザッカーバーグが大学生の時に学生コミュニケーションツールとして作られたものなので、もともと大学生が使っていたわけですが、それが15年経って年齢層が上がったこともあるでしょうし、日本でもFacebookを使い始めたのは2010年代の前半だと思うので、年齢が上がったことはあると思います」

その一方で面白いのは、完全にオワコンと言われたミクシィが今も特定のジャンルにおいて盛り上がっているということ。こうした傾向について、三上氏は次のように説明する。

「ミクシィ利用者の場合、ほとんどが17、18年前のミクシィブームの時から使っている人たちのようです。特に盛り上がっているジャンルは、ライセンスフリー無線(免許のいらない無線で交信する趣味)や、特定の病気についての情報交換など。 

実は、アカウント固定で閉じた範囲でジャンル毎の部屋があるサービスは、ミクシィしかないんですよ。だから、身の周りに同じ共通点を持つ人がいないことで悩む人たち、例えば性的マイノリティの方や、コアな趣味を持っている人、稀有な病気に苦しむ人などが、自分と同じ思いを抱く仲間を探せる場所でもあるんです。 

今まではミクシィの次はTwitterだ、Twitterの次はInstagramだという風に、栄枯盛衰があり、どんどん新しいものが上書きされていくように思われていました。でも、最近の傾向を見ると、それぞれのSNSが細分化し、そのまま残っていくイメージに変わりつつある気がします」 

コロナ禍でリアルに人となかなか会えない中、自分の求める仲間や趣味、発信したい内容やスタイルによって、SNSでの「居場所」のあり方は今後ますます細分化していくのかもしれない。

■三上洋さんのTwitterはコチラ

三上洋 ITジャーナリスト。文教大学情報学部非常勤講師(SNS文化論/ネット炎上)。セキュリティ、ネット事件、スマートフォンが専門。一般向けセキュリティ記事をウェブに執筆する他、テレビ・ラジオでの解説多数。。最新のIT情報満載の「ライブメディア情報番組 UstToday」(毎週月曜21時に配信)にも出演中。

  • 取材・文田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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