俳優・古舘寛治氏が唱える「投票倍増計画」その狙いと中身 | FRIDAYデジタル

俳優・古舘寛治氏が唱える「投票倍増計画」その狙いと中身

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「普通の俳優に戻りたいですよ(笑)」

Twitterでちょくちょく見かける「♯投票倍増委員会」というハッシュタグがある。

実はこれ、ドラマ『コタキ兄弟と四苦八苦』の主演や『逃げるは恥だが役に立つ』などの様々なドラマ・映画でおなじみの名優・古舘寛治さんが立ち上げたタグである。

古舘さんはTwitterのアカウント名を「古館寛治は言う、投票率80%こそが日本人の革命だ!投票倍増委員会会員。会員を増やしたい。選挙までは!」とし、政治に関するつぶやきを積極的に日々発信している。

ちなみに、投票倍増委員会の新入会資格は「毎朝『投票率上げたいな~』とつぶやく(Twitterでなくて良い)」「出来るだけTwitter以外でも毎日一人には政治と選挙の話を楽しげにまたは切なげに話す」「ツイートには気が向いたら ♯投票倍増委員会 と記す」というものだ。

「震災以来Twitterをやってきて、批判されながら、家族からはやめとけと言われながら、政治ネタをつぶやいてきました。それでもバカなんで、ずっとつぶやいてきた中で言葉も磨かれていくような気はするんですよ。 

『投票倍増委員会』は、昭和の頃に『所得倍増』を掲げて日本が盛り上がっていた時代もあったことに引っ掛けて、『倍増』という言葉が響くんじゃないかな、と。 

ただ、Twitterを見ていると、どうしても同じような意見の人間だけが集まっているだけなので、なかなか広がっていかないんですよね」 

「投票に行かない人たちを行かせるためには、今まで投票に行っていて、投票率を上げたいと思っている人間が運動するしかないですから…」と古館氏は言う

古舘さんがTwitterでの発信を始めたのは、3.11福島の原発事故前から。インターネットやTwitterなどで情報収集するようになっていた頃、山口県の上関原子力発電所の工事再開をめぐり、反対する住民のもとに警備員たちがやって来て排除しようとし、ある種行政の暴力が行われている衝撃的な映像を目にした。

しかし、それを報じるメディアは全くなかったことから、テレビ局になぜ報道しないのかというメールを送るうち、福島の原発事故が起こったのだと言う。

「原発反対派が危惧していたことがまさに起きて、原発への政府の関わり方や情報の隠蔽、この国の仕組みのダメさ加減がたくさんあらわになった」として、Twitterでずっと発信していたが、注目されるようになったのはある人気ドラマ出演時に政治的発言をしたことから。それが「炎上したというのかバズったというのか」取材が多数来るようになり、と同時に「Twitterでもぼろくそ言われるようになった」

嬉しいですけど、『いやいや、応援してますじゃねぇだろう』と…

コロナ禍で政治が身近なものとなり、もはや誰もが政治に無関心ではいられない昨今の状況。にもかかわらず、自分のような職業でも「政治の話はしないほうが良い」と親切心(?)からアドバイスをくれる同業者もチラホラいる。俳優仲間や監督、プロデューサーなどの作り手などからそういった話をされることは? と問うと。

「そこまで僕を心配してくれる友人はいない(笑)。大体の人は『応援してます』ですよね。嬉しいですけど、『いやいや、応援してますじゃねぇだろう』と。 

自分は言えないけど、みたいなことでしょうけど、『ここまで来てまだ黙っているか』という感じですよね。たぶんみんなが政治的発言をしないのは、言いたいことがあっても言わないで我慢する方が安心する、安全だという感覚なんですよね。 

でも、政治発言に限らず会社でも家庭でも、我慢している人というのはどんどんストレスが溜まっていって、例えば電車で人を殴ったりしちゃうんだと思うんですけど(笑)。逆に僕は全部吐いているので、何のストレスもないんです」

「投票倍増委員会」では、投票率の低さの要因の一つとして挙げられる若者に向けての働きかけもしている。Twitterで「20歳以下の人は『いいね』を押してください」といったアンケートをとったことも、その一つだ。

「反応は数える程度でしたが、それでも面白いことがあって。普段僕のツイートに『いいね』してくれる方は、みんな僕のフォロワーで、悲しいくらいフォロワーしか『いいね』してくれないんです(苦笑)。でも、そのときだけは僕のフォロワーじゃない人たちがいっぱい『いいね』していたんですよ」

さらに、若者を巻き込むために「TikTok」で発信してくれる人もTwitter上で募った。

「若者に向けて発信するにはTikTokが良いよと言う人がいっぱいいるんだけど、そこまでやるエネルギーねえよ(笑)、と。 

そしたら、ある若い女性がTikTok用に『投票倍増委員会』の短い映像を作ってくれ、その後、別の方が様々なバージョンのカッコいい映像を作ってくれたんですよ。 

正直、どこまで届くのかわからないですが、いろいろやってみるうち、気づけば僕のフォロワーでない方なども含め、『投票倍増委員会』のタグを使って下さる方が意外と増えています。これは嬉しいですね」 

投票に行っていない人が行かなければ、投票率は上がらない 

とはいえ、古舘さんのツイートを見ていると、ときどき「あたし、普通の俳優に戻りま~す!」「もっと俳優らしいツイートがしたい。」といった内容が混ざることも。やはり心が折れそうになることもあるのだろうか。

「いや、僕は常に絶望していますから。ときどき笑いも取りたいし (笑)。Twitterで僕が何か発言しても、ほとんど意味がないかもしれないけど、じゃあどうしたらいいのか。 

今まで必ず投票に行っていた人が行ったところで、投票に行っていない人が行かなければ、投票率は上がらない。投票に行かない人たちを行かせるためには、今まで投票に行っていて、投票率を上げたいと思っている人間が運動するしかないですから。 

誰が見ても今、この国はうまくいっていない状態だと思いますが、それを変える方法は投票率を上げる以外にないですよね。 

教育を変えるにしても、結局は政治ですし。投票率5割未満という現状に対して、残り5割の人たちをどう動かすか。 

まぁ、投票率が上がらないのはメディアさんのせいですけどね。日本の忖度メディアがあって、忖度する日本人がいる。どうしたらいいのかという強い絶望と共にずっとツイートしています」

確かに、オリンピック・パラリンピックばかりを連日ハイテンションで取り上げていたテレビ各局が、今度は我々に投票権すらない「自民党総裁選」ばかりをお祭り騒ぎで取り上げている。と思えば、1日中、小室圭氏祭りだ。国民の多くが絶望しそうになっても不思議ではない。

そんなメディアに対して、以下のようなツイートもしている。

「政治がここまで壊れてきても国民が怒らないとしたらその理由の大きな一端はマスコミの報道だろう。報道の自由度ランキング世界67位。メダルどころの話じゃない。国の土壇場。次の選挙に向けたマスコミの頑張り具合が日本の未来を決めると思う」 

古舘さんがナレーションを務めるドキュメンタリー映画『パンケーキを毒見する』の中にも、こうした日本の現状を示す世界ランキングの指標は紹介されている。その一部を紹介すると……。

古舘さんがナレーションを務めるドキュメンタリー映画『パンケーキを毒見する』で紹介されている「日本の現状」を示す世界ランキングの指標

政治がここまで壊れてきても国民が怒らない理由は…

上記のようなデータを踏まえて、こんな苦言、提言をする。

「報道の自由度ランキングで日本は67位でしたが、民主党政権時は11位だったんですよ。 

『悪夢の民主党政権』とか言いますが、あれは自民党を中心として、既得権益を失った政官業の連中が総攻撃しただけのことで、その中にマスコミも含まれているんですよね。当時はマスコミが自由に報道できたから、報道ランキングが11位まで上がったわけで。 

ところが、再び自民党政権に戻り、既得権益を分け合った人たちが甘い蜜を吸い続ける構造になると、マスコミも自民党総裁選挙しか紹介しなくなるんです。その結果が、報道の自由度67位でしょう。 

統計学で物事を見てみると、見事にリアルな世界と統計上のデータがつながっていることに気づきます。 

報道の自由と幸福度と投票率と、数値が高い国は共通しています。と言うと、『スイスは幸福度ランキングが4位なのに投票率40数パーセントだ』とツッコミたがる人もいるでしょうが、スイスは直接民主制なので、日本の比にならないほどの『民主主義国家』なんですよね。 

だから、ある人にはどうでもいいような細々したことも全部、国民投票で決めるんですよ。つまり、あまりに投票の機会が多すぎるから、行けない人も多くて、その結果の40数%。それに対して、日本はみんな代議士に決めさせているから、手を抜いているわけで、だったら代議士を決める選挙くらいは8割行かなきゃいけないと思うわけですよ。 

報道の自由度が高い国では、自由に報道しているから、みんなが真実を知り、政治に興味を持ち、投票に行くから投票率80%になる。 

すると、政治は国民のほうを向いてやるしかないから、嘘もつけなくなり、政治も良くなっていきますよね。すると、自分たちが国を作っている実感があるから、幸福度が上がるわけじゃないですか。完全に辻褄が合うんですよ」 

「既得権益を分け合った人たちが甘い蜜を吸い続ける構造になると、マスコミも自民党総裁選挙しか紹介しなくなるんです。その結果が、報道の自由度67位でしょう」(写真:アフロ)

自民党総裁選ではなく、我々一人一人に投票権がある第49回衆議院議員総選挙は、任期満了の10月21日以降となる見通しだ。衆院選を目前とし、もう一つ大事なことがあると古舘さんは言う。 

「国を良くするためには、権力を固定化させないこと。 

そのためには政権交代することが重要ですが、政権交代しても、そこから次の政権に4~5年は頑張ってもらう気持ちで国民が応援しないといけないですよね。 

長期政権で壊れた様々なものを修復するためには、しばらく辛抱することも必要。それが僕たちにできるかというところですよね。 

それにしても僕、これだけメディアを敵に回していますから、本当にもう干されるんだろうなと思いながら、ずっと発信しています。どこか真っ当な企業が俺をCMで使ってくれたら、この日本は変わるのかなと思うんですけどね。普通の俳優に戻りたいですよ(笑)」 

古舘寛治(ふるたち かんじ) 俳優。大阪府出身。舞台、映画、ドラマにて活躍。 近年は、ドラマ『コタキ兄弟と四苦八苦』(テレビ東京)主演、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)や、映画『子供はわかってあげない』(沖田修一監督)、『淵に立つ』(深田晃司監督)、『罪の声』(土井裕泰監督)などに出演。映画『Annette』(レオス・カラックス監督/第74回カンヌ国際映画祭監督賞受賞作品)、『プリテンダーズ』(熊坂出監督)の公開が控えている。

  • 取材・文田幸和歌子

    1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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