東京2020パラリンピック「歓喜と熱狂の13日間」
感動をありがとう! 過去最多254人の代表選手が戦い、51個のメダルを獲得!「感涙の名場面」をプレイバック!!
【水泳】鈴木孝幸 (34)
パラレコード更新の熱泳で日本の金メダル第1号!
男子100m 自由形 金メダル
男子200m 自由形 銀メダル
男子50m 自由形 銀メダル
男子150m 個人メドレー 銅メダル
男子50m 平泳ぎ 銅メダル

変化する大会の意義と選手たちの可能性
「パラリンピックに出場する選手は、みんな自分のハンディキャップを進んで衆目に晒(さら)しているわけです。だから、めっちゃポジティブな選手が多いんですよ。僕も含めて!」
そう話してくれたのは、パラリンピック4回目の出場で、初めて金メダルを獲得した水泳の木村敬一(31)だ。
パラリンピアンに取材すると、前向きな言葉を発する選手が多かったし、現実に社会に変化をもたらしている。東京2020大会の最終日、女子マラソンで金メダルを手にした道下美里(44)は、福岡市の大濠公園を練習拠点としているが、彼女が走り始めた当初、ガイドランナーと共に走る道下のことを怪訝(けげん)に思う人が多かった。
しかし、今では地元の人たちが道下を励ます言葉を送るようになった。意図したわけではないだろうが、彼女は走ることで共生社会の実現を進めたのだ。
実際にパラリンピックも変化している。これまでは福祉の文脈で語られることが多かったが、エンターテインメントとして成立する競技も出てきた。
なかでも、男子車いすバスケットボールはシーソーゲームが多く、スリル満点。リオデジャネイロ大会では9位だった日本だが、今大会はシュートの正確性、スピード、戦術とどれをとっても他国にヒケを取ることはなく、準決勝のイギリス戦、そして敗れはしたものの、決勝のアメリカ戦と中身の濃い戦いを繰り広げた。
とりわけ、SNSで『SLAM DUNK』の登場人物の一人、流川楓に似ていると評判になった背番号2の鳥海連志(ちょうかいれんし)(22)の活躍には目を瞠(みは)った。表情を変えずにビッグプレーを連発する姿はまさにクール。とくにオフェンスリバウンドを奪う技術には、毎度唸(うな)らされた。
いつの間にかゴール下でポジションを獲得し、リバウンドを奪ってしまう。その技術は腕の長い選手を揃えるアメリカ戦でも発揮されていた。リオ大会では戦力としては物足りなかった鳥海が、5年の歳月を経て世界を魅了する選手になり、3年後のパリも楽しみでならない。
パラリンピックはこれだけの関心を集めたわけだが、閉幕と共に選手たちは問題に直面している。体育館をはじめとした練習可能な施設が今後、閉鎖される可能性があるのだ。障がい者へのインフラ整備は、超高齢化社会を迎えつつある日本の資産にも繋がるはずだが……。
今回、ついに金メダルを手にした木村は言う。
「日本で街を歩いていると、余裕がないなあと感じます。みんな、急いでいるというか。あと、ヘルプする時も『周りにカッコつけてると思われるんじゃないか』と思う人も多いようです。アメリカ人なんて、『どうだ。俺、カッコいいだろ?』という感じでヘルプしてくれるんで、楽しいんですよ。いろいろな意味で余裕のある社会になって欲しいですね」
【水泳】山田美幸 (15)
女子100m 背泳ぎ 銀メダル
女子50m 背泳ぎ 銀メダル

【水泳】木村敬一 (31)
【水泳】富田宇宙(うちゅう) (32)
木村敬一(写真左)
男子100m バタフライ 金メダル
男子100m 平泳ぎ 銀メダル
富田宇宙(写真右)
男子100m バタフライ 銀メダル
男子400m 自由形 銀メダル
男子200m 個人メドレー 銅メダル

【陸上】佐藤友祈(ともき) (32)
男子1500m 金メダル
男子400m 金メダル

【陸上】山本 篤 (39)
男子走り幅跳び 4位

【トライアスロン】宇田秀生 (34)
男子個人 銀メダル

【陸上】道下美里 (44)
女子マラソン 金メダル

【バスケットボール】男子車いすバスケットボール
銀メダル

【ボッチャ】杉村英孝 (39)
混合個人 金メダル
混合チーム 銅メダル

【ラグビー】車いすラグビー
銅メダル

【テニス】国枝慎吾 (37)
男子シングルス 金メダル

【テニス】上地結衣 (27)
女子シングルス 銀メダル
女子ダブルス 銅メダル

【自転車競技(ロード)】杉浦佳子 (50)
女子ロードレース 金メダル
女子タイムトライアル 金メダル

【バドミントン】里見紗李奈(さりな) (23)
女子シングルス 金メダル
女子ダブルス 金メダル

『FRIDAY』2021年10月1日号より
文:生島淳(スポーツジャーナリスト)写真:アフロ、共同通信社、時事通信社、読売新聞社