『山健組』 古巣・六代目山口組復帰の「内幕」と抗争の行方 | FRIDAYデジタル

『山健組』 古巣・六代目山口組復帰の「内幕」と抗争の行方

分裂から6年、衝撃の急展開 神戸山口組の中核組織がまさかの出戻り

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昨年夏、山健組は兵庫県高砂市内の喫茶店で会合を開き、半数以上の直参組長が神戸側から離脱する流れになった

<暴力団取材の第一人者で、半世紀に及ぶヤクザ取材の体験を新著『喰うか喰われるか 私の山口組体験』に著したノンフィクション作家・溝口敦氏が、山健組の六代目山口組復帰の内幕について書き下ろした。渾身のレポートをお届けする――>

9月16日午後、五代目山健組(中田浩司(ひろじ)組長)が兵庫県加古川市内の喫茶店で集会を持ち、六代目山口組(司忍組長)への復帰を決めた。

集まった組員からは「ほんとに中田組長は山口組への復帰を望んでいるのか。組長から直に話を聞きたい」「今さら名古屋(弘道会)に尻尾を振るんか」といった質問やヤジが飛んだ。

中田組長は、弘道会系組員を銃撃した実行犯として’19年12月に逮捕、起訴されたが、その前後、しきりに「敵は名古屋(弘道会)だ」と発言していた。そういう中田組長が、弘道会が牛耳る六代目山口組に戻りたがるなど、普通なら考えづらい。

この日、司会・進行を務めたのは福富均・山健組舎弟頭だったが、どういうわけか、復縁話を持ち込んだこの福富や六代目山口組、兵庫県警などは前のめりで、午後2時ごろに始まった会議で30分も経つと、早くもメディアや関係者に向け「集会でひっくり返らず、復縁が決定」という決め打ちを流し始めた。

溝口敦氏の「死闘」が描かれた自伝的ノンフィクション『喰うか喰われるか』

集会では中田組長が拘置所から寄せたという手紙が読み上げられた。若い者の将来を考え、復帰を決めたとある。神戸山口組とはとっくに縁を切っているから、この手紙に反対は唱えづらい。

六代目側の狙い通り山健組は山口組へ復帰した。中田組長はこれから始まる裁判で懲役十数年は打たれるはずだが、六代目側はそういう中田を「幹部」で遇すると決めた。

五代目山健組の中田組長は殺人未遂で起訴され、現在は勾留中。弁護士を通じて指示を出していると言われている

普通、組への新加入者は若衆の列の最末端に座る。以後、新加入者が加わるごとに徐々に順位が上がっていく。神戸山口組で中田組長は直参だったが、彼の遇し方としては、①たとえば弘道会若頭・野内正博率いる野内組の預かりとする、②弘道会の直参で迎える、③六代目山口組の直参として迎える、の3通りがある。中田組長は最高の待遇である③で迎えられ、しかもいきなり幹部の座だ。

山健組を自陣に迎えるメリットは、敵の内情に通じる精鋭を自己の兵力にプラスできることだ。これによって前の親分の首級を挙げることが期待される。山健組は神戸山口組の井上邦雄組長を亡き者にしなければならない。それだけの働きを見せなければ、六代目山口組で座る椅子はないのだ。

いうまでもなく今回の山健組吸収は山口組・高山清司若頭の戦略に基づく。高山若頭は可及的速やかに山口組の分裂抗争を収拾しなければならない。失敗すれば、ヤクザ世界で侮られ、メンツを失う。山口組による平和秩序の維持など、誰も信じなくなる。

当面の目標は神戸山口組の解散、井上邦雄組長の引退である。五代目山健組の吸収は、井上組長の女性関係にまで通じる者たちの抱え込みであり、井上の寝所を襲い、滅多突きにするための方策である。

神戸山口組には中田組長が神戸から離脱した際、神戸側に残った組員が少数いる。これも山健組だが、その與(あたえ)則和若頭がオリンピック開催中の8月5日、神戸市兵庫区の自宅前で何ものかに銃撃された。與が玄関前で迎えに来た軽自動車に乗り込もうとしたところ、接近したスクーターに乗る男が2発拳銃を発射した。1発は外れ、もう1発は左太もも内側をかすめた。與若頭はその場を逃れようと発車させたが、バイクは途中まで追尾し、再攻撃のチャンスを窺った。

中立系組織の組長が推測する。

「犯人は未逮捕です。しかし追撃するなど、必死の殺意が感じられる。六代目山口組のヒットマンと見て間違いない。この男が仮に成功していたら、高山若頭は男を自首させ、六代目山口組が殺ったと天下に示したはずです。しかし殺しに失敗したから自首させなかった。わざわざオリンピック中に強行しながら、失敗したという筋書きはない。なぜ與若頭を取ろうとしたのか。中田山健組吸収の重要性を強調するための布石でした」

神戸山口組の寺岡修若頭は侠道会(広島)池澤望総裁と古くからの兄弟分だが、寺岡はこの池澤、浅野組(岡山)中岡豊総裁らと9月1日、広島県尾道市内で話し合いを持った。一説に寺岡若頭はひそかに高山若頭の意を受け、神戸山口組の解散を西日本の独立系団体に打診したという。

他団体は神戸山口組の解散に必ずしも賛成せず、話し合いは中途半端に終わったようだが、高山若頭は搦め手からも神戸山口組を解体しようとしている。高山若頭は井上組長を取り巻く包囲網をじりじりと狭め、彼を徹底的に孤立させ、なぶり殺しにするつもりだ。神戸山口組の他の大幹部も憎悪の対象だが、それは枝葉の問題、何より井上邦雄のタマを取るのが最終命題なのだ。

兵庫県神戸市内にある「山健組」本部事務所。特定抗争指定暴力団としての指定につき、現在は立ち入り禁止である
窮地に追い込まれた神戸山口組の井上組長(中央)はどう出るのか。自ら白旗を上げることはあるのだろうか
分裂抗争のキーマンである六代目山口組のナンバー2・高山若頭(中央)の「次の手」に、警察当局も注目している

『FRIDAY』2021年10月8日号より

  • 取材・文溝口 敦

    ’42年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。暴力団取材の第一人者。日本最大の暴力団組織と半世紀にわたって対峙し続けた内幕を記した最新刊『喰うか喰われるか 私の山口組体験』(講談社)が発売中

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