300年の技術を今のカタチに 日本が世界に誇る現代の名品

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後継者不足や、海外の安い労働力との競争から、時代とともに先細っていくばかりの日本の工芸産業。その中には、300年、400年の昔から引き継がれてきた、卓越した技術が多い。

今、新しい世代の後継者たちが、現代の生活に溶け込むデザイン、現代の日常に即した道具を開発し、新たな消費者をつかみ始めている。今回は、創業300年の奈良の老舗、中川政七商店が主催する合同展示会「大日本市」で見つけた、国内のみならず海外からも注目を集める、現代の名品たちを紹介する。

楽しくしっかりとした生活文化を発信し、食卓から幸せに

かもしか道具店(三重県菰野町)

一合炊きから三合炊きまで、ジャストサイズで美味しいご飯が炊ける。調湿性があるので残りは鍋ごと冷蔵庫へ。そのまま電子レンジで温めれば、足りない水分は鍋からもらって炊きたての味に

沼波弄山(ぬなみ ろうざん 1718~1777年)が陶祖といわれる萬古焼(ばんこやき)。名前の語源である「萬古不易(永久に変わらないこと)」とは裏腹に、産地である菰野町では、時代の流れに逆らわず、技を積み重ね、必要に応じて商品を変化させてきたという。その積み重ねが、現在の鍋や急須を得意とする商品ラインナップに生かされている。

そんななか、窯元である山口陶器が2014年に立ち上げたブランド『かもしか道具店』が人気を集めている。ブランドを企画したのは28歳で脱サラし家業を継いだ山口典宏社長。そのコンセプトは、「たのしく、しっかりとした生活文化を発信し、食卓を通じ幸せを届けること」というように、吹きこぼれることなくおいしいご飯を炊ける鍋や、時間をかけずに調理できる三とく鍋など、生活の本質的な価値を大事にする商品を生み出し続けていて新鮮だ。

溝のないすり鉢。溝に詰まらないので、さっと素材を取り出しやすく、そのまま食卓に出してもさまになる

「広く万人受けするものではなく、特定の誰かを思って生み出した商品は、国内海外問わず、ハマる層がある」というように、従来の常識にとらわれない発想力で勝負する。

かもしか道具店

道具を選ぶことは、料理を作ることの第一歩

DYK(新潟県三条市)

一見、大きめに見えるスープレードルやお玉は、一掬いでカップやお椀一杯分になるようサイズ設計されている

1866年、初代髙橋儀平がのこぎり鍛冶として三条町で創業した髙儀(たかぎ)は、各地の市へ出向き、自社ののこぎりだけでなく、お客様の要望に応じて近隣の鍛冶屋が造る道具を目利きして販売するようになり、大工道具の卸問屋として発展した。

古くから日本の大工たちは「道具を見れば職人の腕がわかる」と言われ、「道具の取り合わせの妙」にこそ、大工のこだわりや哲学が現れていた。髙儀では、より良い取り合わせを行える道具を目利きし、品ぞろえ、提案をすることで長く愛されてきたのだ。

その精神を料理の世界に生かしたのが、キッチンツールのブランド「DYK(ダイク)」だ。料理も同じく、道具それぞれの相性を考え、取り合わせることによって美味しい一皿を作ることができる。そんな信念のもと、料理をする人の美意識を引き出すキッチンツールを作り出している。

徹底した機能美と造形美を追求した包丁。刃先は自社工場で一本一本手作業で刃研ぎを行っている。使いやすい軽量設計

DYK

東北・会津の人々の気質と性格を表すような会津木綿

会津木綿 青㐂製織所(福島県会津坂下町)

首から下げられる、会津木綿のカードケース。昔ながらの暮らしから着想を得て、開閉にはこはぜを使用している

戦国武将・蒲生氏郷が会津地方を治めていた時代に、産業復興として綿花栽培を奨励し、手織りで始まったころから数えると、会津木綿には400年ほどの歴史が。おもに農作業着として、冬寒く、夏暑い会津の暮らしに寄り添ってきた布であり、脈々と伝わってきた土着の縞模様は、今の時代も古びない。

「会津木綿 青㐂製織所」ブランドは、織元の減少により会津木綿の灯が消えかけようとしていた時、この地域の廃工場で眠っていた大正時代の織機を譲り受けて修復。会津坂下町の廃園した幼稚園をリノベーションし、現代の暮らしに合い、土着感のある商品を制作している。

今後は、地域の会津木綿のルーツでもある藍染の復活を目指し、藍の栽培も行っている。

修復した豊田式鉄製小幅織機。米沢や桐生、新潟などの織元の職人に教えを請い、2年ほどかけて自社で製職することに成功した
日本酒の4号瓶とワインボトルがしっかり入る、丈夫な会津木綿のボトルバッグ“サケブクロ”。ギフトとしてもおすすめ

会津木綿の研究所 「IIE Lab(イーラボ)」

「名尾和紙」産地最後の一軒が行う和紙の一貫生産

PAPER VALLEY(佐賀県佐賀市)

手すき紙でつくられた本の形のボックス。出産など、人生の節目に合わせた紙が3枚収められており、足形や命名、メッセージなどを書き込んで本棚にしまっておける。思い出の品を一緒に収めても

山間部に位置し、農耕面積の小さい名尾地区では、300年前に福岡県八女市から持ち帰った技術で、農家の副業として手すき和紙造りが行われてきた。最盛期には100軒もの工房が軒を連ねていたが、時代とともに主産物であった提灯紙の需要が減り、50年前には最後の一軒を残すのみに。

そんな中、最後の一軒となった谷口家が代々新しい挑戦を続け、自由なものづくりを通して「名尾手すき和紙」の技術を継承。そして、7代目の谷口玄さんが「残しておきたい紙」というコンセプトのもと、「PAPER VALLEY」というブランドを立ち上げた。ペーパーレス時代だからこそ、特別なものとして、手すき和紙の価値を高める商品を開発。業界でも珍しい、原料からの一貫生産を守り続けている。

PAPER VALLEYの和紙は、通常の楮(こうぞ)ではなく、梶の木が原料。「谷口家の紙は他のどの産地のものとも違う」と言われ続けながら、10数年前にお客として来た植物学者に指摘されるまで、300年もの間自分たちの使う原料を楮と勘違いしていたというエピソードが

梶の木は、繊維が他の原料に比べて長いので、「強度のある紙」を作ることが可能。現代では、インテリアや建材として和紙を使用することが多いので、この強度が重宝がられているという。

PAPER VALLEY

滋賀の扇骨、京都の仕立て 「近江商人」が商う扇子

西川庄六商店(滋賀県近江八幡市)

ただ扇ぐ道具としてではなく、ファッションとして楽しめ、大切な人に贈りたくなる扇子造りを心掛ける

1585年創業の西川庄六商店は、滋賀県近江八幡市で創業したいわゆる「近江商人」の店。扇骨は滋賀県高島市で、上絵、折りなどの仕立ては京都で、それぞれの職人が長きにわたり受け継いできた、伝統の製法で扇子を作る。

西川庄六商店の扇子は遊び心満載。「定規扇子・竹」は、その名の通り親骨に滋賀県で作られた本物の竹のものさしを使用している

長い下積み時代に、師匠の仕事を見ながら自分の技術を向上させてきた70~80代の職人たちが、今も現役で活躍している。使用している仕事道具も、自身で工夫を凝らして作った物が多いという。

西川庄六商店

 

日本が世界に誇る工芸品の技術を、新世代の後継者たちが新しい形で国内・海外問わず発信している試みの数々。実際に手に取り、使ってみることで応援してはいかがだろう。

「大日本市」公式サイト

Photo Gallary15

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