マッチングアプリで「劇場型・国際ロマンス詐欺」が激増中! | FRIDAYデジタル

マッチングアプリで「劇場型・国際ロマンス詐欺」が激増中!

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「自分が騙されたとは思いたくない」…1300万円の被害も!

東京オリンピック・パラリンピック選手村付近で、世界最大級のマッチングアプリ「Tinder(ティンダー)」を起動すると、肉体美を誇示する多種多様な競技の選手たちが表示されるといったことが話題になったのは、7月下旬。

日本でも今では広く浸透し、若者だけでなく、幅広い層がごく普通に利用するようになっている。そんな中、Tinderを利用する都内の女子大生(19歳)から、こんな話を聞いた。

「Tinderでいろいろな人とやりとりするようになって驚いたのが、いま、ホストの人の利用がすごく多いこと。コロナ禍で収入が減っている分、Tinderで営業しているみたいで、最初からホストだと言う人もいるけど、すぐに店に勧誘するわけではなく、ある程度やりとしりしてから、『実はホストをやっていて』……と言いだすパターンが多いですね。 

しかも、その言い分がみんなそっくりで、必ず『将来起業したくて、そのための資金作りでホストをやっている』という夢を語るんですよ。あまりに同じ話をする人が多いので、たぶんコロナ禍で売り上げが落ちているお店などがマニュアル的に指示しているのではないかと思います」

日本でも一気に広まったマッチングアプリが、すでにホストや宗教勧誘の場になってきているのか。こうした現状について、ITジャーナリストの三上洋氏は言う。

「マッチングアプリ全般に言えることですが、ホストが色恋営業に利用しているケースが増えているという声はSNSでも聞こえてきます。早めに自分がホストであると話すケースもあれば、疑似恋愛のように振る舞って相手をその気にさせる、いわゆる『色恋営業』もある。 

他に、ネットワークビジネスの勧誘もあって、数回やり取りした後、1回会うか会わないかくらいのときに『パーティに行こう』とか『有名人がいるから紹介する』などと言って、複数の人が集まる場所に連れて行くというパターンが多いんですね。ただし、これらはコロナ禍に限らず、かなり前から見られるケースです」

マッチングアプリ⇒LINE⇒偽の投資サイト…

一方、マッチングアプリについてコロナ禍で問題になっているのは、国際ロマンス詐欺のやり方が変わっていることだと三上氏は指摘する。

「昨年末頃から被害者が増えていますが、まず1つは今まで国際ロマンス詐欺に使われてきたTinderばかりでなく、日本の国内アプリも使われるようになっていること。 

例えば、台湾人とかアメリカ人だと称して、いま日本にいると言い、仲良くなっていくうちに『コロナでなかなか会えないから、コロナが明けたら会おうね』などと言うんですよ。実際、私がインタビューした女性には、1300万円とられてしまった方もいました」

この女性・Aさんの場合、マッチングアプリで知り合った男性とLINEでお互いに「辛いね」「苦しいね」などとやりとりしているうちに、心を許してしまったそうだ。

「その男性が『俺、コロナで収入が減っているけど、仮想通貨でなんとかなっているんだよ』『このサイトなんだけど、Aさんも少額だけやってみない?』と何度も言うので、彼の気持ちをつなぎとめたい思いもあって、仕方なく1回だけやってみたそうです。すると、仮想通貨の取引サイトで本当に儲けが出て、『これは良いかも』となり、『だったら、俺も〇〇円くらい預けているから、Aさんも少し預けてみたら?』と勧められて。ところが、ある程度の預け額になると、今度は仮想通貨のサイトから連絡が来るんです」

その連絡は、「オーストラリアの仮想通貨サイトだから、税金がかかる」「税金分を払えないなら口座差し止めになる」というもの。それがかなりの金額で、どんどん口座にお金を入れるようになり、一定額を入れないとポイントがもらえないということもあり、結局たくさんお金を入れてしまったのだと言う。

「そのとき、紹介した彼は『なんとか取り戻さなきゃ』と彼女の味方として動くんですが、そこまでで口座に入れた額は約900万円。その後さらにお金が必要になって父親にお金を貸してくれと頼むと、『詐欺だ』と言われ、一緒に消費生活センターに行くんですよ。でも、実際にそうした詐欺の事例はあっても、消費生活センターでは証拠がない以上、立場上それを詐欺だとは断言できず、『気を付けて』と言うくらいしかできないんですよ」

「詐欺とは断言できない」と言われると、もともと彼女自身は彼を信じたい気持ちがあるだけに、もうちょっと頑張ってみようと、さらにもう少しお金を入れる。それが最終的に1300万円にもなり、彼にドロンされてしまったという話だ。

「Aさんは実際に仮想通貨のサイトに1300万円全額を入れていますが、このサイトは実在するサイトに見せかけていて、実は彼女を騙すためだけに作られた、彼女専用の詐欺サイトです。しかも、同様の被害がかなりいるらしく、そういう被害者が集まっているLINEグループには70人くらいいるそうです」

これまで国際ロマンス詐欺は、日本に来た弁護士や軍人などを騙り、日本の女性を騙してお金をとるものだった。ところが、コロナ禍で実際に会えないことで、投資に持ちこむというやり方に変わってきているのだという。

「偽の仮想通貨サイトを使い、実際に儲けさせることで相手に信じ込ませてお金をとるんです。もちろん偽の仮想通貨サイトと彼はグルなわけです。おそらく何らかの犯罪グループがやっていると思われる『劇場型』の詐欺ですね」 

被害者はごく普通の会社員

国際ロマンス詐欺の新たな手法の特徴は、日本のマッチングアプリを使い、日本語で出会うこと。マッチングアプリはあくまで「出会いの入り口」の役割だけで、すぐにLINEに移動することだと三上氏は説明する。

しかも、「国際ロマンス詐欺」「1300万円の被害」などと聞くと、資産家など特別な人を狙った遠い世界のイメージもあるが、被害者はごく普通の会社員などが多いという。

「Aさんの場合も、別に多額の貯金があったわけではなく、本人の収入以外に親からの借金、さらに消費者金融の利用もありました。こうした詐欺で被害額が大きいのは女性で、色恋営業からの結婚詐欺が多いんですよ。男性の場合、デート商法など、気持ちが悪いと思えばやめれば良いのに対し、女性の場合、自分が騙されたとは思いたくない、詐欺だと信じないケースが多いからだと思います」

今はマッチングアプリへの抵抗感がなくなっているからこそ、こうした詐欺の被害は今では誰にでも起こりうることになっていると三上氏は警鐘を鳴らす。

「マッチングアプリは『インターネット異性紹介事業』で法律的にも問題ないですし、本人確認があるから、いわゆる出会い系より安心だと思っている人は多いですよね。しかし、免許画像も偽造できますし、実際、画像流出事件も起こっているように、別人を騙ることは不可能ではありません。本人確認=安心ではないと言うことを覚えておくことが必要です」

また、「独身証明書」を提出させるサイトも存在するそうで、独身証明書自体は自治体で発行できるものの、それでも詐欺は起きているという。何故なら、「独身」が事実でも、そこに悪意がないとは言い切れないからだ。

では、怪しいケースを見分ける方法はないのだろうか。

「ホスト系はわかりやすく『お店に来て』でアウト。詐欺の場合は、マッチングアプリからすぐにLINEに移りたがること。プラスにせよマイナスにせよ、お金の話が出ること。『こんなに儲かる』『お金あげる』『投資』などの言葉が出たらアウトです」

もちろんマッチングアプリ自体が悪いわけではないが、誰もが当たり前に使うようになった今、そこにはかなりの悪意も紛れ込んでいることは肝に銘じておく必要があるだろう。

三上洋 ITジャーナリスト。文教大学情報学部非常勤講師(SNS文化論/ネット炎上)。セキュリティ、ネット事件、スマートフォンが専門。一般向けセキュリティ記事をウェブに執筆する他、テレビ・ラジオでの解説多数。。最新のIT情報満載の「ライブメディア情報番組 UstToday」(毎週月曜21時に配信)にも出演中。

  • 取材・文田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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