「このままではコロナ第6波は破壊的規模に」AI専門家の提言とは | FRIDAYデジタル

「このままではコロナ第6波は破壊的規模に」AI専門家の提言とは

~8ヵ月後では遅すぎる3回目ワクチン~

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劇的な新規感染者の減少は、9月のシミュレーションでも「想定済み」

10月17日以降、国内の1日当たりの新型コロナウイルス新規感染者は500人を下回り、今月1日には一気に86人にまで減少した。新規感染者数が100人未満となるのは昨年の6月27日以来だ。

東京都では新たな感染者が50人以下の日が続いていたが、1日には9人に減り、昨年5月31日以来の1桁に。東京都の新規感染者数の最多は8月13日の5908人(集計ミスの修正に伴い5773人から変更された)。それから2ヵ月以上が経ち、感染者数は激減している。

当サイトは9月、内閣官房の「COVID-19 AI・シミュレーションプロジェクト」研究開発チームのメンバーである東京大学大学院工学系研究科・大澤幸生教授に「ワクチンの3回目接種の必要性」について取材したが、大澤先生のシミュレーション結果も同様に、東京都の新規感染者数は10月下旬から11月上旬にかけて劇的な減少を示している。

このまま減り続けても3回目のワクチン、すなわちブースター接種は必要なのか? そもそも第6波は来るのか? 「ブースター接種は必須」と主張する大澤先生は現状をどう捉えるのか、あらためて聞いてみた。

緊急事態宣言とまん延防止重点措置は9月30日に全面解除。都内の人手は大幅に増加した。全国の繁華街でも夜のにぎわいが戻ってきている。第6波に備え、新政権はどんなコロナ対策を打ち出すのか(写真:アフロ)

ブースター接種が2回目の接種から「8ヵ月後」では第6波はほぼ間違いなく来る

まず、新規感染者が急速に減少に転じたのはなぜなのだろうか。 

「ワクチンの効果が要因の1つであることは確かです。私の研究でも、ワクチン接種を条件に入れずにシミュレーションすると惨憺たる結果になりました。もちろん、ワクチン接種の進展だけが減少の要因ではありませんが」

ワクチンを2回打ち終えた人の割合が50%を超えたと政府が発表したのは9月13日。現在は70%以上に達している。8月中旬の段階では接種率はまだ30%台だったが、9月以降は確かにワクチン接種は進んでいる。

全国の新規感染者がゼロにはならないまでも、減少傾向はこのまま続くのか。「第6波は来る」とみる専門家は多いようだが、街中では「本当に来るの?」との声も聞かれる。

「ブースター接種をしなければ、第6波はほぼ間違いなく来ると考えています。ワクチンの追加接種については明らかに必要で、私のシミュレーション結果から言うと、ブースター接種は2回目の接種から4ヵ月後が効果的です。 

例えば私の共同研究者の福島県立医科大学の坪倉正治教授などは今、ワクチンを2回接種した人に対して免疫の減衰について評価していますが、それらの調査から私が把握しているのは、接種してからわずか3ヵ月ほどで抗体量はぐんと下がる傾向にあるということです。多くの人が元の免疫のない状態に戻ると、感染者は相当な人数になります。 

このような傾向からも、4ヵ月後くらいの抗体減弱時には3回目を打つのが効果的と考えられます。厚生労働省は8ヵ月後にする考えのようですが、そのペースでは破壊的な第6波がやってくると思います」

日本で1回目の接種が始まったのは医療従事者が今年の2月、高齢者が4月からだった。厚労省は2回接種を終えた希望者には3回目の接種を行うとした上で、対象を2回目接種からおおむね8ヵ月以上経った人とする考えを示している。医療従事者は12月から、高齢者や65歳以下の人は来年の1月以降に接種が始まる見通しのようだ。

「ブースター接種を8ヵ月後にすると大きな第6波が来るということについては、内閣官房のAIシミュレーションプロジェクトに関わる私以外の研究者たちも同じ結果を出しているんです。6ヵ月後にした場合に関しては結果は多様ですが、基本的には6ヵ月後でもある程度の第6波は来るということが各研究者のシミュレーションで示されています」

ブースター接種を3つのタイミングごとにシミュレーションすると、こんな結果が。内閣官房の「COVID-19 AI・シミュレーションプロジェクト」のサイトで公開された大澤先生の研究報告より

「イギリス」のコロナ対策は失敗事例。日本は真似をしてはいけない

しかし実際のところ、2回目の接種から6ヵ月後のブースター接種は可能なのか? 大澤先生が効果的とする4ヵ月後ともなると、4月に2回目のワクチンを打った高齢者は8月からブースター接種を始める必要があるわけで、それはもはや不可能だ。

「厚労省の案では12月のブースター接種は医療従事者のみですから、6月に2回目を打った私の両親も今のところは6ヵ月後に3回目を打つことはできないでしょう」

内閣官房のAIシミュレーションチームの研究結果はウェブにアップされている。研究者たちが共通して「3回目接種の時期は8ヵ月後では遅い」と判断していることは、おそらく分科会なども認識しているだろう。しかし今のところ、研究者のシミュレーション結果は国の方針には反映されていないようだ。

「我々の考えを内閣官房が受け入れるとは限りませんが、8ヵ月後というのはさすがに改善されると思います。プロジェクトに携わる研究者が一致して8ヵ月後では遅いと言っているわけですから。 

対象者全員を一律で何ヵ月後とするのが無理であれば、何か疾患を持っているとか何らかの原因で免疫が減弱している人に関しては、ブースター接種のタイミングを医療従事者の判断に任せるという方法もあるんです。そうすることの有効性を私は主張しています」

厚労省のホームページで公開されている10月28日に開かれた「第25回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会」の資料には、「追加接種の時期は、諸外国の動向や現時点で得られている科学的知見から、2回接種完了から概ね8ヵ月以上後とする」とある。

厚労省が参考にした「諸外国」がどこを指すかは不明だが、たとえば世界に先駆けて昨年12月からワクチン接種を本格化させたイギリスでは、9月中旬に3回目接種が始まった。しかし10月21日に1日の感染者が5万人を超え、感染が再拡大している。

「ブースター接種のタイミングとマスクを着用しない市民の交流の仕方に問題があるんだと思います。イギリスなどのやり方は失敗事例ですから、日本は同じことをしてはいけない。ただ、日本でこれだけ感染者が減っても国民はちゃんとマスクを着けて生活していますから、イギリスのような状態にはならないでしょう」

イギリスでは10月21日、3ヵ月ぶりに感染者が5万人を超えた。子どもへの接種が進まないこと、免疫力の低下、マスク着用の規制がなくなったことなどが感染再拡大の要因として指摘されている。確かに、マスクを着けずに街中を行き交う人が多い

「ワクチンパスポート」は12月の導入である程度の効果が見込める

日本では9月30日に緊急事態宣言とまん延防止重点措置が全面解除され、10月25日には飲食店への営業時間の短縮要請も解除された。専門家が「第6波は来る」と口を揃える中、ブースター接種が始まる前に何もかも解除していいものだろうか。

「いいような気もするし、危険な気もするというところです。前者の根拠は、新規感染者の数が非常に減少している状態だからです。私が去年発刊した論文でもその検証はしていて、感染者がピークの10分の1よりも下がった状態で人の往来を自由化しても、それほどの感染拡大は起きないという結果が出ているんです。 

ただ、100パーセントそうなるということではありません。シミュレーションではまた、緊急事態宣言で人との接触を8割下げて感染者がピークに近いたところで人の往来を元に戻すと、緊急事態宣言を発令しない場合の2倍まで感染が広がるといった結果も出ている。緊急事態宣言を発令することによって、解放した時にかえって爆発的な感染が起こることを示しています。 

今は感染者が十分少なくなっていますが、問題は潜在的な感染者が果たしてどれだけいるかですね。おそらく、いると思います。今はワクチン接種の効果が落ち始めている時期ですから、人の往来や交流を元に戻すのはやはり危険かもしれません」

3回目のワクチンを打ち終わるまでは、一気に解放するのは早いということか。

ところで、ワクチン接種済みやPCR検査の陰性を証明する「ワクチン・検査パッケージ」の政府による実証実験が、イベントや観光、飲食店などを対象に各地で始まっている。

大澤先生はブースター接種のタイミングに加えワクチンパスポートを国内で導入した場合のシミュレーション結果も公開しているが、導入の効果は一体どうなのだろう。

「シミュレーションでは、ワクチンパスポートが11月1日から導入されて全員に広まっていれば、非常に効果があるという結果が出ています。しかし、実際にはまだ正式には導入されていません。 

12月にでもだいぶポピュラーになればある程度の効果は見込めるので、それで何とかブースター接種が始まるまで感染拡大を抑えられたらと考えています。要はブースター接種とワクチンパスポートの合わせ技でいく。私はこれを抗体カクテルになぞらえて戦略カクテルと呼んでいます。 

ただ、今は全てにおいて歯車がうまく回っているとは言えません。ブースター接種は8ヵ月後、ワクチンパスポートに相当する「ワクチン・検査パッケージ」も実証実験の段階。決して安心できる状態ではないと思います」

ここまで新規感染者数が減少すると、つい気が緩みがちになる。しかし、大澤先生をはじめ専門家たちは「第6波は来る」と指摘している。コロナ対策で失敗を繰り返した安倍・菅政権の二の舞を演じることのないよう、岸田新政権には本当に必要なやるべき対策を講じてもらいたいものだ。

大澤幸生(おおさわ・ゆきお)東京大学工学系研究科システム創成学専攻教授。1968年京都生まれ。1995年に東京大学工学研究科で工学博士を取得後、大阪大学基礎工学研究科助手、筑波大学ビジネス科学研究科助教授、東京大学情報理工学研究科特任助教授などを経て2009年より現職。専門はシステムデザイン、知識工学、ビジネス科学。チャンス発見、データジャケットに基づくイノベーション市場、データの可視化と価値化などを研究。

『未来の売れ筋発掘学』(編著、ダイヤモンド社)、『ビジネスチャンス発見の技術』(岩波アクティブ新書)、『イノベーションの発想技術』(日本経済新聞出版社)、『データ市場』(近代科学社)などの著書がある。

「ワクチン接種 データから導かれた『3回目接種が必要な理由』」(9/8公開)の記事はコチラ

 

  • 取材・文斉藤さゆり写真アフロ

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