「佐賀藩主・鍋島家」の末裔が家宝の名刀を巡って裁判トラブル
ご先祖様も泣いている!? 9振りのうち2振りは返ってきたが残りは未だ戻らず……義弟に対し「刀を返せ」と請求中
豊臣秀吉にもその才を認められた戦国時代きっての智将・鍋島直茂が佐賀藩を治めてから400年余り……令和の現代において、智将・直茂もびっくりなトラブルが起きていることが明らかになった。

先祖代々伝わる家宝の名刀を巡り裁判を起こしているのは鍋島俊雅氏(60)。佐賀藩の支藩である鹿島藩を治めた直茂の次男・忠茂の末裔(まつえい)だ。
「鹿島鍋島家が代々継いできた刀は、少なくとも9振り。10年ほど前に父が亡くなり、9振りのうち、2振りは母が、残りの7振りは私が遺品として受け継ぎました。
私は30年以上、アメリカで暮らしていて、7振りは家族で所有している東京・赤坂(港区)のマンションに保管していたんですが、あるとき、妹の夫である義弟のA氏から『刀を置きっぱなしにしたら危ないから私が保管します』と提案があり、彼に刀を預けました。
母の2振りについても、妹が『勝手に売られたら困るから私が預かる』と持って行った。その後、財産管理の都合で刀を返してもらいたいと伝えたんですが、まったく応じてくれなかったんです」
そこで俊雅氏は、’18年5月にまずは母名義の2振りの刀について返還を求めた。同年7月には裁判所から仮差し押さえが認められ、A氏夫妻の自宅に執行官が入る事態になった。俊雅氏の代理人弁護士を務める『法律事務所UNO』の平川麻紀弁護士が語る。
「2振りは取り戻すことができました。残りの7振りについても、今年からA氏に対し返還の調停申し立てを行っています」
しかし、俊雅氏の元に戻ってきた2振りとは異なり、残りの7振りの返還請求は難航しているという。
「母は父の死後、刀の登録を自分の名義にしていた。しかし私が保管していた7振りに関しては、名義が父のままだったんです。返還請求に対してA氏は、刀は私から預かったのではなく父から預かったと主張している。そうなると返還の請求権は私ではなく、亡くなった父になる。つまり、返還請求に強制力がないんです」
戦国時代さながらの法廷合戦とでも言うべきか。俊雅氏とA氏&妹の間では、名刀以外の訴訟も起きているという。
「父の死後、父が経営していた『海外物産』という貿易会社の社長にA氏が就任しました。私は仕入れ先のあるアメリカから経営を支えた。父の代で傾きかけていた会社だったので、『A氏と一緒に再建しよう』という気持ちでした」(俊雅氏)
しかし、会社の財政難は続き、鍋島家が保有する東京・新宿の土地を売却し、運転資金を捻出することになった。俊雅氏のもう一人の代理人弁護士である『フレックスコンサルティング法律事務所』の杉谷真弁護士が語る。
「土地の売却で得た利益のうち、1500万円を『海外物産』に入れることで資金難を逃れようとしました。カネは土地を所有していた鍋島家のグループ会社から俊雅さんの個人口座を経由し、出資という形で『海外物産』に入れられました。
しかし後になってA氏側は、鍋島家のグループ会社から俊雅さん個人にわたったカネは、鍋島家から俊雅さんへの貸し付けだと言い出し、1500万円の返済を求めて訴えを起こしたのです。提訴の裏には、『海外物産』から俊雅さんを追い出したいという思惑があるのでしょう」
俊雅さんの妹に電話で取材すると、「私はよくわからないので」と返答。夫であるA氏の弁護士にも取材を申し込んだが「守秘義務があり、お答えできません」との回答だった。
俊雅氏は胸中をこう語る。
「A氏にはただただ呆(あき)れているというのが本音です。もし刀が返ってくればきちんとした鑑定をしたうえで、すべて博物館に寄付する予定です。佐賀県庁側にもその意思はすでに伝えています」
名刀の行方はいかに。



『FRIDAY』2021年9月10日号より
写真:小川内孝行、共同通信(佐賀城跡)