ネットで賛否両論!『妻の飯がマズくて離婚したい』編集部の狙い
「料理なんて腹に入れば、なんでも同じ…」
「ポテサラ」「唐揚げ」に続き、『月曜から夜ふかし』(10月4日放送分/日本テレビ系)の中で、街頭インタビューを受けた男性が夕食に焼きそば単品を出されたことで離婚した語ったことが、ネット上で炎上していた。
料理や家事のテーマは、何かと議論のネタになりやすい。そんな中、先日、賛否両論を巻き起こしてSNSに何度もトレンド入りしていたのが、「ママスタセレクト」内の漫画『妻の飯がマズくて離婚したい』だ。
主人公は、3人の子を持ち、その教育資金などを考え、パートで仕事しつつ節約生活を送る主婦。しかし、夫は自分の小遣いでこっそり高級レストランで食事をしたかと思えば、妻の料理がマズいから離婚すら考えたことがあると言う。
てっきり自分で家事をせず、文句ばかり言うモラハラ夫の話かと最初は思った。しかし、夫に対する批判がある一方で、夫にとって食事は一番の楽しみであり、外食も惣菜を買うことも許されず、「料理なんて腹に入ればなんでも同じ」と言い切り、料理下手な自覚はあるのに努力もしない妻への批判も続出。双方の意見がぶつかり合うかたちで、大いに盛り上がる結果になったが、それこそがまさに狙い通りだったのではないか。ママスタセレクトに聞くと、こんな返答があった。
「この反響は、意外でした。SNSでの反響や読者の声も、ここまでたくさんいただけるとは思っておりませんでした。 『料理が苦手ならできる方が料理をしたらいいのに』という方や、『夫側に同情する』という方、『物語が面白い』という方など、夫婦だけでなく、恋人同士、独身の方など、様々なタイプの方が読んでくださったのが分かりました」
物語はすべて実話…それぞれが育った家庭環境にも踏み込む
そもそも「メシマズ」をテーマにしたのは、読者から編集部に寄せられた声がきっかけであり、編集部内でも自身の両親のメシマズ体験や学生時代のお弁当の話、個性的なオリジナルレシピなどの経験談が続出。その盛り上がりを機に、連載にしてみようという運びになったそうだ。
ちなみに、ママスタセレクトは媒体ポリシーとして、「物語はすべて実話であること」を条件としているとか。その上で、読者の体験談、ライターやイラストレーター自身の体験談などを紹介している。つまり、本作の流れも全て実話ベースなのだ。
本作では「料理が苦手・好きになれない」「お腹に入ればなんでも同じ」妻と、「食べることが好きで、楽しみで、外食でも惣菜でも良いから美味しいものが食べたい」夫の違いを描く上で、どちらが良い・悪いではなく、それぞれが育った家庭環境にも踏み込んでいる。その理由とは。
「私たちの媒体方針が『読者に寄り添う』であるため、正しいか正しくないかではなく、まずは双方の気持ちに寄り添うことが大切だと考えております。その上で解決できる道筋を示すことが記事作りでは必要だと思っております」
家族にとっての「食事の意味」を考えさせられる展開に…
夫婦にとって、家族にとって、「食事」とはどんなものなのだろうか。
「人それぞれ、家族それぞれだと思っております。
物語内でもあるように、生活の中で『食事』の比重が大きい方もいれば、そうでない方もいます。子育てにおいても、親が一生懸命作っても食べない子どももいます。家事や仕事が忙しくて食事に避ける時間が作れない方もいます。それなのに『食事作り頑張ろう』は辛くなってしまいます。
一方で食事を作るのが好きだったり、食事を作るのは好きではないけど美味しいものを食べるのが好き、そういう方は食事に使う労力や時間はあっていいと思います。
『家族にとって食事とは』は“家族”で正解を決めていけばよいのではと思います」
本作は多様性を描く上で、誰の生活にも密接に関わる食・料理の話を取り上げていることから、思いがけないほどの盛り上がりを見せた。
そして、何より実話だからこそ、生々しくリアルに刺さる内容となったのだろう。
では、読者からの体験談の投稿で注目するポイントや、連載のテーマ決め、取材において大事にされていることとは。
「媒体方針でもある『共感』『お土産』を大切にしています。テーマはリアリティーを優先し、世の中的には少数派と思われるお悩みでも取り上げるようにしています。記事を読んで『そういうことあるよね』と共感できること、そしておこがましい気もしますが、読者の皆様の今後の生活に少しでも役立てていただければ嬉しいと思っております」
- 取材・文:田幸和歌子
ライター
1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマに関するコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。