キンプリ岩橋玄樹休業に見る、“翳りのアイドル”最強論 | FRIDAYデジタル

キンプリ岩橋玄樹休業に見る、“翳りのアイドル”最強論

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ジャニーズ事務所からこの5月にデビューし、テレビで見ない日がないほど活躍の場を広げているアイドルグループKing&Prince。そのメンバーの一人、岩橋玄樹が11月から休業するという。新人とはいえ、あのジャニーズ事務所から満を持してデビューしたグループのメンバー休業。その事実がもたらす意味を、ジャニヲタ歴25年のライター喜久坂京がレポートする。

情報バラエティ番組の収録なのか、青いサッカーのユニフォーム姿で、日テレのビルに向かう岩橋玄樹
情報バラエティ番組の収録なのか、青いサッカーのユニフォーム姿で、日テレのビルに向かう岩橋玄樹

「“妖しさ”と“危うさ”こそがジャニーズアイドルの魅力である」と、かつてミュージシャンの近田春夫氏は、週刊文春の『考えるヒット』に書いていた。確かにジャニヲタというのは、その“妖しさ”と“危うさ”の魅力に伴う不透明で不安定な部分を妄想し心配し、自分は真の理解者でありたいと願う、なかなか面倒くさい生き物でもある。

今年の5月にデビューし、デビュー曲が70万枚を超えるヒットとなった6人組の大型新人ユニットKing&Princeのメンバー・岩橋玄樹が、子供の頃から患っていたパニック障害の治療を理由に、休業に入ることが発表された。

King&Princeから、デビュー後わずか半年で休業するメンバーが現れたことは、ジャニーズに詳しくない人であれば、「期待の星だったのに、もう、一人抜けるなんて。ジャニーズが弱体化している証拠だ」と思うかもしれない。でも、岩橋が「必ず戻ってきます」と宣言し、メンバーもコメントを発表している点は、これまでのジャニーズ事務所にはなかった透明性だ。手遅れになる前に、まず精神と肉体の健康を取り戻す。今回の、岩橋の休業宣言は、つまり、ブラック企業からホワイト企業へと移行するための、ジャニーズ事務所健全化の第一歩となりうる。また、“夢を与える”ことがアイドルの至上命題とはいえ、このSNSコミュニケーション全盛の時代には、“妖しさ”という魅力・魔力を公私ともに放ち続けるのは難しい。でも、病気治療して復活というストーリーであれば、若さゆえの“危うさ”を魅力・魔力へと昇華できるのだ。

岩橋が“パニック障害”を告白したのは、フジテレビ深夜の『RIDE ON TIME』というドキュメンタリー番組だった。ジャニーズのグループを素材にした『情熱大陸』のような番組で、10月はKing&Princeに密着していた。10月19日の放送では、ライヴのリハーサル中に岩橋がメンバーの神宮寺勇太に食ってかかるシーンが放送され、そのあと、岩橋が「小さい頃のいじめが原因でなったパニック障害とずっと戦っている。メンバーの中でそのことを知っているのは神宮寺だけ。だからつい(甘えて)、彼に感情をぶつけてしまう」という告白があった。

ドキュメンタリーを通して病を告白することにも驚かされたが、それ以前に、『RIDE ON TIME』のようなある意味“ネタばらし”番組を、デビューから半年で放送してしまうことも衝撃だった。本来なら、様々なことを乗り越え、何かを達成してから放送されるべきものである。成功の陰にはこんな努力や信念が、と、ある種の謎解きをしていけることが人物ドキュメンタリーの醍醐味だが、この番組では早くも、デビューまでの葛藤や、デビューコンサートまでのメンバーの関係性を丁寧に追った、彼らの裏側を見せていた。第一回の放送を観た時点での筆者の感想は、正直「出来過ぎだし、やり過ぎ」というもので、それは、デビューコンサートを観たときの感想と同じものだった。

夏に彼らのデビューライヴを観たときも、豪華かつサプライズたっぷりの演出や彼らのスキルの高さに感動はしたものの、「デビューでここまでやってしまうなんて、次にこれ以上のものを発表するのは難しいんじゃないか」と思ったことを覚えている。ファンのことを「ティアラ」と呼び、デビューコンサートでもう“メンバー紹介ソング”が用意されるなど、そのお膳立ての多さに、(あくまで古参の)ジャニヲタとしては、「あれ? こういうのって、活動する過程で生まれるのがいいのになぁ」と、純粋にその楽しさに乗れない自分がいた(ババアの嫉妬、と言われればそれまでかもしれない)。

でも、この勢いに、時流にRIDE ONできているときは気づかないのだ。順調すぎると、整いすぎると、人間はやがてそれに飽きるということに。案の定、セカンドシングルは、デビュー曲『シンデレラガール』の“アンサーソング”とは言っても、あまり印象に残らない曲になってしまった。

そこで、岩橋の突然の休業宣言である。デビューしてわずか半年で、メンバーが一人活動を離れるというのは、12年前に彗星の如くデビューしたKAT-TUNの状況にも酷似している。KAT-TUNの場合、赤西仁が突然アメリカに単身留学したが、その時も突然の発表だった。そもそも、Jr.時代から熱狂的なファンがいて、満を持してのデビューという成り立ちも、King&PrinceはKAT-TUNによく似ている。Jr.時代から続くグループのデビューは、スタートダッシュこそすごいが、実は、その後のドラマが作りにくい。メンバーが1人も欠けることなく長く続いているグループにはV6と嵐がいるが、どちらもジャニー社長の閃きで、即席で集められたグループだ。他に、9人から4人になってしまったNEWSにしても、ジャニーズの場合、即席グループのほうがその後のドラマが生まれやすい。それも当然だ。だって彼らの最大の魅力は、“妖しさ”と“危うさ”なのだから――。

岩橋がドキュメンタリー番組で病気を告白したこと。その流れで、病気療養のための休養を発表したことは、ジャニーズ事務所にとっても画期的な決断だった。なぜならそれは、タレントを使い捨てにするのではなく、大切に、長い目で育てていくという宣言でもあったのだから。順調すぎるスタートダッシュを切ったグループが、最初にぶつかった大きな壁。『RIDE ON TIME』では、パニック障害の告白以外にも、岩橋が、「僕が、5人を輝かせる」と話していたことが印象的だった。老舗アイドル誌のMYOJOで、5年連続“恋人にしたいJr.”に選ばれたスター・岩橋が、アイドルの“光”と“影”の、その“影”の部分を一手に引き受けると覚悟していたことに、驚かされた。

欅坂46の平手友梨奈しかり、現代は、“翳りあるアイドル”こそが美しい時代なのかもしれない。今時のアイドルは、ルックスが良いだけでなく、歌も踊りもうまくて、喋りもできて、健康で、天然で、明るい。でも、そんなアイドルばかりでは、一般的なファンはともかく、濃いオタクは正直“飽きる”。光あるところに影があるように、アイドルの集団が輝くとき、そこには同時に大きな影もまた刻まれる。岩橋の休業には寂しさを感じつつも、いつかきっと、King&Princeが大きくなるために必要な葛藤だったと思えるときが来るはずだ。実際、筆者は、この先の彼らが、デビューコンサートを観た後よりも、俄然楽しみになってきた。

これだから、ジャニヲタはやめられない。

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  • 喜久坂京

    ジャニヲタ歴25年のライター。有名人のインタビュー記事を中心に執筆活動を行う。ジャニーズのライブが好きすぎて、最高で舞台やソロコンなども含め、年150公演に足を運んだことも。広くジャニーズの素晴らしさを知ってほしいと思い、FRIDAY デジタルにジャニーズのコラムを寄稿することに。

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